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□マーガレット〜秘めた恋〜
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「へえ、ルーちゃん好きな人いるんだぁ」

によによと目を細めてルーシィを見つめる青髪の親友の口をあわてて手で塞ぐ。
もごもごとまだなにかを喋っていたが真っ赤な顔をしているルーシィに免じて口を動かすことを止めた。

「っぷはぁ、いいじゃない。ここは女子寮だし都合よくあたし達以外は出掛けているしね。」

確かに今日は女子寮にはレビィしか居ない。ガールズトークをするにはうってつけの環境だった。
だか、ルーシィはキョロキョロと周りを見渡し、何らかの気配がないか探っていた。
彼女曰く。

あいつらは何処にでもいるから油断ならないのよ!!

とのことらしい。『あいつら』とはご存知ナツ&ハッピーのことなのだが。
ここは女子寮。しかもナツとハッピーは二人で仕事で遠出している。今日に至ってはそんな心配はないと思っていたレビィは苦笑いをするしかなかった。
周りに気配が無いことを確信したルーシィは安心し、レビィとの会話に夢中になっていった。

次の日――――

「なぁルーシィ、お前好きなやついるんだって?」
「ぶはっ!?」

いきなり目の前に出現したナツが放った一言に飲みかけのオレンジジュースを豪快に吐き出すルーシィ。
きったねーな。と文句は言うが隣に座るナツに抗議の声を上げるがどこ吹く風。どっかりと座ると顔を「近い距離」まで寄せると囁いてきた。

「わりーわりー内緒なんだっけ?で?好きなやついるんだろ?誰だよ。」

あまりにもストレートな質問に顔を真っ赤にして口をパクパクさせるルーシィを暫く観察していたナツだが、更なる爆弾を落としてきた。

「ふーん……動揺してんな。やっぱ、いるんだ……好きなやつ。へえ、そっかそっか、実はな、色気ねーから恋愛とかって興味ねーのかと心配してたんだぜ!!」
「えっ!?余計なお世話よってイタッげほっ!」

ナツが満面の笑顔でルーシィの背中を強めに叩くせいで、口に出そうになった言葉は噎せたせいで出ることはなかった。

息を整えているルーシィの隣でナツは腕を組み、何やら悩んでいる。

「てか、なんであんたが知ってるのよ。あ、あ、あたしにすす好きな人がい、いるってことを……」
「ん、あぁ、ハッピーが昨日女子寮に行ったらルーシィが好きなやつ居るって聞いたってすっ飛んで帰ってきたんだ。」

……やっぱ、居んのかよ好きなやつ。ふーん。そっか……

ルーシィはハッピーに聞かれたことがショックでナツの小さく呟いた最後の言葉は聞こえていないらしく、真っ赤な頬を両手で押さえその場から逃げ出してしまった。
逃げ出すルーシィの肩を掴もうとしたナツの手は空を切ると、ゆっくりと膝元まで降りていった。


部屋まで帰りついたルーシィはその勢いのままベッドにダイブする。荒い呼吸に合わせるかのようにスプリングで身体が揺れる。

――なんで?なんで?なんでナツがあんなこと言うのよ!!恋愛に興味ないって何よっ。あるにきまってるじゃない。あた、あたしが好きなのは――

「……なのに……」

ポツリと呟いた言葉は枕の中に吸収されていった。

更に次の日からはナツが部屋まで押し掛けて、いろいろなことを事細かく聞いてきた。
ナツの頭にのっかていたハッピーが翼を出して、ひらりとソファーに座るルーシィの膝の上に舞い降りる。
ルーシィを見上げる目は三角にかたちどられている。そんなハッピーの頬をちょっとだけ横に引っ張った。
するとナツがルーシィを見下ろすように目の前に立つ。

「なあ、ルーシィの好きなやつって、フェアリーテイルの奴か?」
「ちち、違うわよっ!!そ、そりゃ魔導士だけど。」
(ああ、違うのよっ!!このギルドに居るのよ!!)
「へぇ、どんな魔法つかうんだ?」
「うっ、ぐぅ……せ、星霊のことをよく知っている魔導士、よ。」
(炎の魔法よ。)
「潰れた蛙かよ。はぁ、そりゃ気が合いそうだな。」
「そ、うね。彼もロキとは気が合うみたい。」
(そうよ。仲間だもの。)

