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□マフラーとパンツとナンチャラカンチャラ
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“それ”に気付いたのは本当にたまたまだった。
何気なくとった行動。
言うなれば、癖だ。いつもの。


“たまたま吹いた秋風がちょっと肌寒かったからマフラーを口元まで引っ張り上げた”


ただそれだけ。
それだけの動作。だった。

そりゃあ、誰だって突然吹いた風が冷たかったら何かで暖を取りたくなるってもんだろ?
いくら人より体温が高くても自分にだってそういう瞬間はある。
うん。
だからこれは普通に自然とナチュラルに出た行動だったんだ。

が……。

それがまさか、こんな物を見付けてしまうとはーー。


どうしようか迷った挙句そのままやりきったが、遮断した筈の寒さが背中に伝う嫌な汗を撫でて、これ、全然遮断されてねぇ。



(どうしよう……どうしたら…)



考えれば考える程、焦る気持ちばかりが膨らんでなかなか解決策が見付からない。

けど、それと同時に『どうりで!』と頭の中に今さっきまであった謎が一気に解けて、晴れ晴れとした気分にーー


(っなんねぇよ!どーすんだよコレ!)



……なんなかった。



そもそも、だ。


(っかしーと思ってたんだよ、こんなすぐ近くで匂いがするとか)


この匂いだけはどんな状況下であろうと嗅ぎ分けられない自分ではない。

ただそれを『今日だけはなんかおかしい』と思ったのはあまりにも近い距離でその匂いがしていたからだ。



と、まぁ何はともあれ今日一日不思議に思っていた原因が分かって、とりあえずはすっきりした。


(すっきりはした、けど……ヤバイだろこれ、ある意味時限爆弾じゃねぇか!こんなんいつ爆発すっかわかんねぇのに……!とりあえず一回頭ん中整理しねぇとっ)


ダメだダメだ、と気を取り直す。
そして、ナツは今一度深呼吸した。


まずは……と考えるのは自分の顔。

散々百面相した上に相当挙動不審だったため、周りにはかなりの不審者に見られていただろう。
けれど、これに関しては心配いらない。

幸い、自分は今先頭を歩いている。
後ろの奴らにバレなければ無問題だ。


そう思いつつも口元を押さえにいった手が恐る恐るなのは、アレか?
健全な男子たるものナンチャラカンチャラってヤツか?
普段周りから疎いだなんだ言われている自分も一応それなりにそれなりのソレを持ち合わせてたってことで、いいのか?


いや、なにがいいのかわかんねぇけど。


…でもこれって別に普通だよな?

世間一般の基準がどんだけなのかはわかんねぇけどこれをナンチャラカンチャラ思っちまう自分は言い方は場違いだがちゃんとした正常な考えの持ち主だよな?


…そーだよ。
こんなん手元にあって喜ばねぇ男は男じゃねーよ。
それが自分の好きな奴のモンだったら尚更じゃね?

まぁ、尚更もなにも俺は好きな奴のしか喜ばねぇけどな。



だってほら、俺もさ、健全な男の子だしさ。



………。



とか。




(あー……やっべ、頭おかしくなり始めた)


ダメだ。
一旦整理するはずがゴッチャゴチャになってきた。
むしろこれじゃ……いや、考えるな!
今思ったことは絶対考えるな!
落ち着け。
落ち着け自分。
現実から目を背けてはいけない。


でも……。


(だからってこれ、どーすりゃいいんだよ……)



と、うな垂れたい頭を無理に後ろへ反らして、ナツは空を仰いだ。


季節は秋。
澄んだ空気のおかげか、その向こうまで見える青々とした空はどこまでも高く晴れ渡っている。



ーーそんな青の中に今己がしているマフラーの中身を翳したら、さぞ映えるだろう。


そう、このーー


いつの間にか埋もれるようにして。
外部からは決して見えないような位置に上手い具合巻かれて。
傍目には、まさかそんな物がこんな所にあるなど微塵も感じさせない程の完璧な隠れ身の術で。


マフラーの内側……それも巻いた時丁度前部分になる場所でひっそりと隠れるようにその成りを潜めていた、それーー。



“白いレースのフリフリが付いた小さな下着(下)”



を、あの青い空にかざーー



(してどーすんだよっ!なに考えてんだよ俺はっ!)



フザケンナ!
燃えろ!
燃え尽きて消えてしまえ!


ブンブンと頭を振ることで今までの無駄に意味不明な妄想達を全力で打ち消す。



ナツはもう一度深呼吸した。
ついでに荒れ狂う魔力もなんとかどーどーと宥める。



(そろそろ真面目に整理しよう)


かなり勇気はいるけど。
ぎゅっ、と両の拳を固く握り締めて。

よし、腹は括った。
あとはこの状況を受け入れるだけ。




ーーこの…




ルーシィのパンツが今、自分のマフラーの中にある。



という、緊急事態を。





“これ”に気付いたのは本当にたまたまだった。

たまたま……だったが。


見た瞬間、ナツにはすぐに分かった。





ーーあ、これ、ルーシィのだ。



と。



何故なら、


(ぜってぇコレ、あん時のだよな……)




その、白いレースのフリフリが付いた小さな下着(下)ーーもとい、ルーシィのパンツは、見に覚えがあり過ぎる程、今朝見た物と同じ物だったからだ。









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