少女A(JOJO3)

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女子高生というのは最大のブランドらしい。雑誌か何かのキャッチコピーでそれを知った時衝撃を受けた。

人生は80年ほど続くがその中で『女子高生』はたった3年しかない。ならばその期間を全力疾走で楽しまねばならない!

というわけでせっかくの女子高生活を楽しむために私の住んでいる地域で1番可愛い制服の学校を受験した。学力が足りなかったので死ぬ気で勉強した。たぶんこれは先の人生も含めて1番勉強したんじゃないだろうか?勉強しすぎて知恵熱を3度出した。

そこまでして手に入れた制服を着る前に異世界に飛ばしたというのだから神様はあんまりだ。いやまあワンピースの世界もジョジョの世界もキャラクターに会えて楽しかったよ?でも私がしたいのは冒険より青春だ。部活に入って恋をしてそういう甘酸っぱい思い出をたくさん作りたかった。この旅が終わったら元の世界に帰れると信じているよ。神様頼んだ!

だけれどもそれでも今すぐ元の世界に帰りたいとは思わない。だってまだこの旅についてきた目的である典明の死亡フラグを折れていないのだから。ついでにアヴドゥルさんとイギーの死亡フラグも折ってないよな。まだまだ死闘ヴァニラ・アイス編が続いていますよ。だからまだ帰るわけにはいかない。

そう思いゆっくり目をあける。意識があるってことはまだここはあの世ではないのだろうか?よかった!ヴァニラさんの口の中が見えた時はあ、これ死んだわと思ったけれども私生きているよ!でもなんで私助かったのだろう?これもふうふうの実のおかげなのだろうか。もう、この能力には頭が上がりませんね。

状況を確認するために起き上がろうとした瞬間違和感を覚えた。私は意識がなかった。ということはどこかに倒れていたはずだ。なのに何かに触れていたという感覚がなかった。

今もそうだ。立ち上がり大地を踏みしめているはずなのに足の裏にはなんの感覚もない。嫌な予感がして恐る恐る自分の姿を見ると半透明どころかほぼ透明、かろうじて輪郭が見えるというくらいに私の身体は薄かった。え、これどういう状況?いつもは風化しても触れた感覚くらいあったのに今は何にも感じないぞ?ちょっとまって、私生きている?これひょっとして本物の幽霊になったんじゃないのか?

死んでしまったかもしれないという怖さに一瞬だけ背筋が冷えたがだんだん自分の中に風が流れてきてその度に少しずつ力が戻るのを感じた。たぶんだけど、身体の中の風がおそろしくなくなってそれでほぼ風と同化しているのだろう。私自身に肉体がないのだから物に触れている感覚がないのは当然だ。でもこれって一歩間違えれば幽霊と扱いが変わりませんよね?うん、やっぱりヤバイ状況というのは間違いないです。

足を動かしても歩くという感覚がないのでふわふわと浮きながら辺りを見渡す。そこはヴァニラさんがやってきた部屋であちこちが丸く削られ焼け焦げて苛烈な戦いの爪痕を残していた。どうやらヴァニラ戦は終わってしまったらしい。え、ちょ、じゃあアヴドゥルさんとイギーとついでにポルナレフはどうなったの?!原作と展開が変わりすぎていてどうなったのか全く想像できない。うわああああっ!!頼むから生きていてくれみんなァァァ!!

辛うじて無事だった階段を駆け上がり上の階に上がると暗闇が広がりろうそくの炎によってのみその場は照らされていた。まるでラスボス前のダンジョンのようですね。あながち間違ってもいない。

ふと、暗闇を進んだすぐ先に3つの生物の存在を感じ取った。すぐさま行ってみるとそこにはアヴドゥルさんとイギーとポルナレフがいて、カーテンを千切り怪我の手当てをしているようだった。よかった!生きてた!うおおおっ、アヴドゥルさんもイギーも生きているよ!原作の死亡フラグ折ってやったぞ!私はヴァニラ戦で全く役に立てなかったけど3人で倒せたのですね!本当によかった。


『アヴドゥルさん!イギー!それとポルナレフ!みんな無事だったんだね!よかったよ!いや〜ヴァニラさんホント強敵でしたね。気絶しててすいませんでした!!』


「くそっ、俺のせいでナマエが、」


「ポルナレフ、何度もいうがけしてお前だけのせいでない。我々の弱さのせいでナマエを救えなかったのだ。彼女は勇敢だった」


「がぅ、」


「イギー、動こうとするんじゃない。おそらく折れた骨が肺に刺さっている。ジョースターさんと合流したらすぐに外に出てスピードワゴン財団にお前を預ける」


3人に声をかけたのに無視された。これは新手のイジメなのだろうか?ナマエ役に立たなかったしちょっといない子扱いしてからかってやろうぜ的な小学女子にありがちな嫌がらせですか?泣くぞこの野郎。

いや、でもこういうノリはポルナレフはともかくアヴドゥルさんは好まない。それにからかおうとしているというならばいくらなんでも空気がシリアスすぎでしょ。イギーもかなりの重傷のようだしふざけている雰囲気はない。ということはこれは本当に私の姿が認識されてないってことだ。え、なんで?確かにめっちゃ薄くなっているけど輪郭くらいはあるぞ?声も届いてないんですか?ちょっとまって、これ私リアル幽霊になったんですか?え、私死んだの?

