少女A(その他)

□1
1ページ/1ページ



これで異世界トリップは何度目だろう。もう数えるのは飽きました。どうせバトル物なんだろ?どうせ女子高生になって青春を送れるわけではないんだろ?もういいよ、わかってるんだよ。さっさとどこの世界か答えを言えやコラ。

幸の薄いことに定評のあるナマエちゃんは気がつけばまた別の世界にトリップしていた。なんでこう、コロコロ世界が変わるんだろう。ひとつの世界にずっと留まっていたいというわけじゃないけどなんか落ち着かない。というかこれだけ色んな世界に行けるのならそろそろ元の世界に戻ってくれてもいいではないか。神様のけちんぼ。

取り敢えず自分のスペックについて調べてみると相変わらずふうふうの実の能力は健在だった。ということはこの世界にはなんらかの危険がある可能性が高い。ははは、次はどんな死闘が繰り広げられるんですか?逃げる準備は万端ですよ?

そんな感じでビクビク震えながら来るだろう衝撃に備えていたのだが、しかし、いつまで経っても世界な命運をかけたようなバトルは起こらない。それどころか私が用意したものではないが可愛らしい制服を渡し、あなたも明日から高校生なのねとお母さんが楽しそうに言ってきた。え、今度の世界は高校生からスタートなのですか?ついに憧れの女子高生生活を送れるのですか?いやいや、まてまて。まだ確定ではない。いつぞやのようにイケメンクォーターのスタンド使いが幼なじみで面倒事に巻き込まれるかもしれないのだ。ぬか喜びになる可能性が高いのだから期待するのはやめておこう。ふふふ、度重なる異世界旅行で私は学んだのだ。どうやっても平穏な人生などおくれないということを。どうせこの世界でも死亡フラグに怯えながら全力で逃げまとうことになるのだろ?来るならこい!さっさとこい!というか焦らしプレイ本当にやめてお願い。精神が疲弊します。

というわけで今度はどの世界に飛ばされたのだろうと怯えながら生きていたが何も起こらない。穏やかな日常が過ぎていくだけだ。ええっ、ホントに何もないの?この世界には戦いがないのですか?

茫然としながら新学期が始まった。寒咲さんという友達も出来て、放課後に彼女の家に遊びにいったりもした。寒咲さんの家は自転車屋さんで色んな種類の自転車があり、そのなかでも競技用のロードバイクは格別にかっこよかった。見本用のロードバイクに乗せてもらってテンション上がりまくって高校入学祝いに親にねだってみようかななんて思いながら私の新しい生活はスタートした。今のところは順風満帆そのものである。なんか幸せすぎて怖い。これ後からとんでもないどんでん返しがくるんじゃないのか?はい、これから皆さんにちょっと殺しあってもらいますとか言われたりしないよね?バトルロワイヤルが行われたのってなんて名前の学校だっけ?どうか総北ではありませんように。

クラスメイトともそこそこ良好な関係を築けている。隣の席の小野田くんとは仲良しだ。

小野田くんはもっさいビジュアルにアニメオタクという趣味のいかにもな奴だが人としては素晴らしい奴だし私もマンガとか大好きだからそこそこ話があう。新刊の内容を話したりするだけで大袈裟なほど喜ぶ小野田くんは本当にいい人すぎるわ。本人がいうには今まで友達がいなかったからこういうやり取りができて楽しいんだって。めっちゃ泣けた。

そんな小野田くんに秋葉原に行こうよ!と誘われた。いいね、噂の秋葉原に1度は行ってみたいと思ってたんだよ。もえもえオムライスっていうものを食べてみたかったんです。ということで了承するけど小野田くんの交通手段は自転車だという。

え、自転車?秋葉原ってここからどれくらいの距離かは知らないけど自転車でいけるものなの?と聞くと僕は小4から自転車で通っているよ!と答えが帰ってきた。ああ、そうなんだ。ならいけるのかな?

