short(OP)

□境界線上のラブストーリー
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私が5歳の時海賊王が処刑された。人々は喜びに満ち溢れ海軍の勝利を祝った。

だけど私の家は違った。私の両親はゴール・D・ロジャーの親友だったのだ。

やがて世界中でゴール・D・ロジャーの関係者が処刑されていき我が家も例外ではなかった。


『お父さーん!お母さーん!』


まだ子どもだった私は海軍に連れていかれる両親の腕にすがってわんわん泣いた。

両親は優しく抱き締めてくれたがそのまま海軍に連れていかれてしまった。

両親はそれから帰えってくることはなかった。処刑されたのだ。

母さんのお腹の中には弟なるはずの赤ん坊もいたがゴール・D・ロジャーの子どもの可能性があると共に殺された。

私は子どもだということとあまりにも父親に似ていたことから殺されることはなかったが私はひとりぼっちになった。

その日私は家族を失ったのだ。

その後私は母方の祖母の家に引き取られそして悪いのは海賊王だと聞かされた


『あの男がいたから私達の娘が、』


『だから関わるなっと言ったのに。私達の娘を返して!』


あまりにも悲痛な声で泣く祖父母に私は悪の根源は海賊王であると思い込むようになった。

海賊王ゴールド・ロジャーのせいで自分は幸せな家庭を失ったのだと

苛立ちと虚しさの捌け口を求め私は海軍に入隊した。

海賊王などとふざけたものを目指す悪の寝床を滅ぼす為に私は海賊を刈りまくった。

海賊を捕まえることに手段を選ばない残虐性から『冷虐のナマエ』と呼ばれるようになった。

他人にどう思われても構わなかった。私にとって海賊を刈ること以外に興味などなかった。

そんな時だった。あの男に会ったのは



『わー!またお前かよナマエ!』


『当たり前だエース!私の任務は海賊を殲滅することだ!今日こそ貴様の首をからせてもらう!』



東の海、私がのローグタウンに勤務していた時に奴は現れた。

海賊王の処刑された場所を見つめるを被った男を見て何故か私は思った。

この男だけは私が捕まえなければならないと。


その後その男が最近東の海を騒がせている『炎拳のエース』ということが分かり捕縛を試みるも逃してしまった。

エースを捕まえるのは私だと言い様のない使命感にかられ私はローグタウンから飛び出しエースを追ってグランドラインに入った。

私の後任にはスモーカーという男が入ったらしいがどうでも良かった。

私は『炎拳のエース』を捕まえることにだけに情熱を注いだ。

グランドラインに入ってからも私とエースの追いかけっこは続いた。

いくらエースを追い詰めてもいつも紙一重で逃げられた。

私が覇気を覚えた頃にはエースも悪魔の実の能力者になっており力は常に均衡していた。
エースの悪名はどんどん上がっていきまた私もエースを追う課程で捕まえた海賊のお陰でそれなりの地位を得ることとなった。

エースが白ひげ海賊団に入ってからは直接の小競り合いは減ったもののそれでも私は盲目的にエースを追い続けた。

自分でも何が私をそんなにも駆り立てるのか分からなかった。分からなかったがそれでもエースを捕まえるのは私だと思った。

だからエースが捕まったという知らせを聞いた時私は呆然とした。



『炎拳のエースが捕まったというのは本当ですか、センゴク元帥』


『ああ、本当だ。ついでに炎拳のエースは公開処刑する。奴は海賊王ゴールド・ロジャーの血を引くものだ。奴を殺すことには大きな意味がある』


『ゴールド・ロジャーの息子?』



その瞬間頭の中が真っ白になった。

エースはロジャーの息子だったのだ。私はロジャーのせいで両親を失いそしてエースのせいで弟を失ったのだ。

エースは私の家族の仇だった。

なのにエースが処刑されることを喜べない自分がいる。

指先まで神経が入っていないかのように酷く無気力で絶望とはこういうのかもしれないとそう思った。

エースは私が捕まったかった。それで?捕まえて殺したかったのか?

何も考えられなかった。そのままふらふら無意識に私は気付いたらインペルダウンに向かっていた。



「いい様だなエース」


「はは、ナマエじゃん。久しぶり」



檻越しにエースは軽快に笑った。いつも通りの笑みに私達の立場が変わらぬものではないかと錯覚してしまう。

追う者と追われる者、だけどもう違う。私達の鬼ごっこは終わったのだ。



「もうあんたに追われないと思うとちょっと残念だぜ。ナマエみたいないい女に追われることなんかもうないだろうからな」


「そう思うなら何故私以外に捕まったのだ!」



気付いたら私は叫んでいた。

ガシャンとエースの囚われている檻に拳を叩きつける。静寂に包まれたこのインペルダウンにはその音がよく響いた。エースは私の突然の暴挙に驚いていた。

拳がズキズキ痛んだがそんなことは気にならなかった。むしろその程度の痛みではこの遣りきれない思いを拭い去ることなど出来なかった。

結局そんな心理状態の私から出てきたのは血を吐くような恨み言だった。自分でももう何を言ってるのか分からなかった。



「私の両親はゴールド・ロジャーの親友だった為に殺された!」


「っ、」


「私の弟はロジャーの息子の疑惑が懸けられ生まれてくることすらできなかった!全部お前のせいだエース、お前のせいで!!」



吠えるように叫びながら檻の柵に掴みかかった。今この檻が空いたのなら私はエースを殺していたかもしれない。

だが鎖に繋がれたエースの表情を見て唖然とする。

エースは表情は絶望に染まっていた。目を見開き顔を蒼白にしている。ああ、なんで

なんで貴様がそんな顔をするんだ!

私を嘲笑しろよ!復讐する相手を捕まえることも出来ない哀れな女だと嘲えよ!

もしくは海賊に協力した血筋のくせに海軍になるなんて偽善者だと裏切り者だと罵れよ!


じゃなければ私は誰を恨めばいいのだ?!


エース!貴様を恨めなければ誰を恨めばいい!!

何故貴様はそんな悲壮な顔をするのだ!貴様は悪逆非道の海賊王の息子だろ?私を貶めろ。でないと

私は何のために戦っていたんだ、

ずるりとその場に膝をつく。手の甲からは血が滴り落ちポタリと床を赤く染めた。

エースは何も言わなかった。私も黙って俯いた。


ああ、なんでこんな気持ちになるのだろう。なんでこんなにも苦しいのだろう。こんな気持ちになるならもういっそ


出会わなければよかったッ!!



〜境界線上のラブストーリー〜


(最後は悲劇にしかならないのです)


〜end〜

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