ピンクのバラに捧ぐ赤い薔薇
□決死行
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夜、1日のやることを終え、のんびりと読書をしていると携帯が着信音を鳴らした。
(誰からだろ?)
この時間にかけてくる人物の予測ができず、疑問に思いながら携帯の画面を見て名前を確認すると急いで電話にでた。
「もしもし」
〈もしもし 紫苑?〉
「うん。お父さん」
大好きな父親であり、尊敬する心理学者である雪峰 修司からの電話に嬉しくて自然と笑みがこぼれる。
〈元気にしてるかい?この間家に帰って来てたんだってね。事件に巻き込まれたって聞いたけど大丈夫だった?〉
「うん。全然。元気にしてるよ」
〈そうか。それはよかった〉
仕事柄研究や学会だけでなく、色々なところから声をかけられる修司は出張などで家にいることが少ない。
現に里帰りしたときは出張中だったため会うことが出来なかった。
「それにしてもどうしたの?こんな時間に」
〈ああ、ちょっと頼みたいことがあってね。今度の連休開いてるかい?〉
「え、うん。何にも予定入ってないけど」
修司の言葉に慌ててカレンダーを確認する。
「それがどうかした?」
〈実は連休の初日に学会があってね。そのアシスタントをしてほしいんだ〉
「え!?そんな、私、高校生だよ?」
予想外のお願いに 紫苑は驚くと電話の向こうで修司は笑った。
〈そんなに気負いしなくてもいいよ。資料まとめたり、学会の記録を少し手伝ってもらうだけだから。実は学生を1人連れて行く予定だったんだけど体調を崩してしまってね。今頃だと学生はみんな予定が入ってるから代理をたてられなかったんだ〉
「でも……」
〈大丈夫。 紫苑のことだから普段から勉強してるだろう?〉
「……うん」
ちらりとテーブルの上に置いた本を見る。
実際先ほどまで読んでいたものが修司の執筆した本だった。
「行くよ。興味あるし、お父さんと話したいこといっぱいあるし」
〈そうか。よかった。それじゃあ連休の前日の夜にマンションに迎えに行くよ。詳細はメールで伝える〉
「うん分かった。楽しみにしてるね」
〈それじゃあ、またね〉
「バイバイ」
電話をきるとすぐさまカレンダーに予定を書き込む。
そして読書を再開することなく、お手伝いの時の荷物などの計画を考えながら上機嫌に鼻歌を歌った。