ソノタ

□オレの、綺麗な弟
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弟は綺麗な顔をしていた。
両親もオレも背が高いこと以外は中の中程度の顔立ちの中、弟は誰もが羨む様な美しさを持って生まれた。
背は高いが何となく線が細く顔立ちも美人な弟は、明確に男でありながら女のような魅力も持っていた。天性の魔性だったのだ。だからこそ、多くの人間が弟に付きまとい、期待しー勝手に失望し、離れた。
弟はその魔性に反して、昔から気弱だった。生まれつき軽く心を患っていたのだ。障害というわけではないらしいが、とにかく弟は昔から暗かった。それが、周りの人間の性でどんどん悪化しーやがて表情も乏しくなって、中学に上がる頃には家に籠って大好きなゆるキャラ(これを好きな理由も相当ねじまがっているが)片手に本ばかり読んでいた。オレが家に帰ってきてその日一日あったことを話しあっているときだけ、弟の顔は綻んで、綺麗な花のように笑っていた。元々寂しがりやで、一人はこわいのだ、アイツは。人は誰だってそうだ。両親は気にはしていたが、弟の事を一番わかってやっているからか無理に構わずに、勉強さえしていれば好きなことをさせていた。その頃にはオレは高校を卒業して、大学には進まずに実家の八百屋を継いだ。元々野菜が好きだからと選びとった道で、実際周りからの評判も良くてキチンとやれていた。両親もそんなオレの姿を見て安心したのか、夫婦水入らずでの旅行も増えた。オレも仕事に一層熱が入り、どんどん楽しくなっていった。




弟は、家の中ですら孤立してしまった。
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