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□青い包帯
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いくら考えないようにしていても襲ってくる鈍い痛みを少しでも逃すように、と吸った息を深く吐き出した時、頭の高い位置で結い上げていた一束がパサッと右の頬にかかった。


「これだ!」
「え?なに?」
「どれだ?」


バッと顔を上げたルーシィは、シュルシュルと幅の広いリボンを髪から解くと、疑問符を浮かべたナツの目先にずいっと掲げて見せる。


「包帯、あった!」
「は?」
「包帯…って、ルーシィ……それ、リボンだよ?」


さらに疑問符を増やした二人には目もくれず、よいしょと言ってリュックの底から白いタオルを引っ張り出したルーシィは岩場に座るナツの前まで来ると、すっとしゃがみ込んだ。


「お、おい、汚れちまうぞ!?」
「そのために持って来たのよ。念の為だったけど、持ってきておいて正解だったわ」


膝に当てた部分だけタオルの白が赤へと変わる。
先程からダラダラと流れ続けていたそれが気になってしょうがなかった。

傷を避けながらその周辺をあらかた綺麗にし終わると、次にルーシィが取り出したのは大きめのガーゼ。
そこにポーチから出した塗り薬を薄く塗って慎重にナツの膝へ貼り付けると、髪から解いた青いリボンを包帯代わりに巻きつけた。

瞬間、ピクッと膝が揺れたのを見て、痛かったか…とナツを見上げるとーー


「ナ…ツ?」
「へ?」
「顔、真っ赤だけど…大丈夫?そんなに痛かった?」


見上げた先には耳まで赤く染めたナツが片手で口元を覆っていた。


それを真横で見ていたハッピーは彼特有の猫目、猫口をゆっくりとーーにんまり、と三日月にしていく。


「違うよルーシィ。ナツは痛かったんじゃなくて嬉しかっ」
「わぁぁああありぃなハッピー!!手が滑ったあっ!!」
「ぶっ!?」

しかし、突如上から降ってきた火竜のゲンコツによって小さな身体はその場に埋まった。


「今の明らかにわざとよね?!」
「いやー、エアバナナの皮があってよ」
「なに言ってんの?!」


空中で何かを拾って遠くへ投げる仕草をしたナツは何事もなかったかのようにけどよー、とぎこちなく曲げた膝をついっ、と顎で差した。


「よかったのか?これ、染みになっちまうぞ?」


ルーシィは少しばつが悪そうに言うナツの横で、きゅうと目を回したままのハッピーを確認してからーー




「ナツになら……いいの」


綺麗に巻かれた青い包帯を見ながら淡く頬を染めて笑った。








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