short(OP)

□君に爆発!恋心
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どうやらルフィは私のことが好きらしい。いや、自意識過剰とかじゃなくてガチでそうなんだよ。だってあいつ私のそばにいないとなんか嫌な気分になる。一緒にいたいみたいなこといってきたんだぜ?これで恋じゃなければなんなの?私からルフィ専用のフェロモンでも漏れているということですか?もしそうならそれはそれで問題だろ。私なんか変な実でも食べてしまったのだろうか。

そのことに気づいた時私は悩んだ。相手はこの船の船長で強くてかっこよくて尊敬できる奴だが恋愛対象としてはピンとこない。ルフィは良くも悪くも純粋でそういう目では見れないのだ。もちろん好意は嬉しいが反応に困る、それが私のルフィの想いに対する本心だった。

どう対処すればいいか迷ったが幸いにしてルフィは自分の気持ちに気づけていない。ドキドキとかモヤモヤというような気持にはなるそうだがそれが何なのかはさっぱりわからないらしい。なのでちょっとズルい気もするがここは現状維持を選択することにする。だってこの狭い船の中で恋愛でごたごたするのってめんどくさいじゃないか。下手に振ったり振られたりして気まずくなると船の雰囲気悪くなりそうで嫌だしルフィには悪いがその気持ちは自覚しないでおいてもらおう。あいつそういうの鈍そうだし当分は大丈夫だ。うん、問題ない。

そんなわけでルフィの気持ちをスルーしながらいつも通りの日常を過ごしていく。だがあんまり放置し過ぎてなんかナマエのそばにいないとモヤモヤする。あ、これが恋ってやつなのか!みたいに自覚されても困るのでそれなりにルフィにも構うことにした。ナミに出された課題を片手に釣りしたり海賊ごっこしたりご飯食べたり昼寝したりとルフィの提案は基本受けてやった。ふふふ、これでルフィに恋心を悟られずに機嫌を取ることができるぜ。完璧だね。ナマエちゃんってば賢いと思ったらとある日の午後、女性リスペクト主義のサンジによってもたらされた絶品プリンを俺も食べたい!と駄々をこねるルフィにひとくち食べさせようと掬ってスプーンを差し出した時にナミが言ってきた。



「あんた達って付き合ってるの?」


「は?」


「おっと、あぶねえ!」



ナミから飛び出した予想外の言葉に動揺し思わずスプーンを落としてしまったが無事ルフィがお口でキャッチしてくれたらしい。ああ、ありがとうルフィ。おかげでプリンがダメにならなくて済んだよ。うん、で、え?なんで付き合っているとかいう発想が出てきたのですか?そういう方向にならないように色々頑張ってきたのにどういうことだよ。わけがわからん。



「え、いやつき合ってなんかないけどなんでそう思ったの?」


「なんでって、そりゃあんたらを見れば誰だってそう思うわよ」



そういってナミはちらりとルフィに視線を向ける。ルフィはこのプリンうめぇと言ってひとのプリンをバクバク食べていた。こら、ルフィ!それは私のプリンだぞ!他のものはともかく大好物であるプリンだけは譲らん!ほら、スプーンを返せ!

そしてブーブー文句をいうルフィからスプーンを取り返し半分以上減ったプリンを胃に納めていく。まったく油断も隙もありゃしない。そんなに食べたかったらサンジに頼んで作ってもらえよ。あいつも鬼じゃないんだからきちんと頼めば作ってくれるさ多分。ホントに食い意地張りすぎだろこいつ。

それでなんだっけ。ああ、付き合っているように見える態度をとっているって話だっけ。ルフィの好き好きオーラが大きすぎて周りにもわかっちゃったのかね。今もナマエのだから食いてぇんだよって頬を膨らませているもんなこいつ。そりゃ分かりやすいわ。にしても私の持っているプリンだろうが新しいプリンだろうが変わらないのに私のだから食べたいとは可愛い奴だ。特別にもうひとくちだけあげよう。

うん、ルフィの気持ちは端から見てもわかりやすい。これは気付かれても仕方ないわ。ナミもきっとルフィを見てそう思ったのだろう。



「うん、まあ確かにルフィからそういうオーラは出てるけど受けるつもりはないというか、答えるのが難しいというか、まあ付き合ってはいないんだよ。そういうことなんだよ」


「あんた何いってるのナマエ。私がいいたいのはルフィの態度じゃなくてあんた達の行動よ。ちょっと自分たちがしてたことについて振り返ってみなさい」



そうナミが呆れたようにいう。あれ?ルフィの隠しきれてない思いについてではないのか?私の行動を振り返ってみろ?えっと、何してたっけ?

魚釣りの時は一本の竿を二人で握っていて海賊ごっこの時はお姫さま抱っこで船内連れ回されて食事の時は必ず隣の席に座るようにしていてお昼寝するときは膝枕してあげていて、そして今あーんでプリンを食べさせてあげているわけか。どうみてもカップルのイチャコラですね。どうしてこうなったし。おかしい、ルフィな恋心自覚させないようにべたべたしてたら恋人がするような行動ばかりしてました。ナミがいってたのはこのことですね。これは勘違いしてしまいます。

今までの行動を思い返して思わず頭を抱える。ホント何をしてたんだろう私。取り敢えずまずナミの誤解は解いておこう。付き合っていると思われている状況はよろしくない。



「えっと、まあ行動はアレだったんだけど別に私とルフィは付き合っているわけではなくて、」


「なあなあ。さっきから付き合うとかなんとかいってるけどそれってなんなんだ?どっかいくのか?」


「あんた馬鹿ね。付き合うっていうのは恋人になるってことよ。好きな人と一緒にいるっていう約束みたいな感じね」



せっかく説明しようと思ったのにルフィに言葉を遮られる。おい、ルフィ!今大切な場面なんだよ頼むから黙っててくれ!もう、この残りのプリンあげるから大人しくしといてくれ。お口チャック!

だがルフィは好きな人、と呟くと考え込むように腕を組み、パッと満面の笑みを浮かべた。え、なんでそこで嬉しそうに笑うんですか?なんか予想外の方向に事が動いている気がする。ちょっ、まって



「そうか好きな奴とは付き合うんだ!なら俺ナマエのことが好きだぞ!ナマエ付き合うぞ!」


「別にいいんじゃない?むしろ今まで付き合ってなかったことのほうが驚きよ。もうくっついちゃいなさいよ」



満面の笑みでルフィが宣言する。うん、今その方向にいくのがわかってたけどなんてことになるんだ!付き合っていると誤解されたと思ったら今度はそれを切欠にルフィに恋心自覚されてしまったよ!しかもナミから援護射撃出てるし断りにくい。なんかもう私のやった行動が全部裏目に出てやがる。結局私がしたのって自分で自分の城の外堀埋めてただけだったのね。だめだもうこれは。逃げ道がありません。笑顔でのし掛かってくるルフィを撃退する術をもう私は持っていなかったのだ。


〜君に爆発!恋心〜


(ナマエと付き合うことになったぞ!)


(はぁ?元々そうだったんじゃなかったのかよ)


(今さら言われなくても知ってるよ。レディを泣かせるじゃねえぞ)


(え、お前ら付き合ってたんじゃなかったのかよ)


(ルフィとナマエはいつも仲良しだもんな!よかったな!)


(あらあら。貴方達まだそんな関係じゃなかったのかしら。知らなかったわ)


(船員全員に付き合っていると思われてたのかよ。なんてこった)



ーendー

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