series(ラディカル)

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「ガハハハ!久しぶりだなナマエ!元気にしておったか!」


「あ、こんにちはガープ中将!めっちゃ元気ですよ!ご飯はおいしいですし訓練は大変だけど友達はたくさん出来てすごく楽しいです!」


「そりゃよかったわい!よう頑張った!」




そういってガープはわしゃわしゃとナマエの頭を撫で回した。ナマエの方も体格差のせいで少しよろけたがガープに褒められて嬉しそうだ。

ガープがこの少年とも思しき青年に出会ったのは自分に馴染みの深いフーシャ村を訪れた時だった。

その時はたまたまタチの悪い海賊がイーストブルーに紛れ込みフーシャを襲ったと連絡を受け急いで向かうとそこでは既に戦いは終わっていた。1人の青年によって海賊達は倒されたのだ。

その青年の名前はナマエと言った。ナマエは見た目も実力もひょろっこい青年でガープは何故この青年が海賊達を倒せたのか不思議だった。理由は2つあった。

青年は華奢な見た目と反してそれなりに武術を体得しており洗練された技によって相手の攻撃を受け流す術を所持していた。これが1つ目だ。

そして2つ目、これが驚くべきことにこの青年にはあらゆる力が通じなかった。悪魔の実の能力、そして覇気といった戦うことに必須の能力がこの青年には効かなかった。

この時村を襲った海賊はロギア系の悪魔の実の能力者でその力に頼りすぎていたために悪魔の実の効かないナマエに返り討ちにあったのだ。

ガープはナマエにその力は生まれもってある力かと問えばナマエはわからないと答えた。

それはいつ自分がその力に目覚めたのかわからないと言う意味ではなくナマエには記憶がなかったからだ。ナマエは遭難しこの村に流れ着いた。その時にはもうすでに記憶がなかったという。恐らく遭難した時に何らかの衝撃を受けて記憶を失ったのだろう。

ガープはナマエについて考えた。記憶こそないがナマエはかなりの好青年だ。海賊が来る前までは村に溶け込み時折現れるならず者の相手をしたり老人に親切にしたりと良い噂しか聞かない。

まあ細かいことは気にせんでええか。ガープはナマエを気に入ったのだ。能力が効かないという素晴らしい性質を持ちさらに底抜けに明るくいつもニコニコと笑顔なこの男を気に入ったのだ。

ガープはナマエを海軍に連れて帰り強制的に軍に入隊させた。ナマエも嫌がらなかった。それどころか自分に合ってる気がすると積極的に軍に馴染もうとした。そんなひた向きなナマエがガープは可愛くない筈がない。自分の息子は可愛げのない奴になってしまったが孫はナマエのような素直で明るい子に育てよう。ガープはそう思った。




「そういえばガープ中将俺に何か用ですか?こんな下っぱの軍事施設にくるなんて俺に用事があるってことですよね?」


「おお、そうじゃ。ナマエお前わしの軍艦に乗らんか?」


「ガープ中将の軍艦にですか?」




ナマエの言葉にガープは本来の目的を思い出した。それでさっそく自分の軍艦に誘うとナマエはきょとんとした表情で首を傾げる。ガープは海軍でも特に活躍している精鋭の中の精鋭の部隊だ。そんなところに常識的に考えればひよっこのナマエが乗れるはずがない。だからナマエは不思議に思って小首を傾げているのだ。

だがガープはそんな些細なことを気にする男ではない。ガハハハハと笑うと大きく頷いた。



「ああそうだ!とある大物海賊を捕らえてやろうと思ってな!ナマエついてこい!」
















「ガープ中将の軍艦に乗ることになった?なんで?ナマエあの人と知り合いだったの?」


「うん。ガープ中将は俺を海軍に入隊させてくれた人なんだ」


「ああ、そうなの。ナマエは相変わらずとんでもない人達と知り合いなのね」



訓練が終わりいつも通りナマエと夕食を取っているとナマエがガープ中将の軍艦に乗らないかと誘われたというのでクザンは驚きで目を丸くする。

ガープ中将といえばあの拳であらゆるものを砕く恐ろしい人で、大将への昇格の話が何度も出てるが中将の方が自由が効くという理由で昇進を断ってる海軍きっての実力者の1人だ。そんな規格外の人間と知り合いとは相変わらずナマエの交遊関係はおかしい。




