成り代わり(ブック)

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周りを海兵に囲まれた。俺は黙ってこれからの自分のいく末を悟った。

身体中が熱くて心臓がドクドクと鼓動を立てているのを感じた。これだけ血を流してしまったからにはもう砂になることもできない。逃げることはできない。

俺は負けたのだ。知識もあった。未来も知っていた。自分の持てる力を全て使い立ち向かった。なのに負けた。

運命ってやつはやはり定められているのかもしれない。全てが書き換えられていく。俺が負けるように、あの男が勝つように。

モンキー・D・ルフィ、3000万ベリーの賞金首。

そしてこの世界の主人公。


俺はバロックワークスを用いてアラバスタを滅ぼそうとした。自分の国が欲しかったからだ。強い力が欲しかったからだ。

…あの人を守りたかったからだ。

なのに俺の計画は悉く麦わらに邪魔されていった。世界が全てあの男に勝つように回った。

俺に勝ち目などはなからなかったのだろう。彼が主人公なのだから


「何故なんじゃ。何がお前を変えたんだ。わしの知ってるお主はこのようなことをする男ではない」


じゃりと砂を踏む音に顔をあげると霞む視界にこの国の国王ネフェルタリ・コブラが見えた。左腕は俺が貫いたせいで血みどろで立つことなど辛いだろうに懸命に俺の前に立ちはだかっていた。



「俺はこんな男だよ。目的のためにはどんな手段だって用いるし犠牲だっていとわない。それがこの現状だよ」


「…では目的はなんだったのだ。プルトンか?」


「プルトンのありかは元々知っていた。目的は国取りだよ」



プルトンのありか“原作”知識で知っている。何処にあるかも誰が持ってるかも知っていた。この国取りが終わったら取りに行こうと考えていた。まあ全て水の泡だけどね。

地下のプルトンについて書かれた石碑を望んだのだってロビンがポーネグリフを見たいといったからだ。さすがに俺もこの国のポーネグリフの場所までは覚えてなかったからな。王族は皆殺しにするつもりだったから今しか機会がなかった。それだけだ。



「何故己の国を必要とする。お前の頼みならわしは手を貸しただろうに」


「手を貸されるくらいじゃ足らなかったんだ。必要だったんだ絶対的な力が。じゃないと護れないんだ」


頬を何が伝った。視界が悪いのは目が霞んいるからだと思いたい。惨めだ。守りたかったんだ。でももういい。



「何を守ろうとしたのだ」


「もうそれはいいんだ。もういい。大丈夫だから」



世界は俺という小さな異分子ごときじゃ何も変わらない。それがよくわかった。

だからロビンは大丈夫。ロビンはこれから麦わら一味という本当の仲間を得て守られる。あの主人公の船だもの。絶対に大丈夫。


なんだ俺のしたことって意味なかったのかな?いや、俺がいないとロビンが麦わらの船に乗るきっかけがないか。じゃあロビンの役に立てたかな?それなら救われるんだけど。



「もういいんだ。」


「悪逆非道の限りを尽くしたクロコダイル、お前を海軍に引き渡す」



コブラがそう重々しく俺の判決を下した。俺は瞼をおろした。その判決甘んじて受け入れよう。

もう俺は祈ることしかできないから君の幸せを祈るよ

どうか幸せに、ロビン



〜そうして彼は世界に呑まれました〜


とある異世界からきた男が、

1人の女に恋して、

その人を守るため大勢の人を殺して、

そして消えていった


(彼の運命は最初から決まってました)


ーendー

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