short(OP)
□狩人の漂流
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村から依頼を受けてラギアクルスを狩りに行った。
依頼では撃退で良かったんだけど捕獲できるレベルに追い込めたからもう倒してしまおうと沖まで行ったのがマズかった。
『旦那さん!マズイにゃぁ!嵐が近づいてるニャ!』
「え?ギャアァァァー!!」
運悪く天候が荒れお供のアイルーと共に波に巻き込まれ海の中を漂う羽目になった。
幸い、泳ぎは得意だし装備に酸素無限スキル付いてて海中でも呼吸できるから溺れることはなかったが水流に随分流されてしまった。
3日3晩海を漂よい流石に体力的にもヤバいなと思ってるとモンスターに遭遇。泣きっ面に蜂とはまさにこのこと。ついてない
しかも見たことないよこのモンスター。ギルドさん仕事してください新種ですぜ
水中での戦闘は苦手だけどここで喰われるのはごめんである!と思って笛でホコボコに殴りかかったら即気絶しなすった。あれ?私KOスキルつけてないぞ?
どうやら新種のモンスターは弱かったようだ
ボコボコにしたせいかすっかり私に平伏しているモンスターの言うことをお供のアイルーに通訳してもらうとこのモンスターは"海王類"という種類のモンスターで特に名前はないらしい。
ならば新種か!といえばそうでもなくというかギルドやハンターという職種はこの辺りにはないらしい。これを聞いた時はたまげた。
ギルドがない世界だと?どんだけ流されたんだ私。
てかギルドに連絡取れないと帰りの船も手配してもらえない。オワタ
海王類くんもギルドのある場所はわからないらしいので取り敢えず人のいる場所まで送ってもらうことにする。どうでもいいけど海王類くんって言いにくいな。名前つけようか。ラッシーでいいや。ラッシーって呼ぼう
ラッシーの背に乗りながらのんびり海をわたる。
途中何度か他の海王類に襲われなどしたがだいたいどいつも3回くらい頭に笛を叩き込むと逃げていった。
根性ないな海王類。私の世界のモンスターなんて頭砕いて翼を割って尻尾を切っても向かってくるぞ?あいつらは根性ありすぎだと思う
幸い携帯食料はたくさんあるので海の旅を楽しんでいた。そんなある日のことだった。
喋る鳥と出会ったのは
『お前らなんで海王類の上にいるんだ?』
「うわっ!鳥が喋った!」
『鳥が喋ったニャー!』
『‥そっちだって猫が喋ってるだろ。で、何者なんだよい?』
喋る鳥はバサバサと羽をしまうと私達の前に降り立った。
青い綺麗な鳥だ。羽が煌めいて炎のように見える。
ギルドにつれていったら間違いなく希少種に認定されるだろう。
鳥であるが人語を操るところからすっかりその鳥に心を開いてしまい私は自分の身の上話をしてしまった。
「実はラギアクルスっていうモンスターを追い掛けてたらうっかり嵐に巻き込まれて漂流しちゃったんだよ」
『そうだにゃ!後一歩というところまで追い詰めたんだけど逃げられたんだにゃ!』
『ラギアクルス?そんな海王類聞いたことねえよい。それよりその格好、お前ら海軍なのか?』
「海軍?なにそれ?私達はハンターだよ?」
鳥に服装について指摘され首を捻る。私が着てるのはセイラー装備だ。一見ただの制服に見えるがこれも立派な防具だ。
いや、だってゴツい鎧とか着たくなかったんだよ。可愛くないし。
ハンター仲間には散々ハンターっぽくないと言われたがこれでも上位の装備だからな!バカにすんな!
