series(ブック)

□2
1ページ/1ページ



目を擦り起床する。目覚ましはかけていなかったが何となく起きてしまった。時計を見るといつも起きる時間と同じだった。習慣って怖い。

寝室に行きそっとドアを開けるとローが寝ていた。やっぱり夢じゃなかったか。まあ夢なら私がソファーで寝てるわけないもんね。

顔を洗い身支度をしてとローが起きてくるまでの間に朝食を作ることにする。アレルギーあるかな?取り敢えず定番の和食で朝食を準備する。ご飯と味噌汁と鮭を焼いたものと卵焼き。久し振りにまともな朝食作った気がするよ。

もうすぐ用意かできるという所でローが起きてきた。相変わらず酷い隈を目の下に作っており目を擦りながらやって来た。よく寝てたと思うからあの隈は単なる寝不足によるものではなく体質なのかもしれん。まあ、わからんけど



「おはよう、ロー」


「‥‥はよ」


「洗面所は廊下にでて左側にあるよ。ドア空いてるから行ったらわかると思うけど」


「ん、」



それだけ言うとローはもそもそと廊下の方へ歩いて行った。動きがのそのそしてるけど低血圧かな?私は低血圧ではないからわからんが低血圧の友達が朝は本当にヤバいといってたからそうなのかもしれない。まあ具合が悪いんじゃないなら何でもいい。

ローが戻って来た頃にはこちらも盛り付けまで終わっていたのでローをイスに座らせ朝食を食べることにする。



「いただきます」


「‥いただきます」



ローはしっかりと挨拶をした。食べ方も綺麗だしホントに礼儀正しい子だ。

もくもくと食べてるところを見ると食べれないものもなかったらしい。



「おいしい?」


「ああ、うめえ」


「おお、それは良かった。ところで何かアレルギーとかある?あと嫌いなものも」


「アレルギーはねえがパンが嫌いだ」



そう鮭をもしゃもしゃ食べながらローが答える。…パンが嫌いなんて人初めて聞いたわ。よかった、朝食パンにしなくて。私、手抜きの時は朝食食パン1枚とか普通にしてたから。

腹ごしらえしたとこでそろそろ本題。



「で、昨日も聞いたけどローはどうしてここにいたの?調べたんだけどノースブルーって地域もないし分かるなら出来れば親御さんに連絡とりたいから電話番号知りたいんだけど」


「分からねえ。気付いたらあそこにいた。最初は拐われたんだと思って暴れた。そのことは悪かった。ノースブルーがわからない?どんだけ田舎なんだここは。家の番号はxxx-xxxxだ。」



なんだろう、ローの話が全く噛み合わない。まあいいや、取り敢えず電話番号が分かるならなんとかなるだろう。

私は携帯を取りだしローのいう番号にかけた。


プルルル、プルルル、ガチャッ


「現在使われてませんって言われたんだけど番号あってる?」


「‥それは何だ?」



ローが驚いた表情でこちらを見てくる。いや、何ってただの携帯なんだが。



「携帯電話だよ。電話する機械です。」


「俺のいた国では電伝虫を使って電話されていた。そんな機械はみたことない。」


「電伝虫ってかたつむりのことだよな?え、どうやって電話するの?意味がわからないんだけど」


「電伝虫は互いに念波を交信する性質があってそれを利用して通信に使われる。そんなことも知らないのか」



とローが心底驚いたというような表情をするがこちらの方が驚いたわ!でんでん虫がそんなHSK(ハイスペックカタツムリ)だなんて知らなかったよ!てか絶対ないわ!

お互い顔を見合わせて黙りこむ。恐らく同じことを考えてるのだろう。



「ローって本当どこから来たの?」


「恐らく違う世界からだろう。これだけ生活習慣がちげえとかありえねえ」



ローの言葉に私もうんうんと頷いた。ローが嘘を言ってない限りもうローは異世界から来たとしか思えない。嘘をつくにしても電話がでんでん虫なんていう必要ないし多分本当のことをいってるのだろう。なんて状況だ。人類史上初の異世界人との遭遇なんじゃない?あんまり嬉しくはないが



「念のため聞くけど帰り方わかる?」


「わかってたらとっくに帰ってる」


「ですよねー」



つまりローは異世界から来て帰り方もわからないと。若干顔色を悪くさせ唇をぎゅっと噛み締めるローを見て決意する。仕方ないな、こんな子どもを放置するわけにもいかないし。



「帰れるまでの間うちにいればいいよ」


「! いいのか?俺は見知らぬ他人だぞ?」


「まあそうだけどここまで来たら乗り掛かった船というやつだ。ローの状況知っちゃった上で見捨てるほど薄情じゃないよ私」



驚いた顔でこちらに目を向けたローにそう返す。おいおいロー。お前私がお前のこと見捨てるって思ったのか。流石にこんな子ども1人をほっぽり出したりしないって。

ローは人を頼るって感覚があまりないっぽいな。子どもなんだから図々しいほど甘えるくらいでいいんだよ。

ローはぎゅっと拳を握りしめるとペコリと頭を下げる。



「すまない。世話になる」


「こういう時はありがとうでいいんだよ」


「‥ありがとう」



素直にお礼を言ってくるローが可愛くて私はローの頭を撫で回した。ローはちょっと嫌そうだったけど撫でられるのは子どもの義務なので諦めなさい。

こうして日本代表のミョウジナマエと異世界人代表のトラファンガー・ロー不思議な生活か始まったのだった。


3

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