短編夢小説

□やっぱり、大好き
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風澄さんに別れを告げて、早三週間経った。

いつも一緒に行動していたのをピタッと止めたから、気付いた人もいるみたい。

「おい、ナル。徹の馬鹿と別れのか?」

鏡磨さん、直球ストレート……。

「………うん」

「マジか!?」

「うんだから近々、と…風澄さんは鏡磨さんの事、お義兄さんって呼ぶようになるんじゃないですか?」

「俺は認めんぞぉ!」

「アハハ…」

痛い。

自分で言った事だけど、痛い。

気分転換がしたくて、研究所の中をうろついていると、

「……でね、」

「……徹、大変……」

「……!」

風澄さんと、鏡華だ。

物陰に隠れて様子を窺う。

会話が聞こえる。

「僕……好きなんだよ」

「……!?」

「………嬉しい……」

「………っ!」

やっぱり、風澄さんがホントに好きなのは………。

「ふっ…、うっ…」

涙が溢れてきた。

気付くと、無我夢中で走っていた。

涙を時々腕で拭いながら、どこへともなく走る。

すると、いつの間にか屋上まで来ていた。

空が、嫌みのように蒼い。

「あーあ、なんか、なぁ……」

その時、通信が入る。

第二次時空越境作戦について話し合うらしい、至急集まれとの事だ。

…行きたく無い。サボろう。

そのまま、寝転ぶ。

それから、十分位だろうか。

「あ、居た」

「……風澄さん」

一番会いたくない人だった。

「皆が引っ張ってこいって」

「嫌、行きたく無いんです。風澄さん、放っておいて下さい」

「…前の呼び方に戻したんだね」

「…別に変わらないですよ?」

「……ねぇ、ナル」

「何ですか?」

「大好きだよ」

「……フフッ、冗談よして下さいよ」

「冗談じゃないよ、本気」

「嘘言わないで、んっ」

言い終わらない内に、風澄さんと私の唇が重なる。

「んっ…、ふっ」

舌がぬるりと入ってくる。

私の舌と絡まされて、口の中をかき回される。

今まで、こんなキスされた事ない。

「んぅ、ぷはっ、」

一分位で、漸く解放された。

「はぁっ、か、ざすみ、さ…」

「……これで、僕が本気って分かったよね?」

「……い、やっ…………」

「………どうして?」

「私は風澄さんが、まだ好き、です。でも、もう駄目なんですよ。もう、私達は恋人じゃない。もう、前みたいな関係には、なれない。もう、私の心が耐えきれないんです……。結局、私は自分の事しか考えられない奴なんです。こんな、醜い私が風澄さんの隣に居ていいはず、無いっ……」

堰が切れたように言葉で出てきた。

「………馬鹿だね、お互いに」

そういって、私を優しく抱きしめてくれる。

「まだ、両想いなんだね、僕ら」

「徹っ……、ずっと、言いたかった事、あるのっ…」

「僕も」

私は、お互いを一層強く抱きしめ合う。

「徹………」

「ナル………」

………大好きだよ。

 

 

 

 

 

 
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2015/06/14 fin,

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