短編夢小説

□温もりのある朱
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気が付くと、目の前には朱が広がっていた。

ビチャっと音を立てて、新しい朱が落ちる。

その朱をとめどなく溢れさせるのは……。

「……宜野座、どういう、事だっ……!」

私の想い人、風澄徹だった。

「どうして、でしょうね」

だって、分からないんだもの。

「くそっ…」

風澄さん、ごめんなさい。

「ねぇ、風澄さん。……助けて欲しいですか?」

「いらない………っ」

まあ、そう言いますよね。

「……さようなら、風澄さん」

私は、そう言って風澄さんに刃を突き立てる。

「がっ…」

朱が噴き出して、私と風澄さんを染めて行く。

じわり、と少し温もりのある朱で視界がいっぱいになる。

もう動かない風澄さんを抱き上げる。

どうしてこうなったんだろう。

どうして……。

私の目から溢れた涙が、ポツリ、ぽつりと風澄さんの頬や顎に落ちる。

どうして、私は泣いているんだろう。

その答えを押し流すかのように、大粒の雨が降ってきた。

それは、答えのみならず私達を染める朱までも洗い流すかのようだった。

 

 

 

 

 
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2015/06/15 fin,

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