自転車だと交通費が浮いてガチャポンが5回も回せるんだと楽しそうにいう小野田くん。確かに交通費は浮きますね。えっと、学校までのバスが行きで200円往復で400円、1ヶ月で12000になるわけか。私も明日から自転車通学にするか。

というわけで私も次の日から自転車通学を開始する。これから3年間乗るなら本当に寒咲さんのところのカッコいいロードバイクを買ってもらえるよう親にねだってみてもいいかもしれない。

裏門坂を登るのはめんどくさいけど風人間の私に空気抵抗なんてもんはほとんどないし異世界で鍛え上げた体力があるのでそこまで苦労することなく登りきることができた。ハンター試験をクリアした私にとっては難しいことではなかったけどこれを小野田くんは本当に登れるのか?いかにも貧弱もやしオタクって感じなのに大丈夫なの?でも毎日自転車でこの坂登っているって言ってたもんな。私が異世界生活で常識なくしただけで案外普通なのか?現代人すげー。

そんなわけで自転車で登下校することになった私は放課後小野田くんと秋葉原に向かう。なんかあれだよね、友達と放課後自転車こいでちょっと遠くまで遊びに行くのって青春って感じで楽しいよね。少なくとも海賊船に乗ってたり敵スタンドと戦ったり戦闘狂から逃げ回ったりするよりは健全で安全だ。ああ、今私生きているって気がするよ。なんの刺激もない平穏な日常がなんと素晴らしいことか。

ルンルン気分で小野田くんと秋葉原を回っていると小野田くんが赤い髪の男の子にナンパされた。その子は関西弁で陽気に話しかけてくる。私の友達に何をするダァー!小野田くんに手を出してみろよ?その時は異世界で鍛え抜かれた私の風弾が火を吹くことになるぜ?

私が後ろでガルルルゥと牙を向いて威嚇するが赤い男の子はケラケラと笑い秋葉原は初めてだから案内してやという。どうやらただのおのぼりさんらしい。害意はないことはわかったので取り敢えず敵意は引っ込める。

そのあとはその赤い男の子の強引さに小野田くんがひっぱられ秋葉原で一番大きなオモチャ屋さんに向かうことになった。弟への土産やねん!という赤い男の子の買い物に付き合い、お金が足りなくなった赤い男の子に1000円貸したせいで今度は小野田くんがラブヒメのCDを買えなくなった。もうこれカツアゲだろ?絞めてやろうかと拳を握りしめると小野田くんにどうか穏便に!と止められた。他でもない小野田くんの頼みだから仕方ない。命拾いしたな赤い豆粒!

その代わりといってはなんだが私が小野田くんに1000円貸してあげることにした。ラブヒメのCDが買えたことで小野田くんが本当に嬉しそうにありがとう!ミョウジさんのおかげで助かったよ!本当にありがとう!と神のごとく崇めてくる。そういうあなたは天使ですか?なんで現代にこんなピュアな人種が生き残っているんだろう?異世界で荒んだ私の心が癒されていきます。

その後赤い豆粒がわいは鳴子章吾や!と名乗ってくる。ん?鳴子?どっかで聞いたことある名前だな?と首を傾げていると小野田くんが僕は小野田坂道っていうんだ!よろしくね!と笑顔で名のり返した。へー、小野田くん下の名前は坂道っていうんだ。知らなかったわ、この世界弱虫ペダルだったんだ。

ここ、弱虫ペダルの世界だったのかよぉぉぉーー!!あれだろ?確か自転車回して勝負するスポーツ漫画だろ!?うわっ、小野田くんってバリバリの主人公じゃないか!ビジュアルと雰囲気と名前が完全モブだったからわからなかったわ。そういえば同学年の今泉っていう名前の男子がイケメンだってクラスの女子が騒いでいたわ。うん、完全に弱虫ペダルの世界です。小野田くんのほんわかオーラのせいで気付けなかったよ。小野田くんが妖精すぎたのがいけないのだ。

