少女A(その他)

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「ねえ、そんな遠くに行かないでもっとこっちにおいでよ。ボク、君とお話したいな♢」


「えっと、ああ、そうですね。じゃあ取り敢えず生命の尊さについて話し合いましょう。殺生、ダメ絶対!すいません私対人恐怖症なんです。半径1kmほど離れていただけないですか?」



そういいつつ壁を背にヒソカとできる限り距離をとる。どれだけ距離をとったところで安心なんかできない。もうおそらく世界が変わるまで安心できないだろう。それほどにヒソカという人間は危険なのだ。息をするように人を殺す。第3次試験を一番に突破するとこいつと二人きりになってしまうシチュエーションがくるということを認識できてなかったのは私の痛恨のミスだわ。どうしよう、マジで死ぬかも。

ハンター試験というのは基本的に自力救済を掲げている。なのでたとえヒソカが私を襲ったとしてもハンター協会は助けてくれないだろう。試験終わった後に試練がくるとは思ってなかったよ。というかそんなもん予想できるか!ちょっと運営さん、私の3次試験の合格取り消して下さい。もう一回トリックタワーの試験に臨むんで本気でここから出してください。ゴール地点より監獄内の方が安全に思えるとかどんな状況だ。もう誰でもいいからはやく他の受験生こいよ。あ、たんま。イルミさんは除きます。それは状況悪化するだけです。



「僕も結構頑張ったと思うんだけど君はさらに塔を抜けるのが早かったね♧どうやったんだい?君の能力かな?」


「いや、あの偶然最短ルートを行けただけです。私は全然すごくないです。おいしくもないし面白くもないです。あ、ちょ、こっちにこないで」



そういいながら距離を詰めてくるヒソカからさらに距離をとる。後ろは壁だからダッシュで横に移動する。本当にこっちこないでくれますか?取り敢えずトランプの射程距離には入らないようにしよう。私は風人間だし切れないとは思うが感情的に嫌だ。

ヒソカに言ったことは一応嘘ではない。偶然知ってた最短ルートである屋上からの飛び降りを選択しただけだ。誰もトリックタワーの内部を通ったとは言ってないもん。まあ今死地への最短ルートにもなってしまっているけど。人生時には回り道も必要だということか。身をもって学習しました。

ヒソカは追えば追うほど逃げる私を見てふと足を止めそして顎に手を当て考え込む。もしかして諦めてくれたのか?是非ともそうしてくれ!そのまま互いに端と端に寄り合って接触がないようにしましょう。もしかして助かった!?



「うーん、逃げられれば逃げられるほど追いたくなるんだけど」


「おい、マジかよ。え、でもだからといって逃げないと言う選択肢はないんだけどどうすればいいの?私に死ねと?すいませんハンター試験棄権します。ここから出してください」


「だけれど追いかけても君を捕まえられそうにないね。なら一旦距離を取ることにしよう♤」



そういうとヒソカはよいしょといってその場に腰を下ろした。え、私の追いかけるのやめてくれるの?だからといって一旦とかいってたしあんまり安心出来ないんだけど。とりあえず私も足を止めヒソカと距離を取ったまま向き合う。ヒソカは何をするつもりなのだ?




「どうせ暫くは誰もこないだろうしゲームでもしよう♧」


「え、ゲーム?どうせそれって私を的に仕立ててトランプを投げてくるというデスゲームですよね。わかります。勿論却下だぁ!わああんっ!なんでこんな殺人鬼と同じ空間にいるのだろう。早くここから出してくれー!」


「ボクまだ君に何もしてないのに凄く嫌われてるね。ただここにいても暇でしょ?トランプでもしようっていうお誘いさ♢」



そういってヒソカはニィっと笑みを浮かべる。どうしよう、イチミクロン足りとも信用できないんだけれど。ヒソカはご機嫌になりながらカードを切っている。そしてカードを配り始めた。え、私了承してないんだけど始まるの?強制的に始まるの?ヒソカはカードを配り終わると半分私に投げて寄越した。トランプの約半分が私の手元にある。



「じゃあ取り敢えずオーソドックスに7並べから始めようか?手札にある7を出してね♤」



そういってヒソカは自分の手札の中にあった7を並べていく。仕方ない。ヒソカの思惑がわからない以上相手を刺激したくにいのでゲームには付き合おう。しかし、このナマエちゃんがこんなゲームごときで注意力散漫になり油断するとは思わないでいただきたい。数々の修羅場を潜り抜けたナマエちゃんの実力見せてやる!ふふふ。あ、ダイアの7があった。私の番からだイエーイ!

