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□ずっと一緒
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あの日から数週間が過ぎ、秋の風に冷たさが混じり始めた。
ユリの花も寒さに凍えるのか、早くにその短い命を散らす。
「佐久間...あの...もう買わなくていいぞ...?」
見慣れた純白の花を1輪手に取ると、珍しく店内についてきた源田が遠慮がちに言った。
コイツのことだ。
どうせ財布の心配でもしてるんだろう。
大丈夫だから、と一言告げてお金を払うと、源田はいつも通りありがとうと呟いた。
「佐久間、寒くないか?」
ぎゅっと源田が抱きついてくる。
冷えた体がほわりと暖かくなるのを感じた。
しばらく抱きしめられた後、源田が名残惜しそうに離れた。
「そろそろ、帰らなくちゃな...また明日な!佐久間」
にっこりと笑った源田はいつも通り手を振りながら道路を渡っていった。
その姿が途中でふわりと消えるのももう見慣れた光景。
「また明日...」
この言葉がいつまで言えるのか、それだけが俺の不安だった。