少女A(JOJO3)

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10分経ったら中に入ろうとアヴドゥルさんがいう。うん、原作知識のない状況ならその判断でなんの問題もないのだろうけどもう少し待ちませんかね?だってそろそろ承太郎たちがテレンスをぶっとばしているころだからもう少し後なら無事合流しますよ?でもそうすると原作と変わってまったく展開が読めなくなるのか。仕方ないので特に意見することなくその判断に従うことにする。これからヴァニラさんと戦うと思うと震えが止まりませんね。本気で死にたくはないです。

ヴァニラ・アイスのスタンド、クリームは暗黒空間に飲み込んだものを消し去ることのできるスタンドだ。最強のスタンド談義で必ず名前のあがるスタンドのひとつでもうどうしたらいいかわからんくらい私の能力と相性が悪い。いや、相性のいいスタンド使いなんていないんじゃないかな?あらゆるものを消せるなんて無敵ではないですかね?最強無敵最終生物兵器のカーズとどっちが強いか勝負して互いにつぶし合ってもらえないだろうか。

私もふうふうの実の能力は物理攻撃を無効化することができるけど風になった身体を消されたらDEADですよね?いやでもヴァニラさんの能力って飲み込んだものを粉微塵にする能力のはずだから効かない可能性もあるんだけどそんなこと試したくないのでヴァニラさんの能力にはなるべくノータッチ(物理)の方向でお願いいします。

アヴドゥルさんが突入する前に『お前たちが中に入って行方不明になったり負傷したりしても助けない』という。DIOを倒すために冷酷な判断は必要だそうだ。そんなこといいながらポルナレフを助けて死んじゃうアヴドゥルさんは本当にいい人ですよ。アヴドゥルさんが死なないようにがんばろう。・・・うん、頑張ります。

館に入るとアヴドゥルさんはアスタリスク(*←コレ)のような形をした炎の探知機を出してこれで生物反応を探ろうという。そんな便利なものがあったのならなぜ今まで出さなかったし。いや、いいや。アヴドゥルさんのすることなら意味があるのだろう。これがポルナレフなら風弾を撃ち込んだけれどアヴドゥルさんなら信じよう。アヴドゥルさんの信用は高いんです。

アヴドゥルのおかけで早速この館の迷路を作った男を発見できた。それをイギーが仕留めて無事刺客の一人を撃破しました。皆嬉しそうに顔を見合わせるけどここからが本番ですから。確か迷路を作っていた男を倒してすぐにヴァニラさんがくるはずだ。ヴァニラさんの能力はアヴドゥルさんの生命探知機でもイギーの鼻でも見つけることはできない。でも風の流れならどうだろう。

最近あがった索敵能力を存分に使って部屋の中に漂う風の動きに意識を向ける。すると後ろの方の空気にぽっかりと穴が開いている場所があることを感じた。しかもその空気の空洞はゆっくりとこちらに近づいてきている。どう考えてもこれはヴァニラさんが接近していますね。うわ、しかもアヴドゥルさんが壁に書かれた文字っぽい物に目を向けているよ。はい、覚悟を決めます。

アヴドゥルさんが振り返るよりも早く彼に向けて風弾を撃つ。横っ飛びに吹っ飛ぶアヴドゥルさんに何ごとかと振り返るポルナレフとイギーはまだヴァニラさんの軌跡上にいる。うわああっ、なんか急にやること増えてむっちゃ忙しい!でも絶対に誰も死なさないからな!

全力で駆けてイギーを掴むとそのままポルナレフにタックルをかます。風弾を撃って吹き飛ばすこともできたけれどすると私がヴァニラさんの通過する軌跡の上に取り残されるために却下した。作戦名は『いのちをだいじに!』なので。

突然のことに対応できなかったポルナレフは私の攻撃に吹っ飛びそのまま倒れこむ。ポルナレフと共に倒れながら背中で何かが通過したのを感じた。うう、本気でヴァニラさん怖すぎる。でもアヴドゥルさんは生きているよ!


「いってぇ!急に何すんだナマエ!って、なっ!??」


「ナマエ、何を・・、これはッ!!?」


「ポルナレフ、イギー、アヴドゥルさん!敵が来ている!たぶんありとあらゆるものを消すことのできる能力だ!」


「ほう、襲撃に気づくだけでなく私の能力まで言い当てるか。やはり貴様は厄介だナマエ。この場で必ず始末する!」


急に現れた敵スタンド使いの存在に皆絶句している。私の方もまさかのヴァニラさんに名指しで処刑宣言されて涙目だ。もうこの館きてから私の知名度が上がってきて本気でつらい。でもここからは死亡フラグの連続なので出し惜しみなどしてられない。原作知識ひけらかしてなんでそんなこと知っているの!?とドン引かれるよりもみんなの命の方か大事ですからね!・・・でもできれば私の社会的立場も守る方向で片を付けたいな〜。


「私の名はヴァニラ・アイス。私の口の中は暗黒空間に繋がっていて取り込まれた物は粉塵と化す。恐れ多くもDIOの命を狙うという貴様らを生かしてはおけない!」


「チッ、新手の刺客か。だがイギーの鼻にもアヴドゥルの炎の探知機にも引っかからねえとはどういうことだ?」


「おそらくこの世の空間から存在を消すことのできるスタンドなのだろう。ナマエが気づかなければ我々はやられていた」


「がぅ!ガゥガゥ!」


イギーが吠えると共にヴァニラ・アイスが姿を消す。そして周囲にコルクでくり抜かれたような穴が空き私たちを襲った。一難去ってまた一難。とにかく逃げるしかない!ということで全員で猛ダッシュしてその場から逃げ出す。

