歳三くんと私(未完)
□皐月の章
1ページ/7ページ
皐月の章【1】
✻ ✻ ✻ ✻ ✻
「歳三くんに誕生日のプレゼントがありまーす!」
年の離れた姉の蘭は、いつもテンションが高い。
五月五日、子どもの日。
ゴールデンウィークも終わりに近づいたこの日、布団の中で惰眠を貪っていた俺は蘭姉の甲高い声で起こされた。
「………朝っぱらからうるせぇよ。」
「なによぅ。今日は歳三の誕生日でしょ?お姉ちゃんがお祝いしてあげてるんじゃない。15歳、おめでとう!そして、これがお姉ちゃんからのプレゼント!」
満面の笑顔の蘭姉が携帯のディスプレイを俺に見せた。
そこには、冴えない清純派アイドルのような女が写っていた。
「……………誰だ?」
「歳三の家庭教師の雪村千鶴ちゃん。」
「………は?」
「うふふ。可愛いでしょう?18歳の大学1年生。今日から国語が苦手な歳三の勉強を見てくれまーす。」
「何だよ、それ。頼んでねぇぞ。」
「10時に来るから勉強見てもらってね?私、これから佐藤くんとデートだから。帰りは遅くなるから夕ごはんは適当に食べてね。じゃあ、行ってきまーす♪」
「ちょ、待て。蘭姉!」
ベッドから飛び起きた俺から逃げるように蘭姉が玄関のドアを開けた。
アパートの玄関前には、すでに迎えに来ていた佐藤くんとやらの車が横付けされていて……軽やかに助手席に乗り込んだ蘭姉は、茫然とする俺に笑顔で手を振りながら颯爽と去って行った。
「嘘だろ?」
時計を見ると9時45分を指していた。
確か、10時に来るって言ってたよな?
あと15分しかねぇじゃねぇか!
俺は、しぶしぶ顔を洗って歯を磨いた後、スウェットのハーフパンツをジーンズに履き替え、洗いたてのTシャツに袖を通した。
何でこんなことになったんだ!
俺は最高潮に苛々しながら寝ぐせでピョコンとはねた髪を直した。