『ハンター?賞金稼ぎのことか?』
「いや、モンスターを狩る職業のこと。ここにはいないの?ギルドって知らない?」
そう鳥に聞けばやはり知らないと答えられる。ヤバいな本格的にここどこだよ。
その後鳥にここがどういう世界か聞けば海が大半を占めていて主に治安を取り締まってるのが海軍という組織らしい。そして私の今の格好が海軍の制服に似ているらしい。へー
少し前海賊王が財宝をある場所に隠したと死に際に残したことから海賊が急激に増え現在海の治安はよろしくないんだって。マジか。もう1週間くらい海をさ迷ってるけどまだ海賊には遭遇してないや。
『ふーん、1週間海をさ迷って海賊に遭遇しなかったのはラッキーだったな』
「まあ幸運スキルついてるからね」
『?』
セイラー装備の利点のスキルに幸運がある。まあ呼んで時のごとく運が良くなるスキルだ。貰えるアイテムが多くなったりといいスキルなのだが20匹くらいレイア狩っても玉出なかったから私のスキル壊れてるのかと思ってたよ。あの時は泣いた。でもまあなんだちゃんと発動してるじゃん!良かった良かった。が、幸運スキルついてる割にもう1週間も海を漂ってるのはなんでだ。あれ?
「この服着てると運がよくなったり海の中に入っても呼吸が出来たりするんだよ。それをスキルっていうの」
『へー、面白いな』
装備の話をすると鳥はうんうんと頷いた。なんかこの鳥って仕草が人間染みてるな。この世界の鳥はみんなこうなのか?
『お前らこれからどうするつもりだ?』
「どうするって?」
『行くあてとかあるのか?』
『ないニャー!でもラッシーが人のいる所まで連れていってるニャ!』
『ラッシー?この海王類のことか。海王類と会話も出来るのか。面白いな』
そういって鳥はニヤリと笑う。鳥がニタニタ笑う姿って初めて見たよ。なんか気色わるいな
「行くとこないなら俺の船に来ないか?歓迎するぜ」
「え、」
『鳥が人間になったニャー!』
突然目の前にいた鳥が燃え上がったと思ったら炎の中からおっさんがでてきた。どういうこと?鳥どこいったよ?まさかあの鳥がおっさんだったのか?なにそれ怖い
「え?え?あの鳥おっさんだったの!?」
「おっさん言うなよい。俺はマルコ。その様子だと悪魔の実も知らないみたいだな。この世界には悪魔の実っていう実があって食べると能力者になれる。俺はトリトリの実を食べたから鳥になれるんだよい」
『凄いにゃー!鳥ににゃれる木の実があるのにゃ!』
「ただし代償として海に嫌われるけどな」
そういうとニヤリと笑うマルコ。それはあの鳥と全く同じ笑みだった。
マジか。鳥になれる実があるなんて不思議な世界だな。でも海に嫌われるのか、それは嫌だ。狩りが出来なくなる。
「で、どうする?」
「ん?何が?」
「俺の船くるかって話」
「ああ、その話か」
うーんと頭を抱えて考えてみる。確かにこの世界のこともそんなに知らないのにお供と二人で生きていくなんて怖いし、だからと行ってその日あったおっさんを信じてついていくのも不安っちゃ不安だ。
うんうん唸ってると服の袖をぐいぐい引かれる。ん?と思って見てみるとアイルーが円らなおめめでこちらを見上げてきた。
『旦那さん、この人信用できそうだしついてっても大丈夫と思うにゃ』
「そうかな?」
『そうだにゃ!それにもし旦那さんに何かあったら僕が旦那さんを守るにゃ!だから大丈夫にゃ!』
なにこの子かわいい。結婚しよ
思わずぎゅーとアイルーを抱き締める。おヒゲが擽ったかったがもふもふでした。もう私は一生この子を手放せないわ
「じゃあ俺の船に来るでいいか?」
「うん!よろしくお願いしますマルコ!」
『よろしくニャー!』
改めて私は握手を交わし自己紹介した。だけど
「私はミョウジナマエ。ハンターだ」
『僕はアイルー!旦那さんのお供だにゃ!』
「俺はマルコ。白ひげ海賊団一番隊隊長だ。よろしくよい」
え、海賊?と動揺する私の手をマルコは更にしっかり握った。ちょ、放せゴラ
「よろしくなナマエ」
がっちり私の手を握るマルコに私はひきつった笑みを返す。
このタイミングでそれは狡いと思います
〜狩人の漂流〜
(海賊とか聞いてない)
(『旦那さんを放すにゃ!』)
(俺に気に入られた時点で諦めろよい)
〜end〜