series(三角関係)
□未来のカップルに祝福を!
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クロコダイルのした所業の後始末を任されたスモーカーは不機嫌だった。
本来なら適当な奴に押し付けてさっさと麦わらを追いたいところだか上からグダグダ言われてたので仕方なく引き受けた。
表向きはスモーカーがクロコダイルを捕まえたというのだから最後まで面倒をみろというのが指令だがそれがさらにスモーカーを苛立たせた。
しかしいつまでもぶつくさ言っていても仕事は終わらないのでクロコダイルが経営していたカノジ、BWの本部から洗うことにした。
クロコダイルの悪業については叩けば叩くほど埃がでてきた。
やっぱり海賊なんてどうしようもないやつらだと再認識したところでふとクロコダイルの居室と思われる部屋に重々しく存在する扉があることに気が付いた。
どうせろくなものはないと思いながらもスモーカーは扉を抉じ開ける作業に取りかかる。
自分の居室に繋がる扉にあるものだからおそらくそこそこ大切なもの、金や財宝のなどの置き場だろうとあたりをつけてスモーカーは扉を抉じ開けた。
そしてそこに存在したものは自分の想像を大きく裏切ったものだった。
そこにいたのは少女だった。
白いワンピースに実を包みベッドに腰掛けうつ向く少女がいた。
監禁
その二文字がスモーカーの頭に浮かんだ。
あの野郎やっぱりゲスじゃねえか。
ギリッとくわえていた煙草を噛み締める。
窓はあるもののどこか薄暗いこの部屋の住人である少女にはスモーカーの推理を裏付けるように首輪が取り付けてあった。
少女はスモーカーに気が付いたのか顔をあげやがてゆっくり口を開いた。
「あれ、誰?クロコダイルは?」
少女の声はスモーカーの想像に反して軽快なものだった。
「…奴なら捕まった。インペンダウン行きだ。てめぇは誰だ。」
「ふーん、捕まったんだ。因果応報って本当なんだ。クロコダイルってなんか殺しても死ななさそうだったからそんな日はこないと思ってたよ。」
じゃらじゃらと手元の鎖を弄ぶ少女をどこかスモーカーは得体の知れないものを見るような心地でいた。少女はあまりにもこの部屋に似つかわしくなかった。
「私はナマエ。見ての通り悪い犯罪者に捕まって監禁されたイタイケなレディです」
「自分をいたいけなんていうやつにロクなやつじゃねぇ」
「おいおい、目の前の光景を見てみなよ。どうみても私可哀想じゃん!私被害者だよー」
そういって手をパタパタと動かす少女にスモーカーはチッと舌打ちする。見た通りでは確かに少女の言う通りであるのだろう。釈然としないが
取り敢えず少女は解放することにする。例え少女がクロコダイルの手先だとしてもスモーカーが後れをとることはない。それに本当に監禁されていたというなら放っとくのは寝覚めが悪すぎた。
少女の首元に手をおき鎖をたちきる。その間少女は抵抗することもなく大人しくしていた。
「おお!首が動く。自由って素晴らしいね!」
「アホなこと言ってないでさっさと着いてこい。取り敢えずてめえの身は海軍で預かる。」
そういって歩き出そうといて違和感を感じた。
鎖を断ち切ったというのに少女はベッドから降りようとしない。
いぶかしむスモーカーに少女は苦笑を返した。
「えーと、実は足の腱を切られてまして歩けないのです。」
「…」
海賊はクソだと思うのは何度目だ。
スモーカーは少女のところまで戻り少女を抱えようとする。
すると少女から制止の声がかかった。
「ちょっと待った!ストップ!プリーズ!」
「なんだよ、大人しくしろ。運ぶだけだ。」
「いや俵運びは止めてください。お姫様だっこを所望する!」
「はぁ?何言ってんだ。ガキが文句いうんじゃねえ。」
「子供がいるんだ」
その言葉にスモーカーの動きがピタリと止まる。
少女は言葉を続けた。
「私は妊娠してる。だからお腹を圧迫するわけにはいかないんだ。」
