少女A(JOJO3)

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「おい、ナマエは何処にいやがる」


再会を喜び合っていた5人と1匹だが承太郎の言葉にハッとしジョースターさんと典明が私を探すように視線を動かす。当然だが私は見えないらしい。そして、それに対してアブドゥルさんとポルナレフは悔しげに肩を震わせ絞り出すように答えた。


「ナマエはここに来ていません。来られませんでした」


「なんじゃと!」


「そんな、ナマエちゃんが、」


「すまねえみんな!俺のせいだ!ナマエは、あいつは俺を庇ってヴァニラ・アイスに…、」


「ぶざけんなポルナレフ!何故ナマエを守らなかった!」


ポルナレフの答えに激昂した承太郎が掴みかかる。ポルナレフはそれに反論することなくギュッと拳を握りしめ震えている。え、ちょ、なんだこの展開は。原作でアブドゥルさんとイギーが死んだ時もポルナレフに怒ったりなんてしなかったぞ?どういうことなのよこれ。もしかして女の子を守れなかったから怒っているとかですかね。お前にそんな紳士的な精神が宿っているなんて知らなかったぞ。さすがジョナサンの子孫である。


「すまねえ、承太郎。俺を殴ってくれ!」


「ッ、」


「やめんか承太郎!ポルナレフのせいではないぞ!お前もそのことを頭でわかっているはずだ」


「ポルナレフのせいだけではありません。我々もナマエに命を救われました。彼女がいたからこそ我々はここまで来ることができたのです」


ジョースターさんの制止の声に承太郎はゆっくりとポルナレフを掴んでいた手を離す。それでも承太郎の気は収まっていないようで無言の背中から怒気が伝わってきた。

うおおっ、承太郎めっちゃ怒っているやん。私が死んだことで怒ってくれるのは心配してくれているようで嬉しいんだけど私生きているんだよな。バリバリ君の後ろに立っていますよ?これ、生きているって知られた時どうなるんだろう。まさかのオラオラですか?…うん、元に戻ってもしばらくは風化して気配消しておこう。


「ここにいてもしかたない。DIOのところに行くぞ!案内せいヌケサク!」


「ひぃぃ!!わ、わかりました!」


「ジョースターさん、私は一旦外に出てスピードワゴン財団にイギーを預けに行きます。今まではポルナレフを1人にすることが心配でここにいましたがイギーは重傷なのです。早く医者に見せる必要があります」


「そうか、イギーを頼んだぞ」


「ええ、イギーをスピードワゴン財団に預け次第すぐに合流します」


そういってアブドゥルさんは来た道を戻っていった。残りの皆はヌケサクの後に続いて上へと階段を登っていく。

その間にポルナレフからDIOの能力の話を聞いてあの有名な『あ…ありのまま(略)』のセリフを聞いていると最上階に着いた。そこには部屋の真ん中に真っ黒な棺が置かれてある。

すぐさま承太郎が壁に穴を開けて部屋の中に太陽の光を挿し込ませる。ジョースターさんがヌケサクに棺を開けるように言った。ヌケサクがDIO様こいつらを倒してくださいと言いながら棺を開けると中に入っていたのは切り裂かれたヌケサクだった。明らかに致命傷にもかかわらずまだヌケサクが生きているのは吸血鬼だからだろう。

にしてもまた時を止められてしまいましたね。気付いたら行動が終わっているのだからこの能力マジ恐ろしい。早く承太郎に時の世界に入門してDIOを倒してもらいたい。

一行はふりかかる殺気に気付き急いで外に出てた。私もそれに続いて外に出る。DIOの能力を味わった皆が逃げるのか戦うのかで意見を争わせる。個人的にはどっちでもいいからとにかくここから離れたい。もうすぐ日が沈むのにすぐそこにDIOがいるんだぞ?この状況が怖すぎる。

結局逃げるのをジョースターさんと典明が、追いかけるのをポルナレフと承太郎が担当しはさみ打ちにすることで話しが決まった。そして私にはここでまた選択肢がある。逃げる組についていくか追う組についていくか。

