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□交換日記を始めよう
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“○月X日 (はれ)
今日はおつかれさん。
けっこー手こずったけどなんとかホーシューもらえてよかったな。
オレ今日はなんもこわさなかったぞ。
エライだろ!ほめたたえろ!
てことで今日のばん飯はローストビーフでよろしくな!
とくべつに肉はオレが買ってきてやんよ。
楽しみに待ってろ!
じゃ、次ルーシィのばんな。”
机の上で開いたページを一通り読み終えたルーシィはふんわり、と微笑ーー
まずに、
「なにが、てことで、じゃぁああ!!」
ビシィッ!と一人、ノートに向かってツッコミを入れた。
ひょんなことから始まったナツとの交換日記。
どうせ飽き性なナツのことだから長くは続かないだろう、と思っていたのに。
「三日坊主だと思ったんだけど、意外と続くものね……てかあいつ、またあたしに夕飯作らせる気かしら…」
実際では書き始めてから今日までそれなりに現在進行中で。
気付けばあっという間に二週間という月日が経過しようとしていた。
勿論レビィとの交換日記も続けられているため、ルーシィは今二つの日記を平行して書いていることになるのだが。
まさかその内の一つを男の子とーーましてや自分が密かに想いを寄せている相手でもあるナツとーー交換し合うことになろうとは、夢にも……
と言うか、二週間前までの自分には想像もつかない展開だった。
興味の対象であればこちらの意思などお構いなしにすぐさま有言実行。
面白そうなことには片っ端から挑戦。
そんなゴーイングマイウェイな性格に自分はいつも振り回されてきたけれど。
それでも、まぁこれがナツだし……と良くも悪くも全部ひっくるめて最終的に首を縦に振ってしまうのは、結局の所自分の中の大半を占める彼への惚れた弱み的な部分が強いからーーなのかもしれない。
いや、かもしれない、じゃない。
多分そうだ。
絶対そうだ。
かなり負けた気はするけど……。
けど、嬉しいか嬉しくないか、で聞かれれば断然嬉しいに決まっていた。
だって好きな人と日記を交換し合える、だなんてーー
嬉しすぎて、最近では毎日が楽しくてしょうがないのだから。
ーーと、そんな物思いに耽っている内にまた、ニヤけていたらしい。
ここ最近気付くといつも緩んでいる頬をグリグリと両手で解す。
それからふぅ、と息を吐き出すと、ルーシィは開いていたノートを一度閉じた。
二週間前、ほとんど抱えられるようにして駆け込んだルーシィ御用達の文房具屋でナツが選んだのは火竜の彼らしい全面を一色に塗りつぶしたこの赤いノートだった。
パラリと捲った一ページ目。
その一行目にはノートを購入したこの日の日付が記してある。
一行飛ばして次の行からはこれからヨロシク!というちょっとした挨拶に少し付け足したようなそれぞれのメッセージ。
他愛のない話題や仕事の話。
夕飯に食べたルーシィの手料理のメニューと感想をナツが、それに対しての返答や反省点などをルーシィが。
ーーと、他にも色々な話題の内容が三ページにも渡って綴られている。
二人で書いた記念すべき初日のページ。
この時は夢中になって書いていたせいで気付けば朝になっていたっけ。
びっしりと埋めつくされた力強い文字と綺麗な文字を指でなぞる。
これもいい思い出ね、なんて思いながら今度こそルーシィはふんわり、と微笑んだ。