成り代わり(ブック)
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ああ、戦いが始まったな〜と思いながら海が敵船で染まっていくのをぼんやりと見る。
結末の決まった戦いに臨む彼らはどのような気持ちなのだろうか。
まあそんなことはわたしにはわからない。だって私は勝者側の人間なのだから。
鯨の形を催した船に堂々と佇んでいる白ひげを見ると遊び心がふつふつと沸いてくる。あの人もこんな気持ちでちょっかいを仕掛けにいったのだろうか?
月歩で空を駆けてモビーディックの上空に立つ。手で円を作り白ひげに狙いを定めた。
『八尺瓊勾玉』
「おいおい、眩しいじゃねえか、」
海軍大将の必殺技を眩しいの一言で片付けるなんて白ひげ大物すぎだよ。わたしも白ひげに比べたら子ども扱いか。ん〜、ちょっと悔しいかも。
その後飛んできた青い鳥に私の攻撃は全て防がれた。ああ、あれが不死鳥か〜。実物は初めて見たよ〜
「ん〜、これが効かないのか〜」
「きくよい」
そんな自信たっぷりな表情で言われたって説得力ないよマルコ。それにしても不死鳥っていい能力だよね。
ロギアだって覇気使われたら怪我するけとマルコの能力は怪我を治して再生すんのだもの。ひょっとしたら最強の能力かもね。
その後マルコは不死鳥になりわたしに攻撃を仕掛ける。
わたしの前で身を翻し上段から蹴りを落としてきた。
「あーあ、効くな」
「嘘つけ」
それを腕で受け止めてそう呟けば嘘たと否定される。
嘘じゃないよ。もうおばあちゃんなわたしにこんな強烈な蹴り喰らわせといてひどいな〜。お年寄りには優しくしてよ。
そしてマルコと空中戦が始まった。こっちの攻撃は全然効かないのにマルコの攻撃は痛いしわりに合わない戦いだ。ムカつくな〜
わたしは自分の思い通りにならないことは大嫌いだ。
だから不死鳥に意地悪したくなった。
「火拳のエースは助からないのにご苦労なこったね〜」
「エースは助けてみせる!俺達の弟は必ず連れ戻す」
本気でそう思っているのかマルコの目は真摯だ。それが結末を知るわたしには滑稽に感じる。
言うだけなら誰でもできるさ。そして出来ない君は後で泣いちゃうんだよ?
「火拳は死んじゃうよ?」
「死なせねえ!絶対助けてみせる!!」
「だから死んじゃうんだって。弟を庇ってね」
一緒ピクリと反応したマルコの隙をついて光速の蹴りを喰らわす。だけどそれも青い炎を貫通してしまった。
マルコってどうやったら倒せるのだろ〜?これでダメージも通ってなかったら泣いちゃうよ
「弟?でたらめ言うなよい!エースの弟はここにはいねぇ!」
「それが来るんだよね〜。インペンダウンからわざわざ兄を助けに今からここに来るんだよ」
そういうとマルコは眉を寄せ怪訝な顔をするだけだった。
ん〜、やっぱりマルコはルフィのこと知らないからピンとこないか。なら違う話題にしようか。
口元が吊りあがる。これをいったらマルコどんな顔をするんだろ?
今さらだけどわたしってほんと性格悪いな。まあそんなことは"私"だったころから知ってたけど
「エースが死んだ後は今度は白ひげが死ぬんだよ」
そういった瞬間マルコの表情はあからさまに変化した。
怒りを全面に押し出し今にも飛びかかって来そうな表情だった。
敬愛する父親が死ぬと言われたのだ、それが当然の反応だろう。
予想通りの反応にわたしは思わずニヤリと笑う。
「あれはサカズキの勝利っていうのかな〜。いや〜、サカズキがあんな戦略家だったなんてわたしも知らなかったよ」
「黙れ。オヤジは死なせない」
「ん〜、でも違うな。確かにサカズキは凄かったけどトドメを指したのはサカズキではないもんな〜」
これ以上ないくらい下卑た表情でわたしは笑う。愉しくて仕方ない。
ああ、可哀想に。
「エドワード・ニューゲートはティーチに殺されるんだもの」
瞬間身体が吹き飛ぶほどの衝撃に襲われた。身体を支えられず地面に叩き付けられ瓦礫に埋もれた。
なんとかそこから這い上がって空を見上げると殺意と怒りをこちらに向け睨めつけてくる不死鳥がいた。
最強だと信じるオヤジがよりにもよって裏切り者のティーチに殺されると言われたのだ。白ひげへの侮辱以外の何物でもない。マルコの怒りは最もだ。
にしても凄い一撃だった。ああ、きいたよ。まったく老体にひどいな〜
不死鳥はモビーの方へと飛んでいった。大好きなオヤジの元へ戻ったのだろう。
喋り過ぎたかもしれない。わたしはつくづく重要な役職に向いてないな。こんなお喋りだと無意識に機密とか漏らしてそうで怖いよ。仕事とプライベートは分ける主義だから大丈夫だと思うけど。
さて、白ひげが負けてしまうこともその原因も喋っちゃったけど大丈夫かな?あまり原作が変わるのはよろしくないんだよね。この優越感がなくなるのはやだな〜
まあ大丈夫だよね。だってマルコはエースが危ない時も白ひげが死ぬときも無力だもの。
チャラとポケット手を忍ばせそこにあるべきものを確認する。そこに確かにある重さにほっとしてそしてニヤリと笑う。
どんな再生力を持とうが所詮は悪魔の実の能力者。勝てないものには勝てないのだ。
ポケットのなかに収められてる海楼石をするりと撫でわたしはこの先の未来を夢想する。
己れの無力を嘆き責めそして絶望すればいい。君に用意されている未来はそういうものだ。
不死鳥マルコのことは割りと好きだったけどだからといって何かしらするつもりはない。
だって所詮わたしたちは盤上の駒に過ぎない。決められた運命の上をくるくる踊るだけだ。
それを知らない哀れな君を心から祝福するよ。
閲覧者より、愛を込めて
〜閲覧者からの祝辞〜
(そして赤髪の叫びとともに終演した)
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