Eine kleine , harte Krhe Kke

□烏野一年が狂っている話
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烏野の良心こと、菅原は違和感を感じていた。
何に?烏野の一年に、である。
四人は個性もバラバラではあるが、何も違和感を感じることはない。筈だ。
なのに、何で感じてしまうのか。

例えば、何故か巻いてある、あの四人には不釣り合いなリストカットを連想させる両手首の包帯?

例えば、不意にある危うさか?

そんな中。
菅原は、一つの噂を耳にした。

『譲血鬼』
夜、宮城に現れる異常。
高校生くらいの男の子が現れて、「血をどうぞ」と勧める。
好奇心に負けて返事をすると、その子は自分の手を切って差し出してくる。
その血は驚くほどに甘美な味がする。

そんな噂。よくある都市伝説。

しかし、菅原は試してしまった。


部室に、丁度五人しかいないときがあった。

いつもの言い争い、いつものじゃれあい。
そこで、菅原は「お前らの」と口を開く。
途端四人は黙り、此方を向いた。
その視線に晒されながら、菅原は次の言葉を紡ぐ。

嗚呼どうか、お願いだから

「血を、くれないか?」

ここで、失笑してくれ。

そう思って顔を上げると。
四人は、笑顔だった。

今までに見たことのない位の。

「「「「喜んで」」」」

そういうと、ほぼ同時にカッターを取りだし、包帯を取る。やはり傷だらけだった。
そしてそこに、勢い良く刃を滑らせ、薄皮を破り新しい赤い線を引いた。
血が滲み、ジワリとその線から染み出してくる。その血は今までには無いほどの官能的かつ甘美な危うさをひめているように思えた。

そして、菅原に差し出した。

それは、とても美味しかった。
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