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□幼い約束
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「ナツ、貴様……後ろに何を隠している?」
「べ、別に何も…。な、なあ?ハッピー?」
「あ、あいっ!オイラ達、別に何も隠してないよっ!」
「ほお……そうか」

スー、とエルザが右腕を上げる。
殴られるーーと肩を竦めたナツとハッピーに睨みを効かせたまま、その腕はビシッ、と後方のテーブルを指差した。

「では、あそこにおいて置いた私の大切なケーキをあんな残骸にした輩は何処のどいつだ?マスターに呼ばれて席を立つ前はあんなではなかったはずだが」

エルザが指差した先には最早ケーキの姿形も保たれていない“元ケーキ”だった物。
最悪なことに彼女の一番大好きなチーズケーキが、無残にもボロボロな姿で食い散らかされている。

エルザの後ろから目線を戻したナツは震える足に叱咤して凄まじく深い皺を眉間に刻み込んでいるその赤眼に、真っ向から……怯んだ。

「しし、知らねえよ!おぉお俺達じゃねえって、言ってるだろっ?」
「何故どもる?さては貴様……その後ろに隠している物…」

エルザがグッとナツの胸ぐらを掴む。

「っ!!」
「わぁーっ!!エルザ!何もないっ!何も隠してないかーー」

止めに入ろうとしたハッピーがナツの胸ぐらを掴んだエルザの目線の高さまで浮き上がった瞬間、それまでその翼で隠されていたものがぴょこり、と顔を覗かせてしまった。

「あ…」
「あ…」
「これは…」


それはーー





クリクリと大きな琥珀色の瞳を輝かせて口の周り一杯にケーキの食べカスをくっ付けた、小さな金髪の女の子。


その宝石のようにキラキラとした瞳が、ナツの腰辺りから目の前に立つエルザを見上げて不思議そうに首を傾げた。

「ねぇナツ、どうしてこのおねえちゃん、こんなにおこってるの?」
「…ルー、シィ?」
「あー…」
「ナツ…もうムリだよ。正直に白状しよう」

床に舞い降りて翼を閉まったハッピーは未だに胸ぐらを掴まれたままのナツの後ろから女の子を優しく押し出しながら、はぁと溜め息を吐いた。










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