「ふーん、そう。まあ良かったじゃない」


「ああ。それで俺が乗る渡航で早速海賊討伐に行くんだって」


「へー、どこの海賊捕まえに行くの?」


「ロジャー海賊団」


「ブッ!」



クザンはナマエの言葉を聞いて飲みかけの水を吹き出した。ナマエの汚いなーという苦情が聞こえてくるがそれどころではない。ゲホゲホと咳き込む。寄りによってその海賊なの?

ロジャー海賊団は数ある海賊団の中でもいつも世間を賑わせており知名度が高くそして強い。海軍本部で最も危険視されている海賊団だ。

そんなロジャー海賊団をガープ中将が追っている話は有名だ。ガープ中将の軍艦に乗ると言う時点でロジャー海賊団を追うということは当然予想されるべきことだったかもしれないが等級も実力も下の下であるナマエが乗る船にそんなことは流石にないと思っていたのだが考えが甘かった。ガープ中将はそんな細かいことを考える男ではなかった。



「ちょっと、それ本当に大丈夫なの?あのロジャー海賊団でしょ?間違いなく今最強の海賊団だよ?」


「うーん、そうだけどせっかくのガープ中将の誘いだしこんな経験めったにできないだろうし頑張ってみるよ。それに案外活躍できてロジャーの首を俺が取って一気に将校までなっちゃうかもよ?ふふふ、そしたらクザンくんに苺パフェでもおごってやろう」



そういってナマエは調子の良いことをいうががクザンの不安は拭えない。ガープ中将はナマエを自分の船に誘うくらい気に入っているのだからそう簡単にナマエを見捨てたりはしないだろうがそれでも戦場では何が起こるかわからない。只でさえ相手は最強の海賊団だ。最悪の状況は考えるべきだ。

今のクザンは交遊関係も広く友人も多くいる。それでもナマエは特別だった。彼を失えなかった。

クザンは少し思案した後口を開く。ならこうするでしょ。



「ナマエ俺をガープ中将に紹介してくれない?」


「いいけどなんで?」


「俺もその軍航に乗るよ」




夕食を終え食後の苺パフェ(本日はアイスのトッピング付き)を食べながらナマエが聞いてくる。クリームで口元を汚すナマエにハンカチを押し付けるのはクザンのいつもの日課だ。こういうことが出来なくなるのは堪らなく寂しい。だからクザンもガープ中将の軍艦に乗ろう。そして万が一の時に自分の目の届くところにいて欲しい。

そういうとナマエはニヤリと笑みを浮かべさらにクザンに向けてビシリと指を向ける。カッコつけようとしたのはわかるが口元のクリームで全て台無しだ。



「俺を先輩と呼ぶのを警戒したなクザンくん!ふふふ、いいだろう。どちらが手柄を多く立てられるか競争しようじゃないか! 」


「はいはい人を指差さないの。そうね、勝負しようか。負けた方が相手のいうこと1つ聞くとかどう?」


「その勝負乗った!」



そういうとナマエはニコニコと機嫌よくバフェにかぶりつく。どんなお願い聞いてもらおうかなとナマエは呟くがナマエの願い事なんて簡単に想像つく。パフェなんていくらでもおごってあげるから死なないでよ。死なせないから。

そうはいってもガープ中将に船に乗せて貰えなかったら全ておじゃんだ。石にかじりついても着いていくくらいの心持ちでガープ中将を紹介してもらったクザンだがあっさりと許可が出て毒気を抜かれる。

こうしてガープ中将のもとクザンとナマエはロジャー海賊団の殲滅作戦への参加が決まった。


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