スモーカーはじつと少女を見つめた。スモーカーから見て少女はどうみてもガキだ。
言葉の意味を理解したくないと思った。
スモーカーは黙って少女の膝下に手を入れるとできる限り優しく抱き上げた。
そして黙って少女を運ぶ。腕の中の少女かありがとうと言ったが何も返せなかった。
これ程までに胸くそ悪いと思ったことはなかった。
少女の調書をとるのはたしぎに任せた。同じ女のほうが色々と言いやすいと思ったからだ。
少女の境遇は酷かった。ある日突然クロコダイルに気に入られ浚われ操を奪われ、逃げようとして足を奪われ、そして自由を奪われた。
故郷はクロコダイルによって消されたらしい。帰るところもないのだ、あの少女には。
本人が飄々としてるから分かりにくいがあんまりな状況だ。たしぎは涙ぐんでいた。
こらからどうするつもりだあの少女は。
「やあ大佐どの!」
1人物思いに更けさっていたら当人が話しかけてきた。
リモコンで動く電動車椅子に乗りながら少女はやってきた。
「この車椅子便利だね!いやー、世の中いいもんを発明する人がいるよ。色々ありがとう!」
「…礼ならたしぎに言え。用意したのは俺じゃねえ」
「なんだ大佐どのは素直にどういたしましてが言えない人間か?ツンデレか?まあツンデレは総じて照れ屋が多いのでここは1つ私が大人になろう。それでも大佐ありがとう!」
「…なんでてめぇはそんなに平静でいられる。」
被害者に言っていい言葉ではないのは自覚していた。けど止まらなかった。
あんな目に合いながら絶望に染まらないこいつの心情が理解できなかった。
「あんなとこに監禁されてあんな目にあったら気が狂ってもおかしくわねえ。なのにてめぇはそのままでいられたんだ。」
煙草の灰が落ちた。まだ換えてからそんなに時間はたっていなかったが返答が待てなくて間を持たすため新たな煙草に火をつける。
少女はじっとスモーカーを見上げていた。スモーカーが煙草を吸う光景をみてそしてそれが、終わるとへらりと笑った。
「最初は抵抗したよ。なんで気に入られたのかわかんなかったけどてかそれは未だに分かんないんだけど、いきなり連れて酷い目合わされたし、逃げようとしたら足の腱切られたし故郷を消されたって聞いた時は死のうと思った。」
死なせてくれなかったけど、と呟く少女にスモーカーは黙って耳を傾けていた。
「でも子供が出来たって聞いた瞬間から気持ちが変わった。最初は絶望したけど何がなんでも生きないとって思った。この身体は私のものだけじゃないんだ。この子は私が守らないとと思った。」
そういうと少女は笑った。少女なのに女性めいていてそれは母親の顔だった。
「なんかもう開き直ったんだよね!この子のためになんだってやるぞ!ワニ野郎だって利用してやるってね!」
そういってぎゅっと握りこぶしを作る少女をスモーカーは全く理解できなかった。
なんでそんなに強く生きれるのか不思議で仕方ない。
理解できるものではない、けど尊いものに感じた。この沸き上がる気持ちはなんだ?
「これからどうするつもりだ?」
「んー、考えてない。帰るとこもないし、てかワニ野郎に慰謝料請求したいくらいだ。」
「帰るところがないなら俺の家にこい」
スモーカーの言葉に少女は驚いて目を丸くする。スモーカーだって自分の言葉に驚いていた。後悔はないが
「え、なんで?どうしてそうなった?マジどういうこと?」
「情がわいた。それだけだ。」
「え、情って。同情ですか?愛情ですか?」
「知るか。情は情だ。で、どうすんだ。」
ぽかんとしてた少女はその言葉でニヤリと笑う。いたずらっ子のような顔でニヤニヤ口を開く。
「もちろんお願いします!」
「てめえこそいいのかよ。見知らぬ男の家に住んでも」
「ほらほら利用できるものは利用しないと!それにスモやんのことは結構好きだよ?」
「…その呼び方はやめろ」
この日芽生えた小さな感情がやがてどのように成長するのかは誰もしらない。
けどスモーカー大佐にロリコンのアダ名がつくのはそう遠くない未来の話であった。
〜end〜