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□ナツルーからのグレジュビからのガジレビ話
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ルーシィは現在、午後のティータイムをのんびりと満喫していた。
ヒマそうだったから、との理由からお供に選んだのは青い猫。
椅子ではなく卓上の縁に腰掛けながら身の丈程の魚をこちらものんびりと食べている。
時折交わす会話はポツリポツリとしたものだったが、それがかえってゆったりとした時の流れを肌で感じられて、実に心地の良い午後だった。
しかし、それも長くは続かない。
何故ならここは、魔導士ギルド“妖精の尻尾”の騒がしい酒場内。
そんなゆったりとした時間は文字通り、飲んでいた紅茶のカップをソーサーに戻し終えたルーシィの目の前に突如としてタン!と何かが着地した音で終わりを告げた。



「ルーシィ!」
「わっ!なにっ?!…ナツ!ちょっとあんたどこ乗ってんのよ!危ないじゃない!」
「どーしたのナツ?そんな所乗ったらまたエルザに怒られるよ?」
「俺、決めた!」
「なにをよ?てか、人の話聞いてた?!」
「おう、聞いてねぇ!エルザならさっき仕事行ったばっかだから大丈夫だ!」
「聞いてたんじゃないの!」
「あれ?ほんとだ、いないや」
「…ったく、いなかったからよかったけど……もしいたら教育がなってないってあたしまで怒られてた所よ。…うわ…考えたらなんか寒気してきたっ」
「エルザがいなくてよかったね、ママ」
「誰がママよ?!」
「あっためてやろーか?ママ」
「いらんわっ!あんたまでママ言うな!…てかイヤよあたし…こんな人外離れした子供なんて」
「おい、ひでぇな」
「そうだよルーシィ、猫のおいらはともかくナツは一応人間なんだから……」
「お前が寒いっつーからあっためてやろうと思ったのに」
「そっちなの?!人外とか言われたのに落ち込む所そこなの?!」
「ちぇ、なんだよ、人がせっかく…」
「せっかく何?その右手の炎でどうせっかくするつもりだったのかしら?!」
「ま、まぁまぁ、ルーシィ落ち着いて。…あ、ほら!愛さえあれば火もまた涼し、って言葉が」
「ないわよそんなの!しかも涼しくなってどーすんのよ?!あとナツ!テーブルの上で体育座りしないでくれる?!いつまで乗ってるつもり?」
「ナツ…ママがご立腹だから、そろそろ降りた方がいいよ」
「だから…」
「…おう。あ、でもその前に」
「ん?」
「ツッコミの切れ味が良すぎて忘れてたけど、俺ルーシィに言いたいことあったんだよ」
「あたしに言いたいこと?」
「もしかしてさっきの「俺、決めた!」とか言ってたアレ?」
「そーだよソレソレ!」
「ああ、そー言えばそんなよーなこと言ってたわね、さっき」
「自信満々にね。で?ナツはいったい何を決めたの?」
「うん。あのな、俺今日からルーシィのこと“ルーシィ様”って呼ぶことにしたから!」
「………は?」
「ルーシィ、様?…って、え?ナツ…それってまさか…」
「お、はは!やっぱハッピーにはバレちまっ」
「とうとう下僕宣言?」
「ちっっげぇし!つか、とうとうってなんだよとうとうって!?」
「え、違うの?」
「俺は対等がいい」
「な〜んだ、ガッカリ」
「ガッカリされる意味がわかんねぇよ」
「えと……ね、ねぇ、意味がわかんないのはこっち、なんだけど…なんで、その…いきなり様呼び?なの?」
「あれ?ルーシィわかんないの?」
「えっ、ハッピーはわかるの?!」
「あい、おいら相棒ですから。大方ジュビアの真似でもしてるんでしょ?ナツ」
「にしし」
「ジュビアの?」
「おう。んーと、ジュビアってグレイの奴を“グレイ様”って呼ぶだろ?」
「うん」
「さっきあいつに、なんでそう呼ぶんだって聞いたらよ……」


「ナツー、頼まれてたファイアドリンク出来たわよー」

「おー、ミラー!今行くー!」
「ちょ、急に降りないでよ!紅茶が…」
「好きだから、だってよ」
「え?」
「だから俺もお前のことそう呼ぶことにした」
「…へっ?!」
「じゃ、そーゆーコトだから!ちょっくら俺、飲みモン取ってくるわ」
「え、待っ、ちょっ……え?」
「すぐ戻ってくっからここにいろよ!……“ルーシィ様”?」
「っ…!!」


「ミラー!ついでに肉とケーキもー!」
「肉とケーキ?すごい組み合わせね」


「……」
「……」
「………」
「………ハッピー」
「あい、なんでしょう」
「…アレってやっぱり、そういう意味よね?」
「多分、そうだと思うよ」
「あたしまた、勘違い……とかしてないわよね?」
「変化球だったしね。でもナツも意味をちゃんと理解して言ってるみたいだったから」
「そう……よね」
「うん」
「……」
「ナツが戻ってきたらルーシィも言ってみれば?」
「なっ、なん…て…?」
「そんなの、決まってるじゃない」



“ナツ様”ーーって。


「なっ…!?」


絶対ニヤけていると思ったのに、見下ろした先にあった猫の顔はまるで「よかったね」とでも言うような満面の笑顔で笑っていたからーー


「…うん。言ってみようかな、あたしも……」



ーーナツ様って。


小さく頷いてそう呟いたルーシィもまた隣りの子猫に負けないくらい、満面の笑顔に花を咲かせた。








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