series(JOJO)

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最近困ったことがある。私に困ったことがあるといえば当然承太郎に関することで今回ももちろん承太郎のことなのだけれど困っていることがある。

それは何かというと承太郎が長電話してくることだ。なんでいきなり電話かけてくるようになったのかもわからんが長電話されるのは本気で困る。まず時間が拘束されることが嫌だし次に電話に出ても無言の時間帯が長いのが嫌である。普段一緒にいてもそんなに話さないのにわざわざ電話までかけてくるなよ。電話片手に無言でいるとか何かの苦行ですか?相変わらず承太郎の考えることはわからない。

お前にはただでさえ振り回されているのに家にいるときまでお前に付き合うとか嫌なんだけど?だいたいお前と電話するとゲームができないんだよ。私魔王倒すのに忙しいから携帯にかけてこないで下さい。というような苦情を承太郎に申し付けると承太郎はわかったとあっさり引き下がった。素直にいうこと聞くとは珍しいなと思ったがわかったならば別にいうことはない。早期解決できてよかったなと思ったがそうは問屋がおろさないのが承太郎だ。確かに承太郎は長電話することはやめた。しかしその代わり小まめに電話するようになった。よう、今日の夕食はハンバーグだったぜとか今風呂入ったぜとか心底どうでもいいことを言うためだけに電話をかけてくる。無言長電話もめんどくさかったがこれはこれでイラつく。私はお前の日記帳か何かかよ。そういうのはツイッターで呟けよ。ゲームやってるときにいきなり通話画面が出るのはめっちゃストレスです。

承太郎の電話テロのせいで今週は私の勇者のレベルが3つしか上がらなかった。先週は10くらい上がったのにこれはひどい。腹が立ったので問答無用で承太郎の番号を着信拒否する。口で言ってもわからないやつには実力行使するしかない。というわけで承太郎からの電話をシャットアウトすることができ快適なプライベートを送れるようになったが電話が繋がらないのをそのままにしている承太郎ではなかった。3日くらいは何も言わなかったが4日目には明らかに不機嫌そうな面で承太郎がその話題を口にした。どうやらおこなようである。



「てめえナマエどういうことだ。なんで電話が繋がらねえんだよ」



ムスッとした顔でそういう承太郎。繋がったところで話題もない電話がそんなに必要なのか?取り敢えず承太郎の話を聞きながらノートを見てカリカリ手を動かす。ゲームのやりすぎで宿題するの忘れてました。宿題の出た授業は2限目だ。よし、内職すれば間に合うぞ。



「1,2日なら寝ちまったり携帯の電池が切れてるってこともあるが3日続けて偶然ってことはないだろ。てめえ何をしてる」


「そこまでわかってるなら察しろよ」



そういいながら視線はノートに向けたままだ。この問題難しいな。いつもなら承太郎に聞くのだがこの雰囲気でそんなこと言えるほど私は空気の読めない人間ではないので自力でがんばる。ほら承太郎、私だってこうやって雰囲気感じ取ってるんだからお前もわかれよ。私はお前と電話するのがめんどくさくて着信拒否にしたんだよ。お前電話にかける時間多すぎだ。ちょっと控えろ。



「察しろって何をだよ」


「え、わかんない?私何度もいったじゃん」


「知るか。一体お前は誰と電話してるんだ。なんでいつも通話中なんだよ」



そう威圧的にいう承太郎にはい?と首を傾げる。通話中?何言ってるんだこいつ。お前と家族しか入ってないこの電話帳で誰と喋ろというんだよ。自慢じゃないが私はぼっちだぞ。本当に自慢にならないが。

そこで承太郎が着信拒否に気が付かず私が誰か話してるなら電話が繋がらないのだと勘違いしてるのだと気付く。こいつ想像力豊かすぎるだろ。なんでそういう発想になるんだよ。普通の人間は始終電話なんかしないよ電話症候群のお前と一緒にするな。というかなんで着信拒否という思考がでてこないの?自分が着信拒否されるとか思わないの?どんだけ自信家なのお前。



「いやそんな相手いないよ。私に電話できる相手がいると思ってるのか?なんでわかんないんだお前」


「相手を庇ってるのか?そんなに大事な奴なのかよ」


「だからなんでそういう思考になるんだよ。お前みたいに粘着質に私に電話かけてくる奴なんて他にはいないから。そんなに不満なら私の携帯見ていいよ。ほら、好きにしろよ」



そういってロックを解除した携帯を承太郎に渡す。なんで浮気を晴らす恋人のようなことしないといけないんだと思いつつ承太郎のしつこさは先着100名様に食パン無料進呈というパン屋に並ぶ主婦並のガッツなので表立って逆らわないことにする。無駄に疲弊するだけです。

