ピンクのバラに捧ぐ赤い薔薇 side story
□見染められし乙女はいずこに
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「ひさしぶり、ね。元気にしてた?」
「おう。雪峰こそ」
「私は変わらずかな」
消毒液の臭いが漂う部屋。
窓から差し込む光がリノリウムの床に反射し、部屋を明るく保っている。
紫苑はかけていた眼鏡をはずして、目の前に座っている友人に視線を向ける。
少しよれたスーツ姿の金田一には少しの疲労が見て取れた。
「村上や美雪は元気?」
「元気元気。美雪は世界中飛びまわってるし、草太と佐木とはつい最近一緒に飲んだ」
シミひとつない白衣をまぶしそうに見ながら、金田一は答える。
「紫苑もたまには顔を見せろよ。みんな喜ぶぞ」
「そうしたいけど…なかなか、ね」
「……まさか、こんなとこで働いてるなんて思いもしなかったよ」
「でしょうね。私は医者やってるとしか伝えてないし、金田一は推理をやめてからは無茶な怪我をしなくなったもの」
紫苑は困ったように眉をハの字にした。
「もともとこんな所、縁が無い方がいいのよ。警察病院、しかも囚人専門の部門になんて一般人がお世話になるような事、ないほうがいい」