成り代わり(ブック)
□自分の産まれた意味を知ってました
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自分がポートガス・ルージュという名でこの世界に生まれ落ちた時私は自分の役割を悟った。
私のすべきことはこの世界に1人の男をもたらすことなのだと。
やがて島にやってきた世界的犯罪者に愛された時私は物語の流れを再認識した。
育まれた命を愛しく思う。この子は私が守らなければならないのだ。
あの人が処刑されてこの子を探しに海軍が島に押し寄せてきた時も私は必死に守った。
方法は知っていた。だから私は命を掛けてお腹の子供を守り通した。
20ヶ月、私は子供を胎内に宿し続けた。
この子の名前は決めていた。女の子ならアン、男の子ならエースだと。
産まれた子供はやはり男の子でソバカスだらけの顔は今の私の顔とそっくりで抱いたときあまりの嬉しさに涙が出た。
正直ロジャーのことを愛していたかは自分でもわからない。これが自分の生まれた意味だと思ってその役を受け入れた。
だけど今思うとあの勇敢でそれでいて子供っぽいあの人のことをなんだかんだ言って愛していた気がする。
この腕の子供が愛しいのはエースだからだけではない気がした。
自分の身体が衰弱しているのはわかった。
20ヶ月もの間胎内に赤ん坊を宿し続けるなど常人が出来ることを越えていた。
原作でもルージュはその命と引き換えにエースを産み落とした。だけど私は死ねなかった。
今から20年後エースの命は経たれてしまう。それを知っているのは私だけで救えるのも私しかいない。
だから今死ぬわけにはいかなかった。たった一人の私の大切な息子を守らなければならなかった。
私の願いが通じたのか私は生き残った。幼いエースを抱きながら私は決意する。
この世界のルールを破ることになってもエースを守り抜くと
「エース、またマルコと喧嘩したの?いい加減そろそろやんちゃは卒業しなさいよ。今の貴方は海賊船の船長じゃなくて白ひげ海賊団の一員なのよ?」
「ごめん母さん。だけどマルコが、」
「こらっ、エース。今この船では私はことは隊長と呼びなさいと言ったでしょ?家族だからこそケジメは必要です」
「、ごめんたいちょー」
怒られてしゅんとなってるエースを見ると可哀想に思えてくるがここで妥協するとエースのためにならない。
白ひげ海賊団はいい人ばかりだがそれでもエースの評価が私がいるからよいのだと陰口を叩かれてほしくない。
二番隊隊長、ポートガス・ルージュ。今私は白ひげ海賊団で二番隊の隊長をやっていた。
どうしてこうなったかはよくわからない。ただこのままだと時が進むとサッチが殺され戦争が起きてしまうと分かっていたからエースとともに海に出て白ひげ海賊団に入団した。
そしてひょんなことから私は白ひげ海賊団の二番隊隊長の座を賜った。
エースの母親で海賊王の恋人というルージュも規格外の力の持ち主だったらしくこの肉体は無条件で強かった。
母は強しというべきかエースに襲いかかる敵をばっさばっさ倒していったらそれが評価されてしまったらしい。
とはいえ責任ある役職は嫌ではないので甘んじてその責務を負っている。いつかこの席をエースに譲ることになんだろうなと考えると非常に遣り甲斐がある。今のこの甘えん坊にはとても譲れないけど
叱られてしょんぼりしてるエースの頭をポンポンと撫でる。さて、今日は何をしてしまったのだろう
「で?マルコと何があったの?」
「!、マルコが俺がたいちょーにべったりし過ぎだって!いい加減親離れしろって、でついっ」
「そりゃマルコの方が正しいね。私もこんなに私にべったりだとエースに彼女ができたとき引かれちゃわないか不安になるよ」
「じゃあ彼女なんかできなくていい!俺には母さんがいればそれでいいんだ」
そういってブスくれるエースに思わず私は自分の眉間を押さえる。
自分の息子に好かれるのは嬉しいのだが流石にこの甘ったれっぷりには困ったもんだ。もはやこれはマザーコンプレックスと呼ばれるものだろう。
どうしてこうなったのだろう?いくらエースが心配といっても過保護過ぎたのだろうか?
私はため息をつきながらエースに向き合った。
「それじゃあエースの視野が狭まるよ。立派な男になっていつか隊長としてニューゲートさんを支えたいんだよね?なら色んなものを見て色んな恋をすべきだ。」
「でも、俺が離れるとマルコに取られるかもしれねえもん」
エースの言葉に ん?と思ってエースを凝視するとエースは俯いて何処か気まずそうな顔をしていた。
まるで言いたくないことを無理矢理吐き出すかのようにエースは口を尖らせ言葉を発した。
「だってマルコの奴ぜってぇ母さんのことが好きだ」
「いやいや、白ひげ海賊団一番隊隊長のマルコがこんな年増好きなんてないと思うよ?あんなにモテているのにわざわざ私のことを相手したいなんて思わないだろうし」
「母さんは年増じゃねえ!それにマルコはいっつも母さんを気にしてる!俺に文句つけてくるのも母さんと仲良くしてる俺に嫉妬してるからに決まってる!」
そういって声を荒らげるエースに驚く。
だけれどもエースの話す内容自体には半信半疑だ。
マルコが私を好きっていうのはやはり納得が出来ない。
こんな子持ちの未亡人に声をかけるほどマルコが女に飢えてはいないだろう。
同じ隊長格だしそれなりに仲はいいと思うがとてもそんな目で見られてるとは思えない。
エースの勘違いだというのが本筋だとは思うがそれを言ったところでエースが納得するとは思えない。
苦笑しながらエースの頭をぐしゃぐしゃにしてやる。
「マルコが私のことをどう思っていても私の一番はエースだよ?」
「ほんと!?絶対だからな!母さんの一番は絶対俺だからな!!」
「はいはい。だからエースも早く一番大切な人を作りなよ?」
そういうと嬉しそうだったエースの顔が急に歪んでいく。
複雑な感情を抱えているといった表情でエースは眉を寄せながら口を開いた。
「‥俺にはオヤジがいる」
「それもいいことだけれども恋人を作りなさいってこと」
「母さんは俺に恋人が出来てもいいのかよ。俺の一番じゃなくてもいいのかよ」
そういってエースは再びブスくれた。それに苦笑する。
親にとって子供は一番だけど子供にとって親は一番でなくてもいいのだ。今のエースには薄情に聞こえるのかもしれないがそういうものなのだ。
「私はエースが幸せでいてくれたらそれでいいよ」
本当にそれだけでいいのだ。他には何の望みもないのだ。ただエースが仲間に裏切られ友人を殺され多くの人間を巻き込んだ混沌とした戦場で家族を失って最後弟を庇って死んでしまわなければそれでいい。
不満顔のエースを抱き締めて笑いかける。だから私はそう遠くない未来に訪れるであろう歴史の境目に遭遇したときなんの躊躇いもなく刃を振るうだろう。
この世界に生を受けたときから君を守ることが私の役割なのだから。
〜自分の産まれた意味を知ってました〜
ーendー