承太郎は私の携帯を受け取り眉を寄せる。どうした中身確認しろよ



「本当に好きにしていいんだな」


「ああ、いいよ」



そういいながら宿題を進めていく。まあ確認したら着信拒否に気付いて解除されちゃうのだろうけどいつまでも拒否したままにはできないししょうがない。これで私があまにも多い電話には着信拒否ということをわかってくれればいいのだ。解除するのは許してやる。あー、この問題もわからないや。まあ誤解が解ければ承太郎の機嫌がよくなるだろうしそしたら解き方教えてもらおうと思って承太郎を見ると奴はまだ難しい顔で私の携帯を睨んでいた。なんだよさっさと確認しろよ。なに?私の待ち受けが気にくわないの?それは私の好きなゲームの勇者様です。かっこいいだろう。レベル99まで上げたら魔王倒しにいくんだ。因みに魔王の名前はQ太郎です。このゲームのいいところの1つはキャラクターの名前を自分で設定できるところだ。Q太郎を討ち滅ぼせる日が楽しみで仕方ない。

私の携帯の待ち受けがQ太郎じゃないのが気にくわないのかなと思って見てると承太郎は私を携帯を握りしめ曲げてはいけない方に山折にしオラッと粉砕した。はあぁぁぁぁぁ!!!???



「ええええぇーー?!!ちょ、承太郎なんてことするだよ!何で私の携帯壊したの!?嘘だろなにこの残骸。え、完全に死んでるんだけど!!???」


「お前が好きにしていいっていったんだろが」


「いやいや!常識的に考えてよ!着信拒否しただけで携帯壊されるってことに思い至れるか普通!?通話の相手確認されて着信拒否解除するくらいじゃないのか!?まあなんか待ち受け気に食わなさそうに見てたから変えられるかもしれないくらいは覚悟してたけど携帯壊される覚悟まではできてないわ!」



承太郎から携帯の残骸を奪い返しそう叫ぶ。あ、だめだこの携帯。上下で分離しているよ。完全にご臨終です。これはひどい。

上下で綺麗に割れてるから電話帳等のデータはSDカード取り出したら生きてると思うのだがそれより問題はゲームのデータが死んだだろうということだ。

あのゲームは本体に内蔵されてるタイプのゲームなので本体が死ねば一緒にお陀仏します。え、嘘だろ?私の勇者様が死んだということですか?ふざけんな私の努力と睡眠時間返せよ!うわああああ!もうすぐ魔王倒せると思ったのにまさか本体が先にやられるとは思わなかったよ!こんなの予想できるか!なに?Q太郎はどうやっても倒せないようにできてるの?現実だけでなくてゲームの世界でも無敵になるなよお前。というか携帯なくなったんだけどどうすればいい?



「承太郎バカ!アホ!タコ!私のゲームのデータ返しやがれ!それとどうするんだよ私の携帯なくなったじゃんか!まあ全然有効活用できてなかったけどそれでもあるのとないのでは大違いなんだよ馬鹿野郎!」


「ああ、そうだな。携帯ねえとナマエと電話できねえし放課後買いにいくぞ」


「そうか、放課後買いにいくのか。ん?え、買いにいくの? 」



承太郎の言葉にぎょっとする。そりゃ私の携帯壊したのこいつだし弁償すべきだとは思うけど対応迅速ですね。行動力ありすぎです。そのありすぎる行動力に私は携帯を壊されたのだが。

承太郎は私の問いかけにはっきり頷く。どうやら携帯買いにいくのは決定事項のようだ。でもそれだけで私の携帯壊したのを許すと思ったら大間違いだからな!なんと言おうか私の勇者は死んでしまったんだからな!そんなんじゃ許さんぞ!ふん!さて、今の最新機種はなんだろう。カメラの性能が高い奴がいいです。

ちょっとだけ機嫌は回復したがまだまだ承太郎の罪は重い。取り敢えず承太郎、この問題わからないから教えてくれ。お前のその高い頭脳は今こそ使われるべきだろ。



「取り敢えず携帯の問題については放課後買いにいくことで妥協してやる。だけどお前の横暴にいつまでも付き合うと思うなよ!携帯の件まだ許してないからな!それで承太郎さん、この問題どう解けばいいんですか?よくわからないんですけど?」


「ああ、この問題はこの数値から先に求めていくんだぜ。この公式を使えば解ける」


「なるほど。そうするのか」


「携帯は同じメーカーにしよう。ついでに通話プランも見直さねえとな。今のままだと無駄に携帯会社に金食われる。やれやれだぜ」



やれやれと言いながら承太郎はどこか満足気だ。問題を解く手を止めて承太郎を見上げる。お前まだ懲りてないのかよ。まだ電話してくるつもりなのかよ。いや懲りたも何もこいつ私が着信拒否したこと気づいてなかったけ?ということはこれからも承太郎から電話がくるということか。

そのことに気付いてげんなりする。だけれどもそれに付き合わないと携帯壊されるということもわかったし出ないわけにはいかない。なんか結局承太郎にいいような結果になってるぞ。理不尽だ。

放課後、承太郎が待ち受けになった携帯をもらいこの世は承太郎を中心に廻ってるのだと実感したのだった。


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