series(三角関係)

□負け犬は遠吠えさえ吠えない
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「おい、旦那はどうした。うぜえからそんな頻繁にくるんじゃねえ」


「だってさ、聞いてよクロくん!ドフラミンゴの奴がさ、」



そういって俺のもとを訪れたのはナマエだった。こいつがくると話が長くなる上、仕事が中断されるから迷惑で仕方ない。

それでも話を聞いてやるのはこいつが同郷出身で俺が幼い頃からこいつの面倒をみさせられてるからだ。

ニコ・ロビン曰くそれを幼馴染みと言うらしいがそんな甘ったるいもんじゃない。

飼い主とペット、そうでなければ被害者と加害者、それが俺達の関係だ。

幼い頃からこいつには散々迷惑をかけられた。ナマエは泣き虫ですぐピーピー泣きやがるからいつも俺が面倒みさせられた。

こいつの鼻水でいくつ服をダメにされたかわかりゃしない。

ある時は犬に追いかけられただのある時はいじめっ子に意地悪されただのナマエはいつもしょうもないことで泣きやがる。

ナマエが泣く度俺は駆り出され犬をぶん殴りいじめっ子どもをボコボコにしていたらどうやらナマエの中では相談=俺という方程式が成立したらしい。

そのままなんだかんだズルズル付き合いを続けていったが俺が海へ出ると同時に一端交流はなくなった。

そして俺が海で一旗あげ有名になった頃ナマエも別の意味で有名になっていた。

なんとナマエはあのドンキホーテ・ドフラミンゴの恋人になっていたのだ。

最初は同姓同名の別人かと思ったが七武海の召集で行ったときに見掛けたあのアホ面は間違いなくナマエだった。

あの時の衝撃は未だに忘れることができない。

それからナマエは再び何かトラブルがある度に俺のところに押し掛けてくるようになった。

関わるべきでないとわかっているのだが昔の癖でずるずるとまた愚痴を聞かされるハメになった。

それが現在だ。



「で、今度はなんだ。この前みたいにドフラミンゴの野郎がかっこ良すぎて死んじゃいそうとかいったら今度は砂にするからな」


「違うもん!本当に大問題だもん!ドフラミンゴに浮気された!」


「はあ?」



聞こえてきた言葉に耳を疑う。

ドフラミンゴといえばこっちが腹立つくらい脇目もふらずナマエとイチャイチャしてるじゃねえか。

何度砂吐いたかわかりゃしねぇ。それなのに浮気だと?ありえねえ

どうせ秘書あたりと二人っきりだったのを勘違いしたんだろ



「勘違いだろが」


「違うもん!昨日おはようって挨拶しにドフィの部屋行ったらドフィが金髪の巨乳美女と裸で寝てたんだもん!」



これ以上ないほどアウトだ。それは間違いなく前日ヤってるだろうな。

だがあのドフラミンゴ浮気だと?

まあ正直ナマエの身体はお世辞にも実ってるとは言えねえからイイ身体の女抱きたくなる気持ちはわかるがそれならドフラミンゴは完璧に隠しきるだろう。

ナマエ程度騙すなんて奴にはわけないはずだ。なのに何故ナマエに見せるような真似をした?

単純に考えればドフラミンゴの野郎がナマエに飽きたのだろうがそれなら5日前の行動はなんだったんだ?

俺がナマエの同郷なことを知り、愚痴愚痴と俺がナマエの幼い頃を知ってるのが羨ましいだの写真寄越せだの喚いてたのはなんだったんだ?

おまけに自分よりナマエのことが詳しい男がこの世に存在するのが許せねえとか言って傘下の船率いてやって来やがったのはなんだったんだ。

そのせいで海軍本部に睨まれるはめになり未だにその後処理に追われてるのだからこっちとしては納得できねえ。

しかもナマエの『でも、私の女として大切なことは全部ドフィが初めてだよ?』の一言であっさり帰っていきやがったしバカップルは他所でやりやがれ。

さらにその後処理が今こうしてナマエの相談のせいで中断されてるのだからやるせない。こいつらに関わるとろくなことがねえな

まあとにかくドフラミンゴがナマエに飽きたという線は考えにくい。

だとすれば後は、



「ナマエ、その浮気現場見た後どうした?」


「え?全力で逃げてきたけど?」


「すぐ引き返して問い詰めてこい。それでこの件は終わりだ」



在り来たりだがドフラミンゴの奴ナマエに嫉妬させようとしてわざと現場を見たんじゃねえのか?

めんどくせぇことしやがる。だがだとしたらナマエが一言嫌だと言えばそれで済むだろう。



「ほら、さっさと行きやがれ」


「ええー!?やだよ!もし用済みとか言われたらどうするの!?私一生立ち直れないよ!」


「んなことにはならねぇからさっさと行け。いい加減鬱陶しいんだよ」


「うわー!幼馴染みの女の子に向かってひどーい!じゃあこれで振られたらどうしてくれるんだ!」


「あ"ぁ?ねぇって言ってんだろ。わかっよ、振られたら責任取ってやる。そんときは俺が」



口から出た言葉にハッとする。俺は今何を言うつもりだったんだ?

急に黙り込んだ俺にナマエは不思議そうに首を傾ける。



「どうしたのクロくん?」


「‥いや、家政婦くらいなら雇ってやるよ。いくらナマエでも掃除くらいはできるだろ」


「責任とるってそこかよ!ヘヘーン、やだね!私が料理や家事とか花嫁修行頑張ったのはドフィのお嫁さんになるためだもん!クロくんの家で家政婦するためじゃないもんねー!」


「ならさっさと旦那のところへ行ってこい。このままだとお前の未来は掃除のババアだぜ?」


「げ、それはやだ。仕方ないからフルスイングできる金属バットもって乗り込んでくるよ。クロくんまたね!」



そういってバタバタと慌ただしく駆けていくナマエに2度くるなと心の中で叫ぶ。

ナマエに関わると録なことはない。二度と顔もみたくないくらいだ。

そうでないと自分の中の感情に名前をつけてしまう。

勝てねえ戦争はしない主義だ

余計なことはしたくない

葉巻に火をつけ煙を吐き出す。いつもより苦い煙草の味に眉を寄せる。

それでも明日以降またナマエがここに来ることを考えるとその苦味さえ癖になるような気がするのだから

俺は中毒者だ。



〜負け犬は遠吠えさえ吠えない〜


(クロくん!ドフィ私のこと嫌いになったんじゃないんだって!ただ嫉妬させたかったんだって!)


(そうか、よかったな。じゃあさっさと旦那のとこ帰りやがれ)


(いや、帰んないよ?暫くここにいる)


(は?)


(だって浮気したのは事実だもん!私怒ったから当分帰らない!ここにいる!)


(‥もうくっちまうか)


〜end〜

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