series(ラディカル)

□7
1ページ/1ページ



「実は俺記憶喪失なんだ」


「それは初耳だね」




夕食時いつものように訓練を終え食堂にて飯を食っていたらナマエがそのように言った。どうしてそんな話になったんだっけ?ああ、そうだ。互いになんで海軍になったか話していたんだ。まずクザンが力のコントロールの仕方を学ぶためとそれを有効活用できる場所として海軍を選んだといったらナマエがこう返しできたのだ。

記憶喪失か。元気いっぱいでおちゃらけたナマエを見ているとそんな真摯な悩みを持っていたようにはとても思えないが、逆に記憶を失った時の衝撃で頭のネジが3本くらい飛んでこんな性格になったのかもしれない。

取り敢えずとてもデリケートな話であろうこの話題を続けるか迷うところだが当の本人のナマエが気にしてないようだ。ケロリとしながら話を続けた。



「えっと、俺なんか遭難しちゃったみたいで気付いたら知らない島の浜辺に倒れてたの。で、それからその島の人達の世話になってそれで村の警備員みたいなことしてたらある日村に海賊が押し寄せて来てそいつらをボコボコにしたら海軍のお偉いさんに気に入られて入隊することになったってのが俺が海軍に入った流れかな」


「結構凄い経緯だね。ナマエが海賊ボコボコできたってのが一番意外かな。ナマエってそんなに強かったっけ?この間海賊の下っぱ相手にピーピー言ってなかったっけ?」


「ピーピーとは言ってないよ!ひぎゃー!とは叫んだけど!だってあいつらポコポコ弾丸撃ってくるんだよ?俺ゴム人間じゃないから銃弾平気じゃないんです。当たったら痛いんだよ。村に来た海賊倒せたのはあいつらがめっちゃ弱かったからかな。俺様は霧人間だ!って叫んだけど全然霧になれてなかったからタコ殴りした。あれはなんだったんだろね?自己主張したい系男子?」



そういってナマエは食事を終わらせてデザートの苺パフェに手を付けた。相変わらずこいつはこればっかり食べている。そろそろ細胞が赤く染まっているかもしれない。この季節はいいだろうけど冬になったらどうするつもりなのだろう。ちょっと気になるところだ。

さてそれでナマエの話を聞いて思うところがあったので苺パフェを貪るナマエをじっと見ながら口を開く。やっぱりこいつとんでもないやつでしょ。



「あのさー、今の話聞いて思ったのと前から考えてたことなんだけどね、」


「うん?」


「ナマエって悪魔の実の能力を無効化できるの?」



これは前々から思っていたことだ。俺が触れてもナマエを凍らせることができなかったりサカズキのマグマを食らっても大丈夫だったりという事柄と今の話を総合するとナマエには悪魔の実の能力が効かないように感じる。

その弱かったという海賊もきっとロギア系の能力者で攻撃が効かないと自分を過信し油断したところをナマエにヤられたのではないだろうか。そう考えると色々と辻褄が合う。

そう思ってナマエの方を見るときょとんとした表情でこちらを見ていた。慌てて食べたからかパフェのクリームが口元についていて子供かと思いながらもハンカチを取りだし口元を拭ってやる。ナマエは大人しくされるがままになっていたがハンカチを退けてやるとぷはーっと息を吸い込んでスプーンをくわえながら考える仕草をとった。スプーンをくわえるのは危ないからと思ってナマエの口からスプーンを抜き取る。なんだかナマエといるといつも世話焼かせられるな。俺はこいつの保護者かよ。



「あー、クザンくん俺のスプーン返してよ。苺パフェ食べられないじゃん!」


「じゃあスプーンをくわえるなんて行儀悪いことしないの」


「はーい」


「で、どうなの?能力を無効にできると思うの?」


「んー、そうかもしれない」



ナマエはしれっとそう答えると再びパフェに食いついた。能力を無力化できるかもしれないことより目の前のパフェの方がナマエにとっては大事らしい。結構凄いことだと思うんだけどナマエが絡むと大したことに感じないから不思議だ。でもやっぱり悪魔の実の能力を無力化できるのはすごいと思うよ。世の中には厄介な実の能力が多数ある。



「そうかもしれないって自分じゃわからないの?」


「わからないよ。だって俺は特に何かしているわけじゃないもん。誰かの能力を無効化してるなんて実感ないんだよ」



そういってナマエは眉をハの字型に寄せる。そうか、ナマエが意識的にやって出来ることでもないのか。それならナマエに能力を無効化できる力があるという意識がないのも頷ける。けれど俺はかなり確信していた。ナマエが俺の側にいても凍らないのはこいつの特質であるということを。ナマエには悪魔の実の力を無力化できる力があるのだ。



「まあたぶんナマエにそういう力があるのは間違いないよ」


「そうかな?」


「そうだね」



からんと音がしてナマエが空になったガラスの容器にスプーンを投げ入れた。パフェは食べ終わったらしい。俺がさっき渡したハンカチで口元を拭うとんーと首を傾げながらこちらを見た。



「よくわかんないけどこれって便利なんだよね?」


「そうだね。なんでかわからないけどそのお陰でナマエは俺に凍らされたりサカズキに溶かされたりしないんだから良かったんじゃない?」


「そっか。なら良かったよ。そのおかげで俺はクザンくんとサカズキと友達になれたんならこの体質でよかったよ。心底そう思う」



そういってナマエはへらりと笑った。凄い力を持ってるのにその利用法が俺と友達になることで満足するなんて本当に欲のない奴だ。

だけれど俺も嬉しかったので口元に笑みを浮かべる。誰かを凍らせてしまう俺と凍らないナマエが相性がいいのは間違いない。俺もナマエが友人でよかったと心底思った。


8

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