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□ヘアアイロンと青い春
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その日ジュビアの気分はバラ色だった。

昨日は自分が想いを寄せる氷の魔導師に誘われて二人きりでの仕事だったのだ。

依頼内容は山奥に迷い込んだ猫の捕獲。
お前も来るか?と声を掛けてくれた。
まるでデートをしているかのように山を歩き回って無事に見付かった猫を抱き上げた時の彼が、神々しいくらい慈愛に満ちた顔をしていたものだから、ジュビアの心はまたもや鷲掴みにされてしまった。
しかもその帰り際「お疲れさん」と言って卒倒しそうな程輝く笑顔を自分に向けてくれたのだ。
どうやって帰ったのかは記憶にないけれど。

その時の色とりどりな花々が乱舞するビジョンを思い出してジュビアは一人、はわわっと頬を染めながら両手で顔を覆った。
今はギルドの前。
今日もあの素敵な笑顔を向けてくれるだろうかーー
よろよろと心許ない足取りで酒場の入り口を潜る。
意中の黒髪を探そうと揺れる瞳で見渡した時、その目がテーブルとカウンターの間を通り過ぎる途中で異様な光景を写し出した。
バッと見開いて、一気に焦点が定まる。

(ルーシィが…燃えている…?)

そんなはずはない。
一度ジュビアは、こしこしと目を擦ってから再び顔を上げた。
よく見ると自分からは見えない位置ーー対角線上に立つルーシィの前に向かい合うようにしてナツが立っている。
ーーその身体に淡く炎を纏いながら。

遠目で、しかもこの場所からルーシィの前で何やら燃えているナツまで一直線だったため、ジュビアにはルーシィのほうが燃えているように見えたのだ。

(ナツさんが、燃えている?)

周りを見ると他の仲間達も遠巻きにチラチラと二人を気にしている。
それを見ながら、少し距離を近付いてナツの顔を窺ったジュビアは、はっとした。

怒っているけど泣きそうな目、不貞腐れたように口を尖らせて目の前のルーシィを睨んでいる。

その何とも形容し難い表情に二人の様子からして、ケンカ…と言うよりはナツがルーシィに怒っている、と見て取れた。

俄かに魔力まで漏れ出す程の怒りなのか…

向かい合うルーシィも、心なしか脅えたようにその肩を震わせている。

ジュビアは、キュと胸元を掴んだ。
自分が来る間、一体この二人に何があったのだろう…

普段思っていることがすぐ顔に出る分、今のナツの表情は複雑すぎて次に何を起こすかわからなかった。

ナツがルーシィに…なんて、絶対にありえないことだがもしもを考えると、このままではルーシィが危ない。

幸い自分は水の魔導師だ。
たまたまだったが、このタイミングでギルドに来たのは良かったのかもしれない。

グッ、と片足に重心を傾けた時、淡く炎を纏ったままのナツの手がルーシィに伸びるのが見えた。
その瞬間、ジュビアは咄嗟に魔法を発動させた。









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