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□羊を数えて
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お正月。
親が仕事でいなくて、初めて新年をひとりで迎えた。
別に正月だからといってテンションが上がる訳ではない俺は、一斉にくる友人からのあけおめメールを一斉送信返しでやり過ごし、特に何もすることなくテレビをぼんやりと眺めていた。

『今年は羊年ですねー』

テレビからそんな言葉が聞こえてくる。
何故羊なのだろう、とか下らないことを考えていると、ピンポーンと控えめにチャイムがなった。
こんな時間に一体誰だろう。
そう思ってドアを開ける。
家の前には源田が寒そうに立っていた。

「あっ!佐久間!あけましておめでとう!今年もよろしくな!」

俺の顔を見た瞬間ぱぁっと目を輝かせて挨拶してきた。
対する俺は突然の訪問に少し戸惑う。
源田の家族は夜中の出歩きなど許しそうにないんだが。

「お、おう。今年もよろしく...なぁ、こんな時間に出歩いていいのか?」

心配で俺が尋ねると、源田は去年と全く変わらない可愛い笑顔を浮かべた。

「佐久間のところに行きたいって言ったら、父さんも母さんも佐久間の邪魔にならないならいいって言ってくれた」

そう言って笑う源田。
離れている俺の家に、こんな夜中に来たいと思った理由は分からないが、すごく嬉しい。
折角来てくれたのだから、一緒に過ごしたいと思って、源田を家にあげる。
ひとりは少しだけ寂しかったのかもしれない。
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