ピンクのバラに捧ぐ赤い薔薇 side story

□見染められし乙女はいずこに
1ページ/7ページ




「ひさしぶり、ね。元気にしてた?」

「おう。雪峰こそ」

「私は変わらずかな」


消毒液の臭いが漂う部屋。

窓から差し込む光がリノリウムの床に反射し、部屋を明るく保っている。

紫苑はかけていた眼鏡をはずして、目の前に座っている友人に視線を向ける。

少しよれたスーツ姿の金田一には少しの疲労が見て取れた。


「村上や美雪は元気?」

「元気元気。美雪は世界中飛びまわってるし、草太と佐木とはつい最近一緒に飲んだ」


シミひとつない白衣をまぶしそうに見ながら、金田一は答える。


「紫苑もたまには顔を見せろよ。みんな喜ぶぞ」

「そうしたいけど…なかなか、ね」

「……まさか、こんなとこで働いてるなんて思いもしなかったよ」

「でしょうね。私は医者やってるとしか伝えてないし、金田一は推理をやめてからは無茶な怪我をしなくなったもの」


紫苑は困ったように眉をハの字にした。


「もともとこんな所、縁が無い方がいいのよ。警察病院、しかも囚人専門の部門になんて一般人がお世話になるような事、ないほうがいい」


 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