series(JOJO)

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やあハロー。みんな私のことを覚えてますか?そう、現在全世界を敵にまわしてる系女子のミョウジナマエです。私だって好きで嫌われてるわけじゃないよ!普通に平凡でよかったわ!もし神様というやつがいるならこのあたりの住所をシャッフルしてくれ頼む。承太郎のお隣さんの称号を私から剥奪してください。

さてさて、そんな感じで今日も憂鬱な毎日を送ってるのだが一緒に登校している承太郎なんかそわそわし始めた。なんでこいつ情緒不安定な人みたいになってるんだ?と思ったがそうだ、思い出した。もうすぐ私の誕生日だった。うげえ

十代でここまで誕生日が嫌なのも私くらいじゃないだろうか?何が嫌かというと承太郎の祝い方が色々規格外なところが嫌なのだ。私としては日付が変わると同時におめでとう言ってもらえるとか1000円未満の実用的かもしくは可愛い贈り物を貰えるとすごく嬉しいのだが承太郎の祝い方はそんなささやかなものではない。わかりやすく去年の例を出すと去年は私の誕生日が休みだったため朝から貸し切った水族館に連れていかれました。係りの人がみんなで出迎えてくるしショーとか全部私たちだけのためにやってもらうし割と無口な承太郎と一日中一緒だし胃がキリキリ痛んだ誕生日だったわ。しかも夜はドレスコードが必要なレベルのレストランでディナーまでご馳走されたんだぜ?なにそれ羨ましい自慢ですか?と思った奴がいるかもしれないがならお前はサイズがぴったりなドレスが出てきても恐れないのか?スリーサイズが把握されてることに絶望しないのか?いきなり連れていかれた上級レストランでテーブルマナーをこなせるのか?ナイフとフォークの使い方なんてわからないわ!承太郎は優雅に食事をしてるのに私はカチカチ食器を鳴らしながら食べてるんだぜ?もはや嫌がらせだと思いましたよ。味なんてわからなかったわ。さすがにホテルに部屋を取ってますという展開は来なかったがたかが誕生日にこの対応は怖い。私たちまだ高校生ですよ?プロポーズを成功させたい男のコーディネートをこんなところで使うんじゃない!さらに恐ろしいことは承太郎はこの程度のことは普通のことだと思ってることだ。ゾッ。私承太郎見て思うよ、恋人選ぶときは価値観が合う人にしようって。

そんなわけで今年の誕生日は何されるのだろうと私はびくついていた。遊園地でも貸し切られてしまうのだろうか。いや、今年の私の誕生日は平日だ。それはない、はず。高級料理店に連れていかれるのも場違い感が半端ないのでやめてくれと苦情をいれたので大丈夫だろう。それでも安心できないのがこの空条承太郎という男だ。今年はどんな目にあわされるのだろう。

いっそ欲しいものは何かと聞いてくれればいいのに承太郎は絶対にそれをしない。聞かなくても相手の望むものを用意できるのがいい男だと思ってるふしがあるからだ。いやいや、お前私の欲しいもの用意できたことないから!というかエスパーでもない限り普通の人にそんなことはできませんから!やはり誕生日は相手の欲しいものを贈るのがいいと身を持って実感したね。ちなみに今私が欲しいのは入浴剤セットです。

取り敢えず何が贈られてくるのか事前にホリィさんに探りを入れてみる。あまりにもひどいようなら私は誕生日当日正体不明の高熱になされる予定だ。あ、こんにちはホリィさん。最近承太郎の様子どうですか?ははは

あら、ナマエちゃんいらっしゃい。承太郎なら最近おじいちゃんにもらった雑誌を熱心に読んでるわ。なんでもおじいちゃんの昔の友人の愛読書なんですって。私には教えてくれないの。思春期かしら?寂しいわ。といわれた。ほほう、雑誌か。承太郎が読む雑誌なんて相撲関係か海洋関係しか思い浮かばないけどなんなんだろう?ちょっと気になるぞ?

というわけで早速承太郎の愛読書とやらを調べてみる。承太郎の部屋に遊びに行って承太郎がホリィさんに呼ばれたた隙に鞄の中をがさごそ漁る。ちなみにこの部屋のベッドの下の黒い箱の中にはエロ本がしまったあったりするのだが、以前承太郎の好みはどんな子なのだろうと気になってエロ本見てみたら使い込まれているだろうページに私の写真が挟んであって私は無言でエロ本を閉じた。見なかったことにした。世の中には知らなくていいことがあるんだと本気で思った。

それでさて、件の雑誌は普通にすぐに見つかった。鞄の中に乱雑に入っていてわかりやすかった。さっそく手に取ってタイトルを読んでみる。『イタリア男に聞く!女の子に送るプレゼントの極意:日本版』と書かれていた。こいつも本当にブレないな。というかこれおじいちゃんにもらったんだよね?どんなお茶目なおじいちゃんだよ。取り敢えず承太郎がやってくる音がしたので雑誌を承太郎の鞄に戻しその場は何食わぬ顔で過ごす。そのあと本屋でその雑誌をチェックする。なんだか本気で頭が痛くなる内容だった。

女性がプレゼントにもらって嬉しいものランキング1位は花だ!なので情熱的な赤い薔薇の花束を用意して、とその後はひたすら口説き文句が書いてあった。おいこれタイトル詐欺だろ。途中から女性の口説き方に変わってるぞ?しかもなんだこの口説き文句は。『おやおや?痛くなかったかい、君みたいな天使が地上に降りてくるのは』ってこんなセリフを本気で口にする奴がこの世にいるのか?いやでも読んでみるとイタリアではわりと普通の口説き文句らしい。すごい国だなイタリア。

