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□青い包帯
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「ていうかルーシィってさ」
「ん?」


荷物の影にでも隠れていないか、ともう一度リュックの中を探っていたルーシィにハッピーの猫目が見上げた。


「女の子みたいにいつも包帯とか持ち歩いてるよね。女の子みたいに」
「強調しなくてもあたしはれっきとした女の子よ」
「え?」
「え?ってなにかしら?ナツ」
「いひゃいよるーひー」


風化していく魔物を背後に、みょんみょんとハッピーのヒゲを伸ばすルーシィ。

目が怖ぇ…。

ナツは若干目の据ったルーシィに相棒の限界を知らせた。


「それ以上伸ばすと戻んなくなるぞ」
「フン」
「うわーん!ナツー!」


ぼふっ、とナツの胸にハッピーが飛び込んでくる。
案の定、真っ直ぐだったそのヒゲは限界近く引っ張られたことで先が縮れて曲がっていた。


「今日のルーシィ、機嫌悪くねえか?」
「…あい、いつもより引きも強かったし。何か嫌なことでもあったんじゃない?」


ヒソヒソと、本人の傍で背を向けるようにしてナツとハッピーが耳打ちし合う。
その丸聞こえの声量に、ダムッとルーシィの足が地面を叩いた。


「聞こえてるんですけど?別に機嫌なんて悪く……、……ないわよ」
「なに今の間っ?!」
「悪いのか?」
「それより、その膝なんとかしないと」
「話逸らした?!」
「いや、だから平気、」
「じゃない!見てて痛々しいのよ!だいたい、あの時あたしのことなんか抱えて跳ぶから…」
「だってお前、あん時なんか辛そうな顔してたじゃねぇか」
「…え?」
「てか朝からだよな?どっか具合でも悪ぃのか?」
「え、ルーシィ具合悪かったの?」


猫の目と、猫のような目が心配そうに揃ってルーシィを見つめる。


「えー……と」


ルーシィはそんな二匹を前に、うろうろと目線を泳がせた。


(なんて鋭いの)


今日も朝から一緒だったため、時折顔をしかめていた所でも見られていたのだろうか。


(そっか……だから)


ちらりとナツの方を見る。


(気遣って、くれたんだ)


そう思った瞬間、ポカポカと心が暖かくなった。

しかし、それも束の間。
軽い頭痛、ツキツキと痛む下腹部に眉が寄りそうになる。


ルーシィは平静を装うようにキュッと口元を引き結んだ。


いくら二人が心配してくれたとしても、これだけは言える筈がない…。


「今日は朝から女の子の日になっちゃって頭もお腹もすっごく痛いのー」

ーーなんて、恥ずかしすぎて死んでも言える筈がなかった。

半ば八つ当たりのようにイライラをハッピーにぶつけてしまったのも、そういったホルモンバランスの乱れから。
いつもなら軽くかわせる一言に、つい力が入りすぎてしまったのだ。

紛れもない八つ当たり…。
ハッピーには申し訳ないこをしてしまった。


ルーシィは、本当のことは言えないけど…と心の内で前置きしてから未だ心配そうに自分を見つめるナツとハッピーに向き直った。


「ちょっと頭が痛かっただけだから…。ごめんねハッピー、ヒゲ、引っ張りすぎちゃって。抜けてない?」
「もう少しで抜けちゃいそうだったけど大丈夫だよ。それより、ルーシィ頭痛かったの?大丈夫?」


小首を傾げたハッピーに、大丈夫よと笑顔を返す。
そーゆーことは早く言えよな、と此方も小首を傾げたナツに、ごめんね…ありがとう、とにっこり返した。









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