singer

□精一杯の虚勢
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気にしてないなんて嘘だよ。誰だって嫌だよ。自分の恋人が、自分以外と触れあうなんて。例え、其れがファンの子達で、歌詞太郎さんには何の気持ちも無かったとしても相手は違う。――俺だって一人の恋する男だもん。

「天月くん、どうしたの?そんな顔して。」

口にしなくても分かってよなんて、ただの我儘。言わないと伝わるわけないのに。

「歌詞太郎さん、」「なんだい?天月くん」

でも「自分以外と喋らないで。」なんて、そんなの重いでしょ?

「…何でもない。ねぇ、それより、ひっく…」

あぁ、ダメだ。ほら、歌詞太郎さんだって驚いてる。

「あ、天月くん!?どうしたの?」

違うよ。そんな顔しないで。これは自分の醜い嫉妬だから。
何だか自分がスゴく汚い気がしてくる。歌詞太郎さんが好きだ。誰よりも好きだ。

でも、そんな自分のエゴで歌詞太郎さんを苦しめたくない。
「…目に、ゴミが入っちゃって。もう大丈夫!」
「そう?」

まだ納得のいかない顔で訊ねてくる歌詞太郎さん。

「うん、ねぇせっかくだからお買い物行きましょう?」
「え、寒いよ?」
「良いから良いから!」

もう大丈夫。歌詞太郎さんと隣に並んで、こっそり手を繋ぐ。

「天月くん、暗くなってきたけど外だよ。良いの?」
「良いじゃないですか。」

こうやって隣に並んで、歌詞太郎さんと居られるのは自分だけ。


そう自分に言い聞かせた。


タイトル:確かに恋だった様より

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