雑誌を読んでるだけならまあそれなりに面白いが問題は承太郎がこの雑誌を熱心に読んでいるということだ。それが本当なら今年の誕生日は花束をプレゼントされてセニョリータ、ああ、どんな花も君の前では霞んでしまうよ。とでも言われるのだろうか?どうやら今年の誕生日は腹筋が鍛えられることになりそうだ。承太郎がこんなセリフをいってきて私笑わずにいられるかな。自信ないわ。

まあ誕プレが花束ならいいや。やっぱり私も乙女ですからお花を貰うのはうれしいです。それに花なら去年みたいに恐ろしく金が掛かるとかテーブルマナーを求められるとかないだろう。うん、素敵なプレゼントだ。誕生日が楽しみだ。

だが私はわかっていなかった。承太郎がいかに規格外な男なのかちゃんとわかっていなかった。


そして誕生日当日ちょっと早めに家を出て承太郎の家に向かった。承太郎が花束をくれるというならばそれを貰って家に置いてから学校に行きたい。花は嵩張るのだ。

承太郎の家の前で待ってるとしばらくして承太郎が出てきた。私の方が早いことは珍しいからかちょっと驚いている。



「今日は早いじゃねえかナマエ」


「まあそういう日もあるよ。おはよう承太郎」


「ああ。ナマエ誕生日おめでとう」


「ありがとう」



そんな感じで挨拶をして誕生日を祝ってもらったわけだが承太郎の手には鞄しか握られていなかった。おや?と思う。

あれ誕生日プレゼントは花束ではなかったのか?違うのか?いや今日学校終わったら承太郎の家でホリィさんお手製のケーキをいただくことになってる。きっとそのときに渡すつもりなのだろう。

私は自分をそう納得させ承太郎とともに学校に向かう。だが学校が近付くにつれ辺りが騒がしくなっていった。うん?なんだ?

学校に着くと何故人が集まってるのか理解できた。花だ。校庭のあちこちが薔薇の花で飾られていたからだ。薔薇の花でだ。私は無言で承太郎を見た。



「さすがスピードワゴン財団だな。仕事が早い」


「やっぱりお前かよ。なんで校庭を薔薇で飾り付けてるの?ベルばらの庭でも作りたかったの?ホントどういう思考に至るとこんな突拍子もないことができるんだよ」



犯人はやはり承太郎らしい。こんな下らないことに世界最高峰の権力と技術を使うんじゃないといいたい。で、なんでこんなことしたの?まさか私へのプレゼントだとか言ったらぶっ飛ばすからな。



「よう、犯人それで動機はなんだ?ほらホワイダニットだよ。理由をいえ」


「それは着いてくればわかるぜ」



そういうと承太郎はスタスタ歩きだし校舎の中に入っていった。私もそれをいぶかしながらもついていく。校舎の中に入ってわかる理由ってなんだ?ダメだ私の貧相な想像力ではまるでわからん。だがろくなことにならない予感は物凄くあります。いやだってこの展開でよくなるわけがないもの。承太郎は階段を上がっていった。目的地は屋上らしい。



「ほらついたぜ。見てみろよ」



そう承太郎が言うので恐る恐る下を見てみる。そこには信じられない光景が広がっていた。



「女は花とサプライズが好きだって書いてあったからな。俺からの誕生日祝いだ。おめでとうよ」



校庭には薔薇の花で『ナマエ誕生日おめでとう』と書かれていた。なるほど。これが公開処刑という奴か。ふざけんなぁぁぁぁーーー!!

アホか!こいつアホなのか!どこの世界に校庭にデカデカとしかも薔薇で名前書かれて喜ぶ女がいるんだよ!いたらナルシストだよ!こんなジロジロ見られて恥ずかしくないわけがないだろ!ああ、これきっと校庭見える側の教室からはみんな見えてるんだよな。全校生徒に今日私が誕生日だと知られたよ。新手のイジメですか?今の気分は清水寺から飛び降りたいです。いや別にわざわざ清水寺まで行かなくてもここでいいか。ちょっと屋上からひもなしバンジーしてきます。



「どうだ、嬉しいか?」



そういってドヤ顔をする承太郎。おそらくこいつに悪意はない。本当に私に喜んで欲しいという善意の気持ちで実行したのだ。取り敢えずあの雑誌の出版社にはクレームを入れるとして私は拳を握り締めた。好意であっても結果には責任が伴うのだ。歯を食いしばれ




「ふざけんなヒトデ野郎!お前前から思ってたけどセンスないんだよ!お綺麗な顔を輝かしてドヤ顔するんじゃねぇ!顔面爆発しろ!」


「は?ブッ!」



私の怒号を聞いて呆然としている承太郎の顔を殴り抜ける。え、グーで殴るのかって?グーで殴ります。承太郎の顔に傷をつけるのは世界の損失だとか後で誰かに怒られそうだが承太郎の顔についた傷より明らかに私の胸を抉った傷の方が深いわ!もうこれは教室にいけないわ。保健室行こう。このまま保健室登校で高校生活が終わったらどうしよう。

保健室に行き布団を被ってしくしく泣く。史上最悪な誕生日になってしまいました。因みにあの大量の薔薇は承太郎ファンの皆様によって回収されたらしい。承太郎と名がつけば他人の名前を彩った薔薇ですら欲しくなるらしい。あいつらの根性もすごい。取り敢えず私はひとり寂しく保健室の枕を濡らすのだった。


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