風の流れを感じずともドゴッ、ドゴッと壁を破壊する音でヴァニラさんが迫ってきていることがわかる。ひぃぃと内心悲鳴をあげながら来た道を戻っていると入ってきた出口が見えてきた。

とっさにそのドアに飛び込みたくなる衝動をなんとか抑える。もうこんな館にいられるか!私は外に出る!と言いたいところだが確か原作では出口にヴァニラさんが待ち構えてポルナレフたちはそれを回避していた。今回もヴァニラさんが出口で待ち構えている可能性は高いだろう。

空気の流れを読み取って出口の様子を探るとそこにぽっかりと何もない空間があることがわかった。やっぱりヴァニラさんがいらっしゃいますね。ということで外に出る選択はなくなりました。


「出口だ!どうする?一旦外に出るか?!」


「いや、外にはヴァニラさんが待ち構えているよ!出た瞬間みんな仲良くヴァニラさんの口の中です」


「ナマエ、君は何故存在を探知できない奴を見つけることができるのだ?」


「いないってことがわかるんです。なんかこう空気の流れの中でヴァニラさんのいるところはぽっかり穴が空いているんですよね。違和感バリバリなのですぐわかりますよ」


「うーむ、なるほど。見えない敵を感知できるなんて素晴らしい能力だ。これからも奴の動きを見張っててくれ」


「了解です!」


アヴドゥルさんの頼みに大きく頷く。ヴァニラさんの動きは私の生命にも関わってくるのでしっかり探っておきます。それにしても私働きすぎだろ。ヴァニラさんの動き探知してアヴドゥルさんの死亡フラグもひとつ折ってついでにイギーとポルナレフも助けている。そろそろお暇してもいい頃合いじゃないだろうか。ヴァニラさんに命狙われる環境から早く逃げたい。

出口の前をダッシュで通り抜け上へと続く道階段を上っていく。すると背後で空気が動いたのを感じた。当たり前だけれどヴァニラさんは追ってくるようです。恐怖の鬼ごっこはまだ終わってくれないらしい。

そのまま階段を上りきり廊下を突っ切って広い部屋に入った瞬間全員が足を止める。その部屋が行き止まりだったわけではない。部屋の真ん中に丸く綺麗にくり抜かれた穴があったのだ。うーわー、ヴァニラさんいるやん!

皆の間に緊張が走り即座に互いを背にして全方位に神経を張り巡らせる。当然私もすぐに部屋内の空気を読み取りヴァニラさんの位置を探る。けれどもヴァニラさんはどこにもいない。部屋の隅々まで空気の流れを追ったにもかかわらず不審なところはどこにもなかった。


「ナマエ、奴はどこにいる?」


「どこにもいないよ。少なくともこの部屋の中には絶対にいない」


「はぁあ?じゃああの穴はなんなんだよ?」


「知らんわポルナレフ。たぶん穴空けるだけ開けて他の所に行っちゃったんじゃないの?とにかくこの部屋にはいないよ」


ポルナレフに返答しながら原作ではどうだっけ?と記憶を掘り返す。もうこんだけ変わっているとどれくらい当てにしてもいいのかわからないけど確かヴァニラさんは床の下をくりぬいてポルナレフの足を奪った。今回とは状況が違うけど下からくる可能性は充分ある。うん、風化してちょっと浮いておこう。暗黒空間に飲まれるのはいやです。

ピリピリとした空気を維持しながら辺りを探っているとガッと小さいけれど何かぶつかった音が聞こえてきた。わかりにくかったけどそれは下から響いていた。恐る恐る下を向くとクリームの歯がポルナレフの靴に当たっている。どうやらヴァニラさんはやはり下から来たらしい。

予測していたから行動することができる。ポルナレフが奴がきた!下だぁああっ!!と叫ぶよりも速く私は風弾をポルナレフに撃った。いくらポルナレフといえどここで足を駄目にして足手まといになるのはごめんである。ヴァニラさんの攻撃を食らわせないためにポルナレフを吹き飛ばした。若干力が入っていたのは気のせいだ。ポルナレフだからとかそんなことはない。

だけれどヴァニラさんはポルナレフを襲わなかった。そのまま床を飲み込むと私の目の前に現れる。大きな黒い口が私の視界に広がった。…え?


「仲間を襲えば必ずお前は庇うと思った。仲間を見捨てられない、それが貴様らの弱点だ。それがこの結果だ」


黒い、星のない暗闇が私の前に迫る。風弾を撃ったばかりの私にできる動作はない。周りからの助けに期待したいところだけれど風化した私には触れることも突き飛ばすこともできない。今、物理攻撃の効かない私を失わせることのできるのは目の前の暗闇だけだ。それがすべてを飲み込もうと迫ってくる。

周りの叫び声が聞こえる。それが誰なのかを判別する時間は私にはなかった。

暗闇が私を包むとともに喪失感が押し寄せる。

ああ、制服、きたかったなぁ。


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