ホビット

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崖の上でアゾクと対決してから半年が経ち、わたし達はまだ旅を続けている。エレボールのある離れ山は見えているというのに中々たどり着かない。あの大鷲に離れ山まで連れてってもらえないかなーと思ったけどガンダルフいわく彼らは神聖なもので理由なく何度もほいほい頼んではいけないらしい。残念である。というわけで大鷲タクシーは使えないので自分たちで歩いていくしかないようだ。

半年の間オークやゴブリンと戦いわたしも結構レベルが上がった。今のステータスはこんな感じである。

勇 者 ナ ノ
せ い べ つ : お ん な
レ ベ ル : 19
H P : 1 3 7
M P : 6 2

▶︎魔法
メラ
ホイミ
ニフラム
ルーラ
ギラ
アストロン
リレミト
ラリホー
マホトーン
トへロス


うん、使える魔法が増えてHPとMPがかなり増えました。中には使えない魔法もあるんだけれど(マホトーンとか魔法使える人が全然いなくて使う場所がなさすぎる)レベルがあがるのはMPが増えるのでめっちゃ助かる。一度オークの大群に囲まれて魔法を使いすぎてMPが切れて向かってくるオークを物理で倒すのはめになったことがあるからね。あれは地獄だったわ。

ガンダルフにもらった杖を振りまわしながら迫りくるオークの群れを半狂乱で殴り続けた。わたしが杖をふるうたびにオークが吹っ飛んだからパーティには貢献できたと思うんだけど肉を叩く感触は気持ち悪いし後で杖を見たら真っ赤になっているしで最悪である。戦い終わった後にビルボがナノって実は強いんじゃないかってフィーリとキーリたちが話していたけどそんなことないよ。わたしはただのしがない勇者です。

オークに気を付けながら旅を続けていく。ビルボが偵察に行き戻ってきたのだけれどもオークだけでなく熊のような恐ろしい動物もいたらしい。オークだけでも厄介なのにさらに新手なの?どんどん状況が悪くなっていっている気がする。

ガンダルフがとある人の家に行くと宣言する。その人は敵か味方かと聞けばわからないと答えられる。そんな人のところにお邪魔するのは怖いけれどほかに選択肢もないので行くしかない。ううっ、こんな命を狙われてばかりの旅じゃなくてもっと楽しい旅がしたかったよ。

その人の家とやらに向かって歩いていると急に後ろからドスドスと大きな音を立てながらに何かが近づいてくる。え、何ごとと思って振り返るとそこには大きな熊のような生き物が全速力で走ってきていた。あ、あれがビルボの言っていた熊のような生き物か。なんか思った以上に大きいぞ!??

全員全力ダッシュでその場から逃げる。こっちじゃ!と叫ぶガンダルフに続いて走っていくと森の中に大きな家があった。門を潜ると中に入ろうとドワーフたちが扉に体当たりし始めた。え、かんぬきかかっているじゃん。何しているの?

後ろから走ってきたトーリンが皆を押し抜けかんぬきを開けて中に入る。うん、慌てると状況がわからなくなるもんね。はたから見るとかんぬきが掛かっている家に押し入ろうとしている姿はコミカルだったのだろうな。

中に入り追ってきた熊を締め出し中に入ってひと息つく。ここは誰の家だ?とオーリがガンダルフに聞くと先程の者の家だと答えられた。あの熊は色々な姿になることが出来るそうで熊と人の姿を行き来するらしい。え、つまりこの家はあのクマさんのお家ってことですか?不法侵入は我々の方ではないか。訴えられたらこりゃ負けますね。

しっかりと休め。今夜は大丈夫じゃ。というガンダルフがこっそり語尾にたぶんと付けたのに不安を抱きながら横になる。たぶんってなんだ。安全でないってこと?せっかく屋根付きの環境で寝れるのにちっとも休まりませんね。いやでも異常があれば誰かがなんとかしてくれるでしょう。わたしは寝る!おやすみ!



朝起きると大男が朝食を準備していた。あれがクマさんかな?人間の姿でも毛むくじゃらで熊っぽいな。

クマさん(本名はビョルンさんらしい)はドワーフは嫌いだがオークはもっとだ。といって旅の手助けをしてくれるらしい。最悪戦闘になる可能性まであった人だから手助けをしてもらえてかなり嬉しい。このままいい状況が続かないかなーと思いながらビョルンさんから借りた馬を走らせ暗い森の前まで来たところでガンダルフがいきなりわしは行かねばならなくなったとか言い出した。なんでやねん。ガンダルフが旅から離脱とかどういうことだよ。

何やら世界規模で重大なことが起こってどうしても行かなければならないらしい。それは大変なのだろうけどガンダルフがいなくなるとなるとこっちの旅が立ち行かなくなりそう。困った時のガンダルフ。ピンチになった時のガンダルフ。お助けキャラがいない旅って成功するのだろうか。イスタリについてのお小言を言われなくて済むのは嬉しいが頼もしい味方が居なくなるのは辛すぎる。これ、ちゃんと旅を続けられるのかな?