そっか……。と、ナツは視線をずらし窓の外を眺める。
元気のないナツを疑問に思いながらも、ルーシィは嘘をついてしまった自分に罰を与えるかのように強く右の頬をつねった。

「ひは……ひ、ふぇ……ぇ……」

痛みと苦しさから涙がこぼれ落ちる。
痛みを訴える声と流れ落ちる涙に気が付いたナツはルーシィの手を頬から離し、つねったせいで赤くなった場所を自分の手で優しく覆う。涙に濡れたそこはひんやりと冷たい。

「……なんでルーシィが泣くんだよ……泣きてーのは俺のほうだっつーの……折角ルーシィの為にって決めたのによ泣くなよ。」
「あ、たしの為?なんの事?」
「……ルーシィの好きなやつと恋人ってやつになれるように応援しようかなって。それでルーシィが幸せなら俺はそれで、良い。」
(応援……。そっか。ナツは応援してくれるんだ。)

『応援』

その言葉と困った表情のナツを目の当たりにしたルーシィは悲しくなった。一度は止まりかけた涙が頬を覆う武骨な指の間を縫うように流れ落ちていく。
流れ落ちた涙が、膝の上で心配そうに見上げるハッピーの額にシミを作った。

「あのね、あ、あたしが好きなのはね……」

次の言葉を発する前に一度唇を引き締ると瞼を閉じ、唾をコクりと飲み込む。

(正直に言おう。この心地良い関係が終わっちゃうかもしれないけど言わないで終わっちゃって後悔するよりも、いいかもしれない。)

意を決して半分だけ瞼を開けば、そこは桜色に支配されていた。それとほぼ同時に唇に熱く柔らかいものが触れている感覚があった。
驚きから瞼は最大に見開かれた。
時間が止まったかのように動かないふたり。

「ねぇ?ナツーどうしたの?見えないよ。手をどけてよ。」

ナツの右手で目を覆われ視界を遮られているハッピーが出した抗議の声にルーシィが我に返ると桜色が離れていく。

「わりぃ、忘れてくれ。」

身体を反転させ窓へと向かおうとしたナツを引き留める為にルーシィが手を伸ばし掴んだのは服ではなくマフラーだった。
今度はナツが潰れた蛙のような声を出して立ち止まる。

「忘れないっ!!忘れられる訳ないっ!!だってあたしの好きなのはっ。」
「え?」

ナツが振り返るとルーシィはソファーに座ったままま見上げて目を潤ませ顔を真っ赤にして言葉を詰まらせていた。その切羽詰まった表情にナツは心臓を鷲掴みされたような感覚に戸惑う。

「……だもん。好きなの。どうしようもないくらいに。」

滅竜魔導士にはちゃーんと届いていたらしく、耳どころか首までルーシィに負けないくらいに真っ赤に染まっている。

「俺も、俺もどうしようもないくらいに……ィがす、好きだ。大好きだ。」

ナツからの声は小さかったが、耳元で囁かれた言葉はしっかりと届いていた。


おしまい

「ナツー、見えないよー聞こえないよーひどいやー。」

ルーシィの膝の上で、未だにナツに目隠しされているハッピーは、しっぽをくにゃくにゃ動かしながら棒読みで抗議していた。












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隠れ家の林檎様より、サイト開設相互記念&誕生日祝いに頂きました!
ルーちゃんの幸せを想って応援しようとするナツがなんとも言えませんね〜!途中何度も「キミのことだよ!キミの!」と叫んじゃいましたよ。そしてルーちゃん!もんもんと悩んだ末、それでもちゃんと気持ちを伝えようとした挙句の不意打ちちゅー!!ここで私、堪らず悶絶!!からの棒読みハッピーに思わず吹き出しました(笑)ご馳走様です。
お忙しいにも関わらず書いてくださった林檎さん!本当にありがとうございました!とても美味でございました〜。


※無断転載・保存・印刷はしないようお願いいたします。(giftページ上部にも記載してありますが一応こちらにも記載させていただきます)


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