短編夢小説

□愛してた
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私は、アナタが大好きだった。

「っ……、ナル!何で、こんな事……!」

「風澄さんが、私を見てくれてないからですよ」

アナタは、優しい人だ。

仲間を決して見捨てない優しさに私は惹かれた。

でも、私はその一歩先でも進んだ関係になりたかった。

でもアナタの目に映っているのは、私じゃなかった。

……だから、今私はアナタに銃を向けている。

今は、仲間割れしてる場合じゃないのに。

{おい!!ナル!!今仲間割れしてる場合じゃねぇんだぞ!!}

{ナルさん!!}
通信を通じて、水潟さんや鏡磨さんの焦った声が聞こえる。

皆さん、止めて欲しいみたい。

でも、まだ終われない。終わらせない。

<宜野座ナル>という存在を風澄さんの中に刻み込むために……。

「ねぇ、風澄さん。私の事、好きですか?」

私は、静かにそう問う。

「っ……」

風澄さんが息を飲むのを感じる。その数秒後、

「……好きだよ。大好きだ」

あぁ、こんな簡単な言葉でも私の心は満ちていく。

「そう、ですか。じゃあ」

……殺して下さい。

私は、そう言った。

 

 

 

 

 
風澄side

どうして、こんな事に。

ナルを殺すなんて、僕には出来ない。

「ナル、僕は君を殺したくな……」

バァン!!

反射的に避けると、先程まで僕が居た場所に大きな穴が空いていた。避けなければ、穴が空いていたのは、僕の胴体だっただろう。

「これなら、殺さないといけない理由が出来ましたよね?」

彼女が使っている銃は、一発の火力が感情によって左右される物。

さっき撃ったのは、かなり火力が高かった。

当たれば、一発即死だ。

それ程、彼女の感情が歪んでいるという事になる。

「っ……、ナルっ……」

彼女はこっちに素早く駆け込んで銃身を僕の頭目掛けて叩きつけてくる。

それを、自分の銃で受け止める。

それを見た彼女は、すぐさま引き金を絞る。

銃口が火を噴く。

彼女の銃は、もう一発がかなりの強さになっている。

あちこちにクレーターのような大きい穴が空く。

「どうしたんですか?撃たないと死んじゃいますよぉ」

そう、僕は未だに迷っている。

彼女を傷つけたくない。ましてや、殺すなど。

また一つ、僕の近くに穴が空く。

(ナル………)

彼女は僕のせいで壊れてしまったのか?

なら、

……自分でケリをつけなければ。

「ナルっ……!」

彼女が銃を前に突き出しながら突進してきた所を、横に避けた。

「………!?…」

宙に浮いていた銃を持ったままの腕を引っ張って自分の方に引き寄せる。

「っ、ぁっ……!」

バランスを崩して倒れ込んだ彼女の手から銃が落ちる。

彼女が銃を拾いにいく前に上に跨がって額に自分の銃を突きつけた。

「……動くな」

特に意味も為さない脅しが口から出る。

「……」

彼女は動かない。殺してもいいという意志表示か。

それとも……

「………風澄さん?どうしたんです?」

「……ナル、殺して欲しいのか?」

「はい、風澄さんに殺されたいです」

「……分かった」

僕がそう言うと、ナルは目を閉じる。

僕は引き金を引く。

引く、その前に。

ナルの唇と自分の唇を重ねる。

顔を上げて、ナルの顔を見ると、真っ赤になっていてとても可愛かった。

「……じゃあね、ナル」

……愛してた。

僕はそう囁き、引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 
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2015/06/12   fin,

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