ピンクのバラに捧ぐ赤い薔薇
□獄門塾殺人事件
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警察が来て現場検証をしている間、美雪と草太、紫苑は別の相談室の隅で警察の報告を待っていた。
「どうしよう……塾の見学に来たら、いきなりこんな……」
「今日は金田一は一緒じゃないんだね」
「うん。本当はここに来る約束して待ち合わせてたんだけど来なくて……」
「そうなんだ。まあ、塾行くって言われたら来ないだろうね」
突然の事態と頼りになる幼なじみの不在に心配そうな美雪に草太が元気づけようと声をかける。
「七瀬さん!!大丈夫!俺がついてるよ!」
「草太君…」
しかし美雪の表情が完全に晴れる間もなく、相談室に警察が入ってきた。
派手なスーツを着た不動山署の溝岸は、毒物による心不全である可能性と茂呂井の指先の少量の出血、そして床に落ちていた模範解答の小冊子に仕掛けられた毒針から、殺人事件だと断定した。
「殺人…!!」
「第一発見者としてここに残っていただいたみなさん。もうしばらく残っていくつかの質問に答えていただきたい。よろしいかな?」
「は…はい…もちろん…」
殺人事件という事実に動揺がはしる中、聴取が行われた。
溝岸は証拠品となる模範解答の小冊子を塾講師の氏家に見せると質問を始めた。
「この毒針が仕掛けてある小冊子はいったいなんでしょう?」
「今日の外部テストの模範解答だと思ったんですが、どうやらこれはニセモノです。そっくりにパソコンかなにかで作ってあるだけで…いったいどこの誰がこんなものを……?」
「え?」
「あ″っ!!」
模範解答が偽物だという事実に驚いた紫苑の声は鯨木の大声にかき消された。
「どうしたね?え〜〜〜〜塾生の鯨木君!」
「あ…ああ…そうっす。さっき俺…久しぶりに塾で会ったんで茂呂井のヤツを遊びに誘おうとしたら、解答をもらいにいかなきゃとか言って教室から出てきた途端そそくさと2階に行っちまったんだ」
「なるほど!そういうことか」
そのまま塾生の中屋敷が推理を始めてしまい、紫苑は自分も模範解答を取りに行こうとしていたことを伝え損ねた。
茂呂井が2階に行く後をつけて毒針付きの模範解答を渡したという推理を聞きながら紫苑はいやな予感を感じていた。
しかしそれが具体的に何に対するものなのかよくわからないまま、周りの会話は進んでいく。