短編夢小説
□待っています。
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今日も、病室のドアを開けて彼女に会う。
「………ナル」
「………あぁ、あなたですか。また来てくれたんですね」
「……うん」
やっぱり、思い出せてないようだ。
ナルは、半年くらい前に事故にあった。それが原因で記憶を無くしてしまった。
「それにしても、あなたが毎日来てくれるんですから、私はあなたの大切な人……だったんでしょう?」
確かに、
事故に遭う数日前、俺はナルに所謂プロポーズというものをしたばかりだった。
だが、彼女の左の薬指に本来あるはずの指輪はない。
俺が、ナルが混乱するといけないからと、外してもらっているのだ。
……でも、はっきり言ってとても辛い。
大切な人に自分のことを忘れられると言うことは。
「私は、あなたが毎日来て下さっているので、全然退屈なんてしていないんですよ」
「そっか……」
そんな屈託のない笑顔で言われちゃ、へこむにへこめない。
「なぁ……ナル」
「はい?」
「俺は、待っているから。お前が俺の事思い出すまで。何年でも、何十年でも」
「………………………はい」
多分もうナルは二度と俺の事を思い出さないだろう。
それでも、俺は待っている。
何年でも、何十年でも。
ずっと………………………
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2015/05/07 fin,