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□ナツの本心キノコ
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いつものように大好きな本の話で盛り上がっていると、正面に座っていたレビィちゃんがあたしを見て、わぁ!と声を上げた。

「ルーちゃんの髪、天使の輪っかができてる!綺麗だねー!」
「あはは。ありがと」

天窓から差す光がちょうど頭に当たっていたのか少しずらすと顔が眩しい。
髪を褒められたことが嬉しくて、えへへと肩を竦めていると

「ほんとだ。綺麗だな」

突然うしろから声がした。

「え、ナツ?!」
「あぁ…まるでオレの天使だ」
「はっ?!」

いつから居たの?とか、その顔気持ち悪いんだけど、とかーー色々言いたいことは浮かんできたけど、そんなことはどうでもいい。

今、こいつは何て言った…?
イタズラかと思ったけどどうも違うようだ。
ハッピーも居ないし、レビィちゃんだって困惑してる。

普段のナツらしからぬ涼しげな微笑みに顔を引きつらせていると、隣りでキュルンと音がした。



「やぁルーシィ。今日も一段と美しいね」
「ロキ…」
「おや?今日はお咎めなしかい?」
「や、今ちょっとそれどころじゃ…」
「ダメだぞロキ、勝手に出てきちゃ。ルーシィが困ってるだろ?」

突然出てきたロキの方に困っているとでも思ったのか、ナツがやんわりと注意する。

「あれ、ナツ?いつもと様子が……じゃあやっぱりさっきの…」

明らかにおかしいナツを見て何かを思い出したのか、ロキが考え込むように腕を組んだ。

「さっきのって何?!」
「いや、デートの途中でね、道端で拾い食いをしてるナツを見かけたんだよ」
「拾い食い?!」

レビィちゃんと顔を見合わせる。

「確か、オレンジ色をしたキノコみたいだったけど」
「それはきっと毒キノコね」

近くからミラさんの声がして、あたしは振り返った。

「ど、毒キノコ?」
「ええ。でも、毒と言っても害はないから大丈夫だと思うわよ。ただ、食べると普段の性格が真逆になって口から本心がペラペラ出ちゃうようになるだけだから」
「なんでナツそんなの食べちゃったのかな…」
「ナツのことだからまた興味本位で食べちゃったんじゃないかしら」

時間が経てば自然と元に戻るわよ。
そう言って、ミラさんは空のトレーを片手にカウンターへと戻って行った。




「なんか今のナツってロキみたいだね」

何時の間にかあたしの横に座っていたナツを見てレビィちゃんが苦笑いを浮かべた。

「そうだな。オレもそう思う」
「自覚あるの?」
「ああ。多分戻ったあとすげぇ恥ずかしんだろーな」
「他人事みたいね」
「けど、あとのこと考えるより今はルーシィを見てたい。ルーシィが居ればそれでいい」
「っ!」
「うわぁ…」
「僕でも照れちゃうセリフだね」

ナツの性格を真逆にするとこんなになってしまうのか…。
本心が出る、ということは普段もそう思ってるってこと?
正直こんな口説き文句、本の世界でしか聞いたことがない。
ロキは別として。

それを、キノコのせいとは言え、ナツのーー好きな人の口から聞くことになるとは…。

「何も食べてないけどお腹いっぱいになっちゃった。明日も早いしそろそろ帰るね。頑張ってルーちゃん!」
「え、ちょ!レビィちゃん?!」
「僕もこれからデートの約束があるから失礼するよ。何かあったらいつでも呼んでね」
「何もなくても出てくるしあんたはいつでもデートじゃない!」
「ルーシィ、オレだけ見てなきゃダメだろ?」
「…あー!もおっ!!」

そそくさと二人が帰って行ったあともナツの口説き文句はしばらく続いた。

一番堪えたのが熱っぽく囁かれた愛の告白だった。









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