少女A(JOJO3)

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典明があちこちに法皇の緑の(ハイエロファントグリーン)を張り巡らせて結界を張る。これでDIOの能力を見破ってやろうと魂胆らしいがこんなことしなくても私がみんなにDIOの能力を伝えられたら済む話なんだよな。典明も死ぬような目に遭わさずにできたのに今の私は何も話すことができない。こんなことならなんで知ってるの!?と思われてでもDIOの能力を予め伝えておくべきだったかな。いやでもやっぱり私の社会的立場も大切だぞ?とにかく過ぎたことは忘れて今からできることを全力でがんばろう。

とりあえず典明の死亡は回避しなければならない。そのために私がすることは実に単純だ。DIOの腹パンを全力で防ぐ!名付けて『風の鎧で典明の腹をガード作戦!』である。ネーミングセンスについては言及しないで欲しい。私のセンスのなさは『風弾』とか名付けている時点でモロバレだろ?

まあということで典明に風の鎧を纏わせておくだけのシンプルな作戦だ。風の鎧は1度纏わせれば攻撃を受けたときにオートで攻撃を弾き返してくれる便利な技だ。というわけで風の鎧ならばDIOが時を止めようとその攻撃を防いでくれるだろうけど、その強度は纏わせた風の量と質に比例し私自身の風を使った方が効果が高い。

典明の腹をぶち抜くくらいなのだから当然DIOの攻撃力は高いのだろう。それならば典明に使用すべき風は当然私自身を風化した風を使うべきなのだろうけど、

うん、今私の手持ちの風はめっちゃ少ないんだよね。なんたって周りに認識してもらえないレベルの風しか私の手元にはないのだ。とりあえず典明の生存率を少しでもあげるために使える風を全て典明に纏わせてみたらなんか私自身が風の鎧になってしまったようだ。なぜこうなったし。視界が広くぼんやりとしていて背中に典明の存在を感じる。これってつまり私が身体張ってDIOの世界パンチを受け止めるということでしょうか?典明じゃなくて私に死亡フラグが立った気がする。

典明が法皇の緑ハイエロファントグリーンの結界を張り終わったのと同時にDIOが姿を現した。結界の中にまんまと引き込まれたDIOはエメラルドスプラッシュの集中攻撃をつける。1発1発なら精密な動きのできる世界ザ・ワールドにダメージを与えることはできないが絶え間なく発射されることによってDIOに攻撃の隙を与えずに済む。やがて法皇の緑ハイエロファントグリーンに捕らわれたことに気づいたDIOが動きを止める。両者は睨み合っていた。


「触れれば発射される『法皇』の『結界』はッ!すでにおまえの周り半径20mに展開されている!くらえッ!DIOッ!半径20mエメラルド・スプラッシュを――ッ!!」


「マヌケが…知るがいい…『世界』の真の能力は…まさに!『世界を支配する』能力だということを!――『世界ザ・ワールド』!!!」


キタ!と思った。いよいよ典明が腹パンを食らう瞬間がやってきた。典明のことはしっかり風で覆ってあり特にお腹は念入りに風を纏わせている。今の私にできる最大の防御だ。

時の止まった世界で私たちは非常に無防備だ。だけれども時が止まる前から防御膜を展開しているのであればDIOの攻撃は届かない、はず、たぶん。うん、ぶっちゃけ私もわかりませんからね。というか今の状況なら典明より私がやばいからね。イメージとしては私が典明の前に立ちはだかって攻撃を防ごうとしているようなものなのだ。つまりDIOの世界パンチを食らうのは位置的に典明じゃなくて私ということになる。頼むから風の残像クリアビジョンさん仕事してください。典明が助かっても私が死んだらバッドエンドだぞ!


「ッなんだ?殴った時の感覚に違和感が…、」


「花京院ッッ…!!!!」


次の瞬間私の身体は吹っ飛ばされた。ハンマー投げで投げ飛ばされる金槌のごとく私の身体は空中を飛ばされていく。

何されたのかわからなかった。でも何が起こったかは知っていた。時の止まった世界でDIOに腹パンを食らったのだ。痛みは感じない。ただひたすら風を切る音とその衝撃だけが身体に残る。

その滑空は背中に受ける衝撃と共に止まる。典明の身体が貯水タンクに叩きつけられ壊れたタンクから水が溢れ出す。

私はふらふらと立ち上がった。相変わらず地面に足がついている感覚はなかったけれども私の意識ははっきりあった。これって生きているよね?私生きている!

うわあああっ!!DIOの腹パンマジ怖かったぁぁ!!物理攻撃は効かない身体だけども人ひとりブチ抜く力がある拳に殴られるなんて堪ったものじゃない。ううっ、生きていて本当によかったよ。

私が生きているってことは当然典明も生きているよね?風の鎧を纏わせていたのだから典明まで貫通したってことはないだろうし、と思いながら振り向くと血を流しながら倒れている典明がそこにはいた。なんだ、と?

貯水タンクから流れた水が典明の学ランを慣らしていくのを呆然と見つめる。

まさかDIOの腹パン貫通したのですか?マジで?あ、でもお腹からは血が出てないぞ?え、じゃあ典明はどこを怪我したんだよ。

そーっと典明の様子を調べてみると後頭部から血が流れ頰を伝っているのがわかった。どうやら貯水タンクに叩きつけられた際に頭を強く打ったらしい。

ここで私はとんでもないことに気付いてしまった。DIOの腹パン防いだらそれでオッケーと思っていたけどよくよく考えると吹っ飛ばされるんだから当然後ろも衝撃を受けるよね?貯水タンクがベコリとへこむくらいなのだからかなりの威力だろう。それを全面的に受けた典明のダメージって…、

うん、これ普通に死ぬんじゃね?だって吹き飛ばされて金属に叩きつけられるんだもん。まともな耐久力では耐えれないよ。はい、うわあああああっ!!全然典明救えてないじゃん!ちょ、典明しなないでぇぇーー!!

慌てて典明に駆け寄り状態をチェックする。呼吸はしているし心臓も動いている。頭から血を流していたがそんなに深くは切っていなかったようで止まりかけていた。

頭を打っているから絶対とはいえないが典明は無事だった。よかった!典明生きているよ!これで私の旅の
目的は達成できたよ!第3部完!

…うん、でもあのその、典明まったく起きないんですけど。

え、ちょっと待って典明。最後のエメラルドスプラッシュはどうした!?あれ撃たないとジョースターさんにDIOの能力伝えられないぞ!?

しかし風化して触れることのできない私に典明を起こす手段はない。

ーーーー花京院典明リタイア!

私の出番はまだ終わらないらしい。


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