series(三角関係)

□君につけ込む弱い僕を許してください
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「ナマエ何してんだ?」


「んー?お祝いしてるんだよ?」



食堂に行くとナマエが1人でシャンパンを開けていた。

今日は久々に陸に着いた日で船番以外のやつは皆陸に上がったというのに、1人で酒盛りをしているナマエを不思議に思い声をかけてみたところそう返ってきた。

ナマエはだいぶ酔っているらしくへらへら笑いながら顔を赤くしていた。

お祝い?今日は誰かの誕生日だっけ?でもそれなら皆で酒盛りするよな?



「なんのお祝いなんだ?」


「マルコが100回目の浮気をした記念日かな」


「ぶっ!」



ナマエの隣に腰掛けナマエの飲んでいたシャンパンに口をつけた瞬間聞こえてきた言葉に思わず吹き出す。

う、浮気?え、それって、



「ナマエってマルコと付き合ってたのか!?」


「そうだよ。なんだ、エースも知らなかったんだ。皆知らなかったって言うんだもん。私達ってそんなに恋人っぽくなかったんだ」



そうナマエはグチグチと溢し始めたが俺はそれどころではなかった。心の中が修羅場だった

嘘だろ?ナマエがマルコと付き合ってたなんて

俺はナマエの事が好きだった。

まだこの船に慣れてなくて刺々しかった俺に辛抱強く接してくれて、船に慣れるまでの間面倒を見てくれた。最初は姉のように慕っていた。

だけど次第に独占したいって気持ちが強くなって家族以上の感情を抱くようになった。

それが恋だと気付いたときにはどうも照れくさくて告白出来ずにいたんだけどもまさかマルコと付き合っていたなんて。

突然の失恋に項垂れてるとナマエはお構いなしに愚痴を吐き続けた。



「今日も最初はデートしてたのに暫くすると夜は危ないからナマエは帰れって追い返されてつけてみたら案の定女引っ掻けてホテルいってやがんの。私で発散しろや」


「マルコとナマエ身体の関係もあるんだ、」


「もう本当にありえない。別れようかな。でも隊同じだからこれから気まずくなるの目に見えてるし。やっぱり家族内で恋愛なんてするもんじゃないな」


「え、それは困る」



ナマエの発言にとっさに口を挟む。家族内で恋愛しないってそれ俺のことも範囲外になるじゃん。それは嫌だ

ナマエがきょとんとしてこっちを見てきたのでそこで初めて失言したと気付く。

うあああっ!しまった!俺の気持ちバレる!!

内心テンパっている俺にナマエは平然と話し掛けてきた。



「なんだ、エース。家族内に好きな人いるのか?」


「え、いや、その」


「ふむ。誰かな〜。この船可愛いナースの子多いもんね。でも意志がはっきりした子が多いから軽い気持ちじゃ付き合えないぞ?」


「へ?」



ナースという言葉にナマエが俺の好きな人がナースだと勘違いしたことを知る。

この船に乗っている女はナマエ以外ナースなんだからその思考にいくのは同然なのだが

ナマエに気持ちがバレなくて嬉しいやら悲しいやら俺は複雑な気持ちを胸に抱えた。



「それにやっぱり家族間の恋愛は別れたときがめんどくさいよ?気まずくなるし周りに気を使うし。ちょっと恋したいお年頃なら恋人は外に作りなさい」


「じゃあ何でナマエはマルコと付き合ったんだよ」



家族内で付き合うなというナマエにムッとし思わずそう返す。

ナマエは家族とマルコと付き合ってるじゃないかという理不尽さに対する思いとなんでマルコと付き合ってるだよという嫉妬心がごちゃ混ぜになる。

そういうとナマエは手元のグラスをくるくるかき回しそして中身を煽った。

コトンとグラスを置いてナマエは笑みを浮かべた。

それは無理矢理口元を吊り上げたような笑みでナマエは今にも泣き出しそうだった。



「そういう計算が出来ないくらいマルコのこと好きになっちゃったんだ。」



途端胸が熱くなるのを感じた。

その気持ちは理解できると思った。

後先なんて考えたくない。ただ、目の前にあるこの人に手を伸ばしたい。

それはそういう感情だ。



「俺、ナマエが好きだ」



気付いたらそう口にしていた。

ナマエは驚いた顔でこっちを見てきたがもう口は止まらなかった。

これだけナマエに思われてるマルコが羨ましいという気持ちとそんなナマエを悲しませるマルコが許せないという気持ちが交互に押し寄せ溢れかえった。

マルコにナマエを返したくないと思った。



「ずっとずっとナマエが好きだったんだ。だからマルコなんてやめて俺にしろよ。俺はちゃんとナマエを大切にする。俺と付き合ってくれ」



気付いたらナマエは俺の腕の中にいた。

俺がナマエを抱き締めたのだ。

俺は固くナマエを抱き締めたがナマエの両手はだらんと下がり俺にすがることはなかった。

やっぱり俺じゃダメなのかとそう思った瞬間


「弱った女につけこむなんてそんな手腕どこで身に付けたんだ?」


「イテッ!」



ピンッと人差し指でおでこを弾かれる。

炎人間の俺に攻撃出来るなんて覇気を使ったのだろう。額がじんじんした。

文句を言おうと顔を上げた瞬間泣いているナマエが目に飛び込んできた。



「本当ずるいな」



微笑みを浮かべながら涙を流すナマエを見て俺も悲しくなった。胸が熱くなる。

やっぱりナマエはマルコに浮気されて悲しかったんだ。本当は辛かったんだ。

なのにいつも1人でそれを酒に流し押さえ込んでいた。

ずっと1人で耐えていたんだ。

気付いたら涙が溢れ出していた。

俺まで泣き出したことにナマエは笑うと今度はポンポンと頭を撫でてきた。



「おいおい、何でエースまで泣いてるんだよ」


「だっで、ナマエが泣いてるんだっ!」



目の前にいるナマエをしっかりと抱き締める。

独りぼっちで泣いているナマエを支えたいと思った。

マルコに返したくないと思った。

今度はナマエはそろりと俺の背に腕を回してくれた。



「君って奴はまったく、」



ナマエの呆れたような声な聞こえてきたが俺はただただナマエを抱きしめて子供のように泣いた。

腕の中からありがとうという呟きが聞こえてきて俺はマルコからナマエを奪うことを心に決めた。



〜君につけ込む弱い僕を許してください〜


(好きだ、とただ思った)


〜end〜

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