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□もしもの日常
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ドカーンッッッ!!!!
「うわっ!」
何かが大爆発する音においらは空中で耳を塞いだ。
今日の依頼は街を丸々一個乗っ取ろうと企む強盗団の制圧。
ーーなんだけど、実は今おいら達は苦戦を強いられてる。
って言うのも、相手の数が意外と大人数な上に結構手練れが多くて……三対何十人な今のこの状況ははっきり言って少人数のおいら達にとって圧倒的に不利だった。
空中から見渡した数ざっと四、五十人。
「まだあんなにいっぱい居るよ!?」
「ちくしょ!これじゃキリがねえ!」
同じように見渡したナツがリストバンドで汗を拭いながら叫ぶ。
その後ろで背中合わせに敵を睨んでいたルーシィが叫んだ。
「確かに…。こうなったら一気にいくしかないわね、ナツ!」
「おう!」
「バルゴを呼ぶわ!」
「その手があったか、了解!」
一瞬だけアイコンタクトを交わした後、二人同時にバッ、と左右に分かれる。
見事に息の合ったコンビネーションだ。
「ハッピーはあっちで!」
「あいあいさー!」
腰の鍵に手を添えたルーシィの指示でおいらもナツの方へ飛ぶ。
「火竜の、咆哮!」
左へ跳びざま威嚇のためにと放ったナツの炎が一カ所で固まっていた強盗達の周りをとり囲むのが見えた。
「うおわぁあ!!」
「あちぃっ!!」
「よし、ルーシィ今だ!」
「うん!」
声を張るナツに、凛々しく応えるルーシィ。
もう、勝利は見えたも同然。
そう、おいらは確信したハズだった。
けどーー
「あ……」
この時おいらは、振り返ったナツの目が遠くで鍵を構えるルーシィを視界に捉えた途端瞳孔開きっぱなしで二度見したのをばっちりと目撃してしまった。
「開け、処女宮の扉!バル」
「待てぇぇえええいっ!!」
真っ青になって叫ぶなり、ナツがその場から消える。
次の瞬間にはきょとん、と仁王立ちしているルーシィの前にいた。
下着姿の身体にバサリ、と自分の黒衣を被せて。
「お前こんな時まで脱ぐなよ!」
「え?きゃっ?! いつの間にっ?!」
「いつの間に?!じゃねーよ!毎回毎回早業すぎだろ!どんだけいつの間だよ!つか、いい加減そのクセ治せ!頼むから外で脱ぐな!」
「わっ、わかってるわよぉ…でもこればっかりは……。あたしだってすぐ治るんだったら苦労しないわよ」
「そーだろーけどよぉ」
ーー前言撤回。
この仕事……もう少し長引くかも…。
「なんか、俺以外に見られんのとか……ムカつく」
「っ、ナツ……もう、バカ」
「…るせ、そー言うんなら早く治せ」
てな感じで突如始まったイチャイチャ。
戦闘の真っ只中にも関わらずおっぱじまったイチャイチャ。
実はこれ、初めてじゃない。
ーー重度の脱ぎ癖を持つルーシィを自分の服で隠すナツ。
気付いたらいつでもどこでも脱いでるからナツは気が気じゃないみたいだけど、こんなのは日常茶飯事。
側で見せつけられ続けたおいらにとってはいつもの光景だった。
「ほら、早く服着ちまえよ」
「こ、ここで?」
「隠しといてやっから。それに……俺にしか見えてねぇよ」
「やっ……あっち向いててよ…」
地面に散らばる服を拾おうと、広げられた黒衣の裾から白い手が伸びる。
この時の注意点を一つ。
“着替え中の二人(主に桜頭の方)には、決して声を掛けてはならない”
おいらや女の子達だったら例外だけど、男……それもむさ苦しい奴等なんかがそんなことしようモノならーー
「……あのー、すんません。そろそろいっスか?」
「あ、まずい」
「あ?なんだ猫、今なんか言ったか?」
「まずいよおじさん達」
「だからなにが、」
「おい……」
ゆらり、と蜃気楼を纏ったナツが振り向いた。
あーあ……。
「勝手に見てんじゃねぇぇえええっ!!!!」
ドカーンッッッ!!!
「うわっ!」
本日二度目の何かが大爆発する音に、おいらは空中で耳を塞いだ。