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□男達の仁義無き戦い
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新設された魔法評議院から戻ってきたマカロフとエルザとラクサス、それに雷神衆から四人はこってり説教されて絞られて、半壊になってしまったマグノリアの復興に奔走させられていた。



満身創痍であるはずなのだが、それでも何時も以上に働かせられてナツは大いに不貞腐れていた。
あれからほぼ同時に倒れたものだから、決着と言える決着は付いておらず、心に蟠りをつっかえさせながら眉根をひそめて唇を尖らせながら従事していた。隣にルーシィがいるにも関わらずに、だ。

「全く。何であんた達は街を半壊させるのよ。お陰であたしも手伝わせられちゃったじゃない」
「……」
「ねぇ、ちょっと聞いてるの?!」

ナツはルーシィそっちのけで深く何かを考え込んでいる。珍しい事この上無い。
そんなナツの様子に気付いたルーシィは一旦文句を止めて首を傾げる。と、不意に何かを理解したようにナツが、あ、と目を開けて口を開いた。そして、目線をルーシィに向け、突然睨まれるような眼光を向けられてたじろぐ少女にナツは至極真面目に、すまねぇ、と謝った。

「は?街を壊した事?」
「いあ、勝てなかった事」
「あんたねぇ、いい加減に……」
「ルーシィが一番だ、って思い知らせれんかった」
「……はい?」

もしかして聞き間違えたかしら、とルーシィはマジマジと見るも、ナツは先程の発言を撤回すること無く真っ直ぐに見返してきた。
暫く呆けていたルーシィが段々言葉を理解して顔に熱が集まり始めた頃、ナツは徐に二人の距離を縮めて顔を寄せた。
唇を塞がれて一瞬だけ息が出来なくなれば、ルーシィの心臓が早鐘を打ち始め暴れ始める。
ゆっくりと顔を離せば、ルーシィは全身を真っ赤に染め上げて動きを完全に止める。対してナツは満足そうに満面の笑顔を顔いっぱいに貼り付けていた。

「うん、やっぱルーシィが一番だな」

頻りに頷きそれだけ呟いてナツはズンズンと足を進めていった。
ルーシィは頭から湯気を出して立ち止まっていた。



「そう言えば、グレイ様はどうしてこんな激しい喧嘩を?」

ジュビアの心配そうな瞳で見詰められれば、自分が如何にくだらない事でムキになって本気を出してしまったのかを改めて考えさせられた。いや、むしろ物凄く恥ずかしい。
幸も不幸も、グレイに弁当を届けたジュビアは昨日から行動を共にしている女性陣達と一緒に隣街のケーキ屋に出掛けていたらしく無事であった。
その事にグレイは胸を撫で下ろしつつも、自分が如何にジュビアを気に掛けているのか、改めて気付いた。しかし、ここで素直に認めては何となく癪にも感じる。
グレイはがしがしと乱暴に自分の頭を掻き、忘れた、と視線を明後日の方へと向けてはぐらかした。

「そうですか……ですが、グレイ様が無事でジュビア嬉しいです」
「お、おう」

時折ジュビアのストレートに気持ちを伝える事が羨ましくなる。
グレイは弾む心とは裏腹に、熱が集まり始めた頬を隠すように再びジュビアから目線を逸らした。
そして、不意に渡された弁当を思い出し、改めてジュビアに視線を向ける。

「その、悪ぃ、ジュビア。弁当、ダメにしちまって」
「あ、はい。良いんですよ。また作ってきますから!」

気合い十分で懲りずにまた作るジュビアの瞳に一瞬写った憂いの色。
グレイはもう一度心の中でジュビアに謝った。

「っつーかよ、何時もオレのだけしか作ってないよな」
「それは勿論!!グレイ様の為だけに毎日愛情込めて作っていますから!!」
「いや、そうじゃなくてな」

グレイは少し照れ臭そうに頬を指で描く。

「……飯は、一緒に食った方が美味いだろ?」

ジュビアは大きく目を見開き、グレイをマジマジと見つめた。そして、途端に花咲くような柔らかくて優しい笑顔を浮かべて嬉しそうにグレイの腕に抱き着いた。

「分かりました!毎日ジュビアの作ったお弁当を一緒に食べましょう!」
「……いや、時々で良いからな」

その言葉とは裏腹に、グレイはジュビアの腕を振り払う事は無かった。



レビィは頬を膨らませてブツブツと文句を言いながらも動かす腕を止める事は無かった。
資材不足や建物の骨組み補強の際、こうしてレビィの魔法は重宝されるものだった。
真面目すぎるが故に働く手は決して止めない。それでも街を半壊させた元凶の一人でもある彼に対する文句を止める事が出来ないでいた。

不備がないかを建物骨組みと図面を見比べながら、弱い部分を補強していくレビィに近付く一つ足音。
誰かと分かっていながらも、レビィはため息を止める事は無かった。

「……おい、チビ」

少し不機嫌さを滲ませた声音。
レビィは短く返事をすると、振り返らずに空中に文字を書く。
″立体文字″で出現させた物が思い通り相手の頭にゴンとぶつかった音がした。
どんなもんよ、とレビィは鼻を鳴らすも、途端にボリボリと咀嚼する音が聞こえ始めた。
効かなかったのかな、とレビィは頬を膨らませながら振り返ると案の定、ガジルが″立体文字″で出した鉄の塊を食べていた。

「何でオレが腹減ったって分かった?」

レビィが先に口を開いて文句を言おうとしたが、それよりも先にガジルが目線を合わせて問いかけてき、跳ねる胸元を押さえながら、だって不機嫌そうだったもん、と頬をプクリと膨らませた。

「あ?よく分かんな」
「むぅ。ガジルってばお腹空いたら直ぐ不機嫌になっちゃうじゃない。気付いてないの?」
「む。いや、確かに腹減るのは嫌だけどよ」

そんなにオレは分かりやすいのか?とガジルは腕を組んで首を傾げた。
実際は、ガジルの考えや表情は仲間の中でも分かりにくい部類に入る。これでは、如何に自分が彼を見ているのかバレてしまう。
レビィは恥ずかしくなって顔を俯かせるとガジルが近付いてきた。そして、人一人分の距離を開けてガジルはレビィに手を伸ばした。そのまま二、三回軽く頭を叩くと、乱暴にがしがしとレビィの頭を撫でた。
少し痛いくらいのそれにレビィは思わず怒ろうと口を開くも、またもやガジルはそれより早く、サンキューな、と言い残して自分の持ち場へと戻って行った。

ズルい、と一人残されたレビィは顔を真っ赤にしながらガジルの背中を見送った。










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リレーコラボ小説第一弾!ということで、倉庫屋。のトコヤ様より一足お先に頂いた「ナツルーグレジュビガジレビジェラエル」のお話です。タイトル通り男達が仁義無く戦っておられますね(笑)なんて爽快でハイクオリティすぎるバトルシーン!そして甘々なその後…!!思わず震えが来る程身悶えてしまいました!書いてくださったトコヤさん!ありがとうございました!!


※無断転載・保存・印刷はしないようお願いいたします。(giftページ上部にも記載してありますが一応こちらにも記載させていただきます)

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