singer

□君に伝えたい事があるの
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しかし、これ以上一緒にいたら彼に対する想いが溢れてしまいそうで、拒絶されるのが怖くて、酷い事を言ってしまった。

「なつしろと居ると疲れる。なつしろなんか嫌いだ。だいっきらい。もう喋りかけないで、迷惑…」
「…あっそ、分かった。もう話し掛けないから。」

そう言って彼は行ってしまった。

嘘だよ、そんな訳ないじゃん。大好きだよ。ホントは一緒に居たいよ。


「…すき」

一人放課後の教室でポツリと呟いた。

同時に目頭が熱くなり、ホロリと一筋の涙が落ちる。泣き止まなきゃ、そう思うのに涙は止まってくれない。

「っく、うぅぅ、ふっ」

御免なさい。大好きだよ。嫌いなんて嘘だよ。また僕の隣で笑ってよ。今度は素直になるから。例え拒絶されても好きだから。

もうこの想いも届かない。

後悔してももう遅い。

でも、これで良いのかもしれない、僕はなつしろを縛り付けていたのかもしれない。

そうだ、

自分にそう言い聞かせないとこの涙は止まってくれなさそうで。

このまま残っていても虚しいだけだ。もう帰ろう。

なるべくなつしろの事を考えないように、お気に入りのバンドの曲を聞きながら家路についた。




次の日、とりあえず此のままではいけないと、親友のゆりんくんに相談に行った。


「うーん、難しいね。でもさ、いぶくんはどうしたいの?」
「え?」

「だからさ、いぶくんはなつしろとどうなりたいの?」

ゆりんくんは先輩のけけさんと付き合ってて、僕の気持ちを偏見なく受け入れてくれた。

「…僕は、なつしろと、」

僕はどうしたいのだろう。諦めたいのか、諦めたくないのか。

「じゃあさ、いぶくん。もしだよ?なつしろがいぶくん以外と付き合っちゃって良いの?手繋いで良いの?キスしちゃって良いの?」

「や、やだ!」

ガタッ

想像してしまい思わず席を立つ。放課後で良かった。

「うん、じゃあそれがいぶくんの気持ちだ。」

「…でも、なつしろはもう僕のコト嫌いかもしれない。」

「もしそうだとしても、このままじゃ辛いのはいぶくんだよ。」

「…でも、」

うじうじしている僕を見かねたのかゆりんくんが

「良いの?そのままで」

答えは決まってる

「…こ、告白、する!」

「うん、じゃあ行っておいで、なつしろまだ学校の中にいるはずだから。」

にっこり笑ってそう押し出してくれたゆりんくん。

「うん、有り難う!行ってくる」
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