にしても私のキャラのエンカウント率高過ぎだろ。寒咲さんはヒロインだし鳴子はメインキャラクターだし小野田くんにいたっては主人公なのだぞ?なにか補正でもついているのですか?そのせいで今まで何度も危ない目にあってるから素直に喜べん。まあこの世界でなら嬉しいけど。え、なに?嬉しいのかって?もちろん嬉しいよ?小野田くんと友達になれることを望まない奴などいるわけない。だって小野田くんからはマイナスイオンが出てますもん。側にいるだけで幸せになれます。

そうか、ここは弱虫ペダルなのか。今まで我慢していた分思い切り叫ぼうか。ひゃっほぅぅぅぅーーー!!やったー!弱ペダだ!戦闘ないぞ!死亡フラグないぞ!青春と熱いロードレースしかない世界だぞ!もう二度と異世界トリップしないでください。私はこの世界に骨を埋めます。

そりゃあんだけ頑張って勉強したのだから元の世界に戻って制服に袖を通したいという気持ちもなくはないが、総北の制服だって可愛いしもうこっちに友達だって出来たし帰りたくない。気分は新学期そうそう転校したくないという感じです。バトルもスポーツでしかないのだから私は安全と安心のこの世界で生きていくよ。下手にトリップしてリアル鬼ごっことかさせられるのは嫌です。さて、そろそろ赤い豆粒に独占されている私の友人を取り戻すとしよう。いくら原作で仲がよくても先に出会ったのは私なんだからな!小野田くんを返しやがれ!

その後は鳴子とぎゃんぎゃん騒いだり原作通りタバコをポイ捨てしやがった奴とレースをしたりしながらその日は家に帰宅する。

そして自転車の楽しさに目覚めた小野田がキラキラした笑みを浮かべながら自転車競技部に入るのをみて、私も小野田くんを取られるものか!とロードレースを始めることになるのだった。



ー少女Aとロードレースの世界ー



(ふははははっ!どうだ小野田くん!私だって凄いだろ!)


(ええええっ!!?今どうやって走ったの!?すごい!ミョウジさんすごいよ!)


(はあぁぁあぁー!??なんでそんな走りで速いんショ!?というかいつ抜いたんだっショ!!?)



ーendー



おまけの設定

小野田くんが自転車!坂登るの楽しい!ってあんまりにもいうから自分も自転車競技部に入ることにした夢主。役職はマネージャーだが坂道の関心を買うためにロードバイクにも乗る(ロードバイクは親に頼み込んで買ってもらった)
夢主の自転車技能は凡人どころかへたっぴ。ロードレースに対する才能はからっきしだがふうふうの実の能力である程度の風を操れるからと体力だけはかなりあるから結構速い。つまりただのチート野郎。

フォームも技能もライン取りもめちゃくちゃなのに速い夢主が皆不思議で仕方ない。しかも能力を使うと気配が薄くなるから抜かれても気付かないことがしばしばある。ロードレースになるとどこにいるかわからなくなってそれでもってケタケタと楽しそうに急に現れるから『ストリートゴースト(道に現れる幽霊)』という名のアダ名がついたりするけどこのあだ名じゃなくてだいたい皆は『総北のお化けちゃん』というように呼ぶ。

ズルしている自覚があるから試合には基本的に出ない。マネージャーが本職だからロードバイクにもそんなには乗らない。だが、坂道が巻島さんのことを『巻島さんは世界で一番速くてカッコいいクライマーです!』って感じて目をキラキラさせ始めるとロードバイクを持ち出し巻島さんに勝負を仕掛ける。そして大人げないくらい能力を使う。しかし、能力を使えば使うほど影が薄くなり坂道にいいところを見せられないという残念っぷり。なんでこんなに目立たないんだろう。解せぬ

巻島さんのことをライバル視していて東堂さんにライバル視されている(気付かれないうちに相手を抜くという能力が似通っていたため関心を抱かれた)。小野田くんのことが大好き(not恋愛。心のオアシス的な感じで慕っている)。実は周りで青春的な出来事が起こったりしているのだが坂道に気をとられて全く気付けていない。


2

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