少女A(その他)

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「それでは3試験の通過時間の早い人から順に下船していただきます。それでは一番の方どうぞ!」



そんなわけで一番の私がまず船を降りる。ゼヒル島に早く入れば入るほど敵に自分の位置を把握されずに済むし逆にターゲットの場所を把握できる。3次試験を一番に突破してやっとメリットが出てきた。まあでもヒソカと二人だけの世界で過ごさなければいけなかったことを考えるとそれほどまでの恩恵には思えないけど。もっと優遇してくれてもいいのよ?

ゼビル島に降りて取り敢えずダーっと走って船から私の姿が見えなくなる位置まで来るとさくっと風化する。半透明になりできる限り姿を消すと空の上の方から船を見下ろす。皆どうせ島ばかり見ていて上なんか見ないだろうしこの高さなら万が一見上げられてもバレないだろう。しばらくするとターゲットが入島したから後を追う。パッと見た感じ見えるところにはナンバープレートはない。ということは倒して持ち物を漁らないといけないということだ。めんどくさいな。どうしようかと思いながら後をつける。取り敢えず今は島に入ったばかりからか警戒心が強いのでただ追跡するにとどめる。夜に寝こみでも襲うとしよう。

が、一日中後をつけ夜になりあたりが真っ暗になっても奴は油断しなかった。抜き足差し足で忍び寄ろうとしても木の葉がかすれる音でも目を覚ましやがる。これりゃだめだ。明日起きてるときでいいからもう背後から不意打ちして討ち取ろう。今やらないのかって?私ももう眠いんだよ。そんなわけで初日はなんの成果もなく私は風化したまま木の上で眠りについた。

そして二日目、木の上なんかで寝たためバキバキになった身体を叱責し活動を始めたインディアンを追跡する。インディアンは朝食のためか川に近づき魚を取っていた。おお、チャンスだ。

確かゴンが獲物を仕留めるのに最適なのは相手が獲物を捕らえようとしてる時だという風に言ってました。これがまさしくそれに適した状況だよね?というわけでインディアンが魚を捕らえようと槍をふるった瞬間風弾を数発撃ち込む。風弾は風だしほとんど目に見えないから私の攻撃にまったく気づくことないインディアンは不意を突かれ吹っ飛んだ。そしてそのまま水辺に倒れる。

・・・倒した?倒したよね?起き上がってこないのは死んだふりとかじゃなくてガチで気絶してるんだよね?やりましたか?やりました!やったねナマエちゃん!ついに自分のターゲットを倒しましたよ!ふー。これで4次試験はもうクリアしたも同然です。あとは誰も手の届かない空の上でぼやぼやしながら残りの期間を過ごすとしますか。それにしてもモブとはいえ成人男性を倒してしまえるなんて私の人生どうしてこうなったんだろう。本当にどうしてこうなってしまったんだろう。

さてさてナンバープレートを回収するとしますかと木の上から降りた瞬間何かが視界の中から現れ消えていった。なんだろうと思ってよく見ると目の前の木に針が刺さっていた。わー、なんというデジャブ。私の真ん前にあるということはつまりこの針は私を通過してきたということだ。それが意味することは一つ、誰かが私を攻撃してきたということだ。いやもう誰かなんてわかってるよ。こんな特徴的な針の持ち主なんて一人しか心当たりないわ。私はギギギという効果音が付きそうなほどぎこちない動作で後ろを振り返った。なんとそこには針まみれの男、ギタラクルがいた。



「あれ?おかしいな。ちゃんと狙ったはずなのに」



ギタラクルは顔に似合わない透明感のある声でそういった。ああ、やっぱり貴方ですか。そうだと思いましたよそうだと思ったよわああああああっ!!ギタラクルが私を狙ったということは奴にターゲットが私だということに他ならないだろう。え、マジで?最強暗殺一家の長男様に私目を付けられたのですか?だれか嘘だといってください。ヒソカばかり注視してたけどギタラクルという暗殺者も十分危ないじゃないですかヤダー。え、ちょ、よりによってなんでここの原作変わっちゃったの?ギタラクルさん原作通りの獲物の番号引いといてよ。ふざけんななんであなたが私の番号引くんだよばーかぁー!

顔が引きつり口元がぴくぴくと痙攣する。落ち着け私。いくらむこうが殺人のプロといっても私は風人間だ。物理攻撃は効かないんだ。効かないよね?大丈夫だよね?やばい膝まで笑い始めた。



「ヒソカが攻撃の効かない殺しがいのある子がいるっていってたけど別に面白くはないな。ターゲットが死なないのは手間がかかるだけだよ」


「え、ヒソカが殺しがいがあると言ってただと?なんだと?めっちゃ死亡フラグ立ってますじゃん誰か助けて。あの戦闘狂に目をつけられて生き抜ける気がしない。色んな世界に飛ばされてきたけどここまで命が脅かされたことはないわ。ほんと勘弁してください」



ギタラクルの言葉に思わず頭を抱える。ヒソカに目を付けられたなんて本気で死ねる。なんでゴンさんとだけ絡んでくれないのですか?解せぬ。ゴンは強くなるよ!めっちゃ強くなるよ!それこそ髪の毛が天まで届きと肉体改造したのですか?と思えるほど強靭な身体を手に入れるほど強くなりますよ!ほら?私なんてゴンに比べたら虫けら同然だろ?私へのロックオンキャンセルしてください。

ギタラクルはハーとため息を吐きながらひゅっひゅっといくつかの針を放り投げてきた。ええええっ?!と思いながらも咄嗟に避けるがいくつかの針は身体を通過していった。なんだよ、攻撃効かないから諦めたんじゃないのかよ。痛くないとわかっていても凶器が身体の中通り抜けていくのはマジ怖いです。ギタラクルは不機嫌な顔をしていた。なんか理不尽だ。



「そういう念能力なのか。特質系なのか?この子自体は大したことない雑魚なのに能力がめんどくさいな。仕方ない、仕事の依頼でもないしどうしても殺さないというわけでもないからいいよ。適当に3人狩るか」


「は、はい」


「じゃあね」



そういうとギタラクルは森の中に消えていった。奴が見えなくなってから私はぺたんと地面に座り込む。

こ、怖かったあああああっ!!!死ぬかと思ったわ!ヒソカの次はギタラクルってどういうことだよ!なんで私ばかりこんな目に遭うんだよちくしょう!神様は私のこと嫌いなの?それとも私がこういう星の元に産まれてしまったの?本当にもう嫌だ。家に帰りたい。

私はインディアンからナンバープレートを剥ぎ取り泣きながら全力で空に向かって飛び島で一番高い木の上でふて寝した。

ごつごつした木の枝を背にして思う。ああ、なんの憂いもない平穏な世界でベッドに身体を埋めて眠りたいと。


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