私が今の状態に確信が持てず呆然としているとパチパチと手を叩く音が近くの階段上から聞こえてきた。全員バッと顔を上げるとそこには揺らめく炎の光に照らされる黄色い男が立っていた。DIOだ。


「おめでとう諸君。君たちは己の過去を乗り越え遂にここまでたどり着いた。心より歓迎しよう」


「DIO!」


ポルナレフが憎しみを込めた目でDIOを睨みつける。アヴドゥルさんもイギーを抱えながら身体をDIOの方に向け険しい表情をしている。怪我を負っているイギーさえも牙をむき出しにしてDIOを威嚇する。3人から殺気の篭った視線を受けているというのにDIOは漫然とした笑みを浮かべていた。


「ナマエのことは残念だったな。だが、ここまでたどり着けなければそれまでの実力だったまでのこと。このDIOが気にかけることではない」


「テメェ、DIO!ナマエを侮辱するんじゃねえ!あいつはちょっとドジで生意気なところがあったが勇敢な奴だった!いつだって戦うのは好きじゃないといいながら敵に立ち向かっていた!あいつを軽んじることはこの俺が許さねえ!!」


ふっと口元に嘲笑を浮かべるDIOにポルナレフが激昂して食ってかかる。そんなポルナレフの様子を見て私は胸が熱くなった。ポルナレフ、お前が私のためにそんなにも怒ってくれるなんてちょっと本気で視界が潤んできたわ。女好きのいじられ電柱キャラとな思っていてごめん。お前本当にいい奴なんだな。

うん、でも私は生きているんだけどね。君の後ろに普通に立っているんだけどね。あと、さらりと私のことをドジで生意気って言ったことも聞こえてますから。このやろうポルナレフ!やっぱりお前なんか電柱野郎で十分だ!


「怒りを抱いているのかポルナレフ。しかしそれは別の感情を隠すためのパホーマンスではないのか?」


「なんだと!?」


「本当はこのDIOに恐れを抱いているのだろうポルナレフ。仲間の死を理由にお前はこのDIOに対する恐怖をごまかしているだけだ。その階段を二段あがれば仲間にしてやろう。逆に死にたければ階段を登るがいい」


ポルナレフはすぐに答えを言わず振り返りアヴドゥルさんに視線を合わせた。そしてアヴドゥルさんが頷くのを見るとそのままDIOを見返す。その瞳には静かな怒りを宿しているようだった。


「この感情は間違いなく純粋な怒りだ。ナマエを失わせたお前らへの、そして救うことができなかった俺自身への怒りだ!俺は前にここに来た時におまえの恐怖の呪縛と強大な悪に屈服した。あの時俺は『負け犬』としての人生を歩みはじめたわけだ。死よりも恐ろしいぜ!!てめーに利用されることへの欲求だけの人生なんてな」


「本当にそうかな?ならば…階段を登るがいい」


ポルナレフが一歩足を踏み出す。それをアヴドゥルさんとイギーが見守る。その瞬間不可思議なことが起こった。階段を登ったはずのポルナレフが階段を降りていたのだ。

ポルナレフが驚き叫んでいるのを聞きながら今起きたことの恐ろしさに私も背筋を凍らせる。うわっ、これがあのザ・ワールドのスタンドの能力なのか。時を止めることができるってわかっていても何もできないぞ?気付いたら一瞬のうちにすべてが終わってしまっていることですよね。トリップ特典で止まった世界に実は私も入門できます的な展開を期待していたけどまったくそんなことはありませんでした。なんというチート能力。時を止めるとかまじ反則だ。

ポルナレフは何度も階段を登ろうとするがその度に階段を降ろされる。それを見たアヴドゥルさんも階段を登ったがやはり戻ってしまう。うん、確かに恐ろしい能力なんだけど階段を降りてしまうのはザ・ワールドの能力とは関係ないよね?時を止める能力であって時を戻す能力ではないのだぞ?ということは人力でザ・ワールドがポルナレフを運んで降ろしているということか?考えるとめっちゃシュールな光景だ。


「何故だ、俺は確かに階段を登ったはずだ!」


「これはどういうことだ。まさかDIOのスタンド能力か!??」


「これはお前たちが心の奥底で恐怖しているということに他ならない。人間は誰でも不安や恐怖を克服し安心したいがゆえに生きている。ポルナレフにアヴドゥルにイギー、お前たちを殺すのは惜しい。このDIOにもう一度仕えないか?さすれば永遠の安心を与えてやろう」


そういってDIOが2人と1匹に誘いをかける。しかしここでその誘いに乗るものは1人もいなかった。2人は決意を固めるとスタンドを出した。


「おれはもともと死んだ身!てめーのスタンドを見きわめてから死んでやるぜッ!」


「このまま死んではナマエに合わす顔がない。DIO、貴様の能力を暴いてやる!!」


「ガゥ!グルルゥ!!」


「フン!ならばしょうがない…死ぬしかないなポルナレフ、アヴドゥル、イギー!!」


そういって3人がまさに戦闘を始めようとした瞬間にドカッと壁に穴が空き光と共に3つの影が差し込んだ。ジョースターさんたちが合流したのだ。

DIOは太陽の光を見て去っていく。美味しい登場の仕方ですね。5人と1匹が互いの生存を喜び合う。よかった、よかった。

…うん、ところでいつになったら私はみんなに合流できるのだろう。


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