というわけでガンダルフ抜きで闇のエルフの森を抜ける羽目になりました。ガンダルフが振り返り様に『エルフの道を行け!迷えば森から出られなくなるぞ!』とか不吉なことを言ってくる。それ、フラグではないですよね?この陰気な森に入るのがますます嫌になってきたわ。

ガンダルフと別れて森の中に入っていく。ビクビクしながら進んでいくと地面にレンガで出来たであろう道が続いているのが見えた。なんだ、道があるのか。なら迷うなんてことなさそうだと思ってたら崖に突き当たり道が途切れてしまった。おう、ジーザス。まさか道が物理的になくなるなんて思ってなかったよ。これは迷子決定ですね。

みんなで道を探すが見当たらない。いつまで経っても進まないような違和感を覚えているとボフールが『おれのタバコ入れに似ている』と言いながら地面に落ちていた茶色の小物入れを手に取った。ああ、これで決定的ですね。『そんなわけないだろ?』と呆れ顔でいうビルボに全面的に同意する。エルフがいる森にドワーフが使うようなタバコ入れが落ちているわけがない。

つまり私たちは同じところをグルグル回っていてボフールは1度落としたタバコ入れを拾ったというだけのことだ。落し物を見つけるなんてボフールは案外運がいいが状況は最悪だ。おまけにこの森の陰険な雰囲気にのまれてかドワーフ達が喧嘩をし始めた。

まだ正気だと思われるビルボと顔を見合わせる。なんとかしなければこの森を抜けられない。どうしようかと考えているとビルボが木を登り始めた。上から森の全体像を見ようという魂胆らしい。名案だと思う。早速ビルボと木を登っていくのだが木はベタベタしていてちょっと登りにくい。おまけに周りを見渡すと大きなクモの巣があちこちに張り巡らされているのがわかった。…これやばいんじゃないの?嫌な予感しかしないわ。

ビルボと共に木を登りついに頂上にたどり着いた。そこでは青い蝶々がひらひらと舞い夕陽が辺りを照らし出す美しい光景が広がっていた。森を歩いていたことにより溜め込まれていた鬱蒼とした気持ちが祓われていく。なんかやっと息を吸えた気がするよ。風が気持ちいな。もう下に降りたくない。

木の上から辺りを見渡すとはなれ山や湖がよく見えた。いくべき方角がわかりビルボがトーリンたちを呼ぶが返事はない。まだ喧嘩をしているのだろうか?1度降りてみんなを呼びに来ようと思った瞬間木がガサリガサリと揺れ何かがこちらに近づいて来たことに気付く。

上からではわからないので下に降りようとした瞬間ビルボがクモの糸に引っかかって落ちていった。ええええ!?ビルボォー!!?

幸いビルボはクモの巣に落ち引っかかったことで地面との激突は避けられた。…いや、幸いか?あれもうクモの巣にかかった獲物の姿にしか見えないぞ?

なんて思ってたら案の定ビルボより数倍は大きい黒い蜘蛛が現れビルボに牙を剥いた。うわあああっ!!ビルボがヤバイ!てか怖い!なんであんな大きな蜘蛛がいるんだよ!あ、そういえばロードオブザリングにも大きい蜘蛛がいた気がするぞ?もうやだこの世界。

とにかくビルボを助けなければ!と思って木から降りようとした瞬間、ガサリと音を立て8つの瞳と目があった。あ、どうも蜘蛛さんこんにちは。ギャアアア!!!こっちにもいるぞぉ!!!

すぐさまメラを唱えて目の前の蜘蛛を焼く。幸いなことに炎は蜘蛛の弱点だったのかシャーーァ!!と悲鳴のような音を上げながら火のついた蜘蛛は暴れ回りやがて脚を縮こめて死んだ。はい、蜘蛛の焼き物いっちょあがりですね。

念のため杖で殴ってトドメを刺す。蜘蛛が意外と柔らかいことがわかったけどそんなこと知りたくなかった。なんか杖の先に緑色の汁がついているしこれどうしよう。

その辺りの葉っぱで汁を拭いながらビルボはどうなったのかと視線を下げると大きな蜘蛛が白い繭を引きづっているところだった。いやあああっ!!あれってビルボだよね?!やばいビルボが蜘蛛の晩御飯になってしまう!それは絶対に阻止せねば!

私は杖をしっかり握り締め蜘蛛の後を追うのだった。





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