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□それは泣きたいくらいの
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長い金色が風に揺れる。
そのたびに向こう側が透けて見えるのを、俺はぼんやりと眺めていた。

聞こえるのは子守歌。

それと、彼女の腕に抱かれて安心したように眠る猫の小さな寝息だけ。

最近立て続けに怖い夢を見るから寝不足なんだ、と零した相棒にじゃあ子守歌を歌ってあげる、と窓際に立ってからまだそんなに経ってない。

それでも彼女は、歌が一周する前に眠りに落ちた相棒の身体をゆっくりと揺らしながら今も歌い続けている。


窓の向こうに見える空と、柔らかい声。
その腕の中には俺の家族でもある相棒の猫。
部屋いっぱいに広がるクッキーと紅茶の甘い匂い。
優しい空気。


この景色が。
あの後ろ姿が。

その、全部が。


ーー幸せだ、と思った。


俺がいて、ハッピーがいて、ルーシィがいて。


“当たり前”がこんなに幸せだ。



だから、どうか。
今だけはーー。




「ナツ?…え?なんで……泣いてるの?」
「…あーあ…。振り向くなっつったのに」
「え……?あれ?もしかしてあたし、聞いてなかった?」
「……いあ、俺が勝手に心ん中で言ってただけ」
「なによそれ」


ふふっと笑って、ルーシィが指先を伸ばした。
触れた所があったかい。


「止まらないよ?」
「うー、止めようとしてんだけど止まらん……ルーシィのせいだぞ」
「あ、あたし?」
「うん…。ルーシィがいて、ハッピーがいて…なんか、幸せだって思ったら…勝手に出てきた」
「そう…だったの。……あたしも、ナツ達といると幸せだよ」


頭の上。
いつの間にか乗せられていた手の平がくすぐったい。
掴もうとして上げた腕は、次に降ってきた言葉で行き場を変えた。







「ずっと一緒にいようね」




「ああ、ずっと一緒にいような」




腕に抱えたハッピーごとルーシィを抱きしめながら、俺はまた、泣きたいくらい幸せになった。











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