GYM熱(完結)
□告白
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「永倉先生、今日はありがとうございました。チョコ、作ってきたのでよかったら召し上がってください。」
し、自然な感じで言えたよね?
でも、永倉先生は、受け取らずにチョコの入った紙袋をじっと見ている。
「これは…何チョコだ?」
「あ…。クランチチョコです。チョコレートと砕いたビスケットを混ぜて作りました。」
「そうか。クランチチョコか…。じゃなくてよ。いや、クランチチョコは好きなんだが……。あぁ、そうじゃなくて!」
永倉先生がワシャワシャと髪を掻いた。
「義理チョコとか友チョコとかあるだろ?……これは、何チョコだ?」
どくん
----------一瞬、心臓が止まるかと思った。
「え、と。あの。何チョコかと聞かれましても…。今日のお礼のつもりで作ったのであえて言うなら……“感謝チョコ”ですかね?」
バカ千鶴!!!!!
どうして“本命チョコ”だって言わないの!
「そうか。“感謝チョコ”か……危うく勘違いするとこだったぜ。」
「え?」
「何でもねぇ……。ありがとな。」
永倉先生は、私の手から紙袋を受け取って袋の中を覗き、
「お、美味そうだな。」
と言って笑った。
「それにしても寒ぃな。そろそろ車に戻るか。」
「……あの!」
立ち上がって歩き出そうとする永倉先生のコートの裾を、私は咄嗟に引っ張った。
「千鶴ちゃん?」
私は、振り返ろうとする永倉先生。
でも、だめ。
こっちを見ないで。
「だめ、です。そのまま向こう…向いててください。」
私は、胸にある勾玉を握りながら震える声で続けた。
「あの。感謝しているのは本当なんですけど…。ごめんなさい。本当は、本命チョコなんです。」
緊張のあまり、私の喉からは蚊の鳴くような声しか出てこなかった。
きちんと先生の耳に届いただろうか。
「千鶴ちゃんの顔が見てぇ。そっち向いてもいいか?」
「……はい。」
そう答えたものの、恥ずかしさで顔が上げられず、ベンチに座ったまま俯いていたら、永倉先生がしゃがんで私に目線を合わせてくれた。
多分、私の顔は茹でダコのように真っ赤になっているだろう。
でも、伝えなくては。
「好きです。」
極度の緊張と羞恥で涙が一粒、零れた。