そういうわけでまんまとヒソカの口車に乗せられ様々なゲームの相手をする。7並べに始まりババ抜きに大富豪そして現在ポーカーをしているわけなのだが全てボロ負けした。あれ?解せぬ



「く、だが貴様の快進撃もここまでだ!食らえ!我が渾身のフルハウス!」


「残念。ボクはロイヤルストレートフラッシュだよ」


「ぐわあああああ!また負けた!というかおかしいだろ!なんで3回連続ロイヤルストレートフラッシュなんてもんが出るんだよ!イカサマか?イカサマだな!ヒソカ貴様イカサマをしたな!」


せっかくフルハウスができたというにも関わらずヒソカのロイヤルストレートフラッシュにあっさり負けてしまった。というかおかしいだろこれ!ロイヤルストレートフラッシュとかそんな簡単にできたりしないだろ!もうこれ絶対にヒソカはイカサマしてるよ!だからもうあなたのことは信用できません。カードは私が配る!

というわけで新たにカードを配りなおしてもう一度ポーカーをする。ククク、私の手にはストレートが入ってるぜ。これは勝ったな

と思ったらまた負けた。ヒソカの手はまたしてもロイヤルストレートフラッシュだ。どうなってるの!???



「ええええっ!?なんで!?なんで!?配ったの私なのにどうやったの?え、ヒソカイカサマしてたよね?」


「したよ♡」


「ちょ、どうやったの?教えてください。私もそのテクニック知りたい。聞いてほかの奴らをカモにします」


「残念だけど君は使えないかな。これは薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)っていうボクの能力で様々なものを再現できるんだ♢」



そういってヒソカがくるくる手に持ってたトランプを回すと絵柄がどんどん変わっていった。あ、そうだわ。伸縮自在の愛(バンジーガム)の方が印象濃くて忘れてたけどそんな能力もあったのよね。うんそうだった。タネがわかればなんてことない。にしても腹の立つ能力だ。そのせいで私はゲームで負けっぱなしだったのだから。ちくしょう

ふー、でもすっきりした。それにしてもヒソカって案外いい奴?能力教えてくれたし危害加えられるわけでもないしまあ変態殺人狂なのは疑いようがないが私に被害がないのならただの奇人でいい。いやー、ヒソカが怖くないとこの世界の死亡フラグがひとつ減ってうれしい、と思った瞬間私の視界をひゅんと何かが飛んでいった。早すぎて見えなくてなんだろうと思い振り返ると壁にはトランプが刺さっていた。私の真後ろにトランプが刺さっていた。…え?

私の真後ろということはあのトランプは私を通過してあそこに刺さったということだ。だらだらと汗が流れる。だって私が風人間でなかったらあのトランプは私に刺さっていたということになる。そしてそんな恐ろしいことをしようとした元凶は私の前に座っている。私はゆっくりと振り返る。するとそこにはトランプを切りながらニコニコと機嫌よく笑うヒソカがいた。



「だから君の能力も知りたいな。ボクのトランプで殺すことのできない君の能力をね♡」



そういってにやりといったヒソカの顔は完全に放送禁止の顔だった。私はバッとヒソカと距離をとる。おい、誰だよヒソカがいい奴かもしれないとか言った奴。そんなわけないじゃんあの戦闘狂がまともなわけないだろ?私は汗をだらだらと流した。ああ、私はとんでもない奴に本当にとんでもない奴に目を付けられてしまったらしい。

それから次の合格者が出るまで緊張した時を過ごす。今私はどの世界より一番命が脅かされております。


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