この選択肢だけは初めから決めていた。この選択をするためにこの死亡フラグだけの恐ろしい旅に着いてきたのだ。

戦うのは好きじゃない。死にたくない、痛いのも嫌だ。

でも、花京院典明が死んでしまうのだけはどうしても許せなかった。

初めはただキャラクターとして死んでほしくないと思って着いてきた。だけれども今はそれだけじゃない。初対面で死亡フラグ立てられて旅を初めて1週間で下の名前で呼び合うような間柄になって一緒にポルナレフ弄って夢の中の敵を信じてもらえなくて孤独な想いを共有して海に行く約束をして、

そして私が死んだと聞かされた時唇を噛みサングラスの下で瞼を震わせていたことを私は知っている。花京院典明は私の友達だ。原作キャラだからじゃない。友達だから君を助けたいんだ。

というわけでもちろんジョースターさんに着いて行きますよ。絶対に典明を助けるぞ!うおおおっ!私はやるぞぉぉぉー!!!

え、今までとテンション違うんじゃないかって?そりゃここでかかっているのはどっかの電柱男ではなく大・親・友の典明の命なんだよ?勿論全力でがんばるに決まっている!典明、君は絶対に死なせないからな!!

DIOの館から離れていくジョースターさんと典明を私は追う。途中でジョースターさんが金に物をいわせてトラックをそこらのおっちゃんから買い取る。ジョースターさんと典明がトラックに乗り込み私もこっそり忍び込んだ。こんな至近距離じゃ気づかれるかもしれないが乗らなければ典明の死亡フラグに間に合わない可能性がある。いやまあ別に隠れる必要はないのだろうけどあんだけシリアス感出しといて実は生きてますってのも気まずいじゃん。ここまできたらもうDIO倒すまで気配消しておこう。


ひっそりと後部座席に忍び込み典明の隣に座る。ジョースターさんと典明がなにやらDIOの所在について話しているようだった。なんでもジョースターさんと承太郎とDIOは互いの存在取れるがそれはそんなに精度の高いものではなくなんとなくあっちにジョースター家の血統がいるな、程度のものらしい。それでもDIOの存在を感じ取れるとは便利なものである。とはいえまったくもって羨ましいとは思わないけどね。DIOに存在気取られるとか恐ろしすぎるだろ。

そのままトラックに乗っていると血まみれな高級車らしき車が凄い速度で追いかけてきた。うわ、あれにDIOが乗っているんだよね。確か最終的には車をこちらに投げつけてきたはず、…とりあえず風化の準備は万端だといっておこう。

典明がDIOのスタンドの正体を暴くといってハイエロファントグリーンを繰り出す。しかし返り討ちに遭い典明は頭と手から血を流していた。結構痛そうである。

典明の怪我の具合が気になったがそれを考える前に後方を走っていたはずの高級車が消えている。うわわっ!ついにきた!

元々半透明になって風化しているから大丈夫だとは思うが念のためしっかり風化できているか自分の身体を確かめる。うん、大丈夫そうですね。よし、ばっちこい!

そしてそのすぐ後フロントガラスに影が写ったと思った瞬間高級車がトラックにぶつかってきた。ジョースターさんと典明は間一髪トラックから脱出し私もそのあとを追う。助かるとはわかってきたけどトラックがベコベコと潰れていく様には冷や汗かいたわ。もう2度と体験したくはないですよ。

ジョースターさんと典明が隠者の紫ハーミット・パープルとハイエロファントグリーンを使って建物の間を渡っていくのを風化して着いていく。トラックから逃げ延びたことにDIOも気づいたのかすぐに追ってきているようだ。


「思いつきました。DIOのスタンドの正体を暴く方法を」


「本当か花京院!?」


DIOをサングラス越しに睨みつけながら典明が答える。その言葉を聞いて私の頭に原作のあの光景が浮かぶ。

腹を突き抜かれて貯水タンクに叩きつけられそれでも最後の力を振り絞ってDIOのスタンド能力をジョースターさんに典明は伝えた。もうほんの数分の先にその未来がある。

正直なところあのラスボスDIOと戦うのは怖くて堪らない。私はラブ&ピースを愛する平凡な一般人だ。それでも友達を失うわけにはいかない。

最終局面、DIOとの決着はそこまで迫っていた。


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