main2

□うさぎ化 前編
1ページ/3ページ


マグノリアから少し離れた森に近い街外れ。

この日、ナツ、ルーシィ、ハッピーはいつもの最強チームではなく久しぶりに三人でのクエストに来ていた。


実験材料に使う特殊な薬草の採取ーーというのが今回の仕事内容だ。

便底メガネに白衣を羽織り便所サンダルをつっかけて現れた依頼主から薬草の特徴や何処らへんに生えているか等の説明を聞いたのが数時間前のこと。

彼らは今、広大な敷地内のど真ん中にそびえ建つ屋敷、兼研究所をぐるりと囲む森林(依頼主曰く庭)で、各自別々の場所で薬草を摘んでいた。



「ふぅ…」

ルーシィはスカートの裾についた土を払いながら摘み終えた薬草の入った籠を地面へと下ろした。

「ナツ達、終わったかしら?」

近くの木の根元に置いていたリュックからミネラルウォーターのボトルを取り出し、カラカラの喉に一気に流し込む。

屋敷に着いて通された客室。
そこで出された紅茶には一口も口をつけていなかったからだ。

(…あんな怪しい所で出された物なんて飲めるわけないじゃない)

何の警戒も無くカップに口をつけようとしたナツを可哀想なものでも見るかのような目で「ナツ、毒が入ってるかもよ?」とハッピーが零していたのを思い出す。

その時正面でのほほんと紅茶を飲んでいた便底メガネに依頼書にあった特殊な薬草ーーと言うのが気になって聞いてみたところ……

「あ〜特殊って言っても毒性とかないから大丈夫だよ〜。実験に使う時に性質がちょっと変化するだけで、摘む段階じゃあ全然害なんてないから〜」

ヘラヘラと笑いながらではあるが、とりあえず害はないとのことだった。

今日は何事もなく平和に終われる。
ルーシィは胸を撫で下ろした。

…のだが。


「なんだ、特殊って言うからもっと面白いもんだと思ってたのによー」
「あんたね…。薬草に面白みを求めてどうすんのよ」
「あい。ナツの頭はいつでも能天気ですから」
「まぁ、そうね」
「んおいっ!」
「でも、面白みがあったほうがルーシィで遊べるのにね」
「だよなー、残念だ」
「ちょっとそこー!」


ああ…いらないことまで思い出してしまった。

軽く頭を振ってから、ルーシィは木の根元の芝生へと腰を下ろした。
集合の時間までにはまだもう少しだけある。
待っていればそのうちナツたちの方から来るだろう。

右の手首に反対の手でそっと触れて、背もたれにしている木に頭を傾ける。
木漏れ日から漏れる光に目を細めながら「ちょっとお昼寝ー」と呟くと、ルーシィはゆっくりと瞼を下